医学界新聞

寄稿

2008.07.28



【寄稿】

英国緩和ケア関連学会総会報告(7th Palliative Care Congress)
WHO疼痛緩和ラダー遵守を否定

加藤恒夫(かとう内科並木通り診療所)


 英国の7th Palliative Care Congress(PCC)は,ScotlandのGlasgow Royal Concert Hallで2008年4月29日から5月1日までの3日間にわたり開催された。総会は英国の緩和ケアの代表的団体が共同で2年に一度開催し,ない年はEuropean Association for Palliative Care(EAPC)の総会に結集する。参加団体は,RCN Palliative Nursing Forum, Palliative Care Research Society, Association for Palliative Medicine of Great Britain and Irelandである。筆者の本総会への参加は3度目である。

会議の構成

 会議の参加者は全590名,そのうち医師が320名,残りが他職種である。参加者は英国以外からもあり,今回は日本からも7名が参加した。

 発表はポスターが140題(3日間連続して掲示し,発表者は決められた時間帯にいて質問に応える討論中心の設計),フリーペーパー(口演)が54題(1題20分,十分な討論ができる)。また,主要な講演は,他のものと重ならないよう計画されており,参加者は全体講演に参加し,決められた時間帯にポスターを読み,選択して口演を聞いていけば,会議全体の流れが自然につかめる。

 会議の実情を事実に基づき紹介するために,主要な講演のテーマを次に挙げる。

<全体講演>
 (1)緩和ケア研究の国際状況の展望,(2)呼吸困難の最先端──科学の進歩はベッドサイドの状況を変えたのか(COPD),(3)症状緩和──これからのオピオイド研究,(4)オピオイド起因性消化器障害の最前線,(5)方向転換する緩和ケア──ところでわれわれは誰の死のケアをするのか(子供の緩和ケア),(6)緩和ケア研究の最適証拠の模索──臨床治験実施のための新たな挑戦,(7)苦悩の緩和は適切に評価されているか。

<選択聴講講演>
 (1)突発痛──適切に対処されているか,(2)オピオイド研究の最先端──分子生物学的知見,(3)研究への患者の参加──効用と課題,(4)認知症の痛みの緩和ケア──適切な評価が可能か,(5)パーキンソン病対処の必須知見,(6)子供の痛み──大人とどう異なるのか,(7)COPDの緩和ケアの課題,(8)子供の緩和ケア・プラン作成の進歩──理論と臨床,(9)パーキンソン病のライフスタイルの指導──Thistle Foundationの試み,(10)若者の緩和ケア──思春期のセルフケア,(11)終末期ケア──「何もしないこと」を選択したときの対処,(12)緩和ケアにおける通信情報機器の使用による症状評価,(13)がん性疼痛への対処──2008年に向けた最新の知見,(14)神経難病の緩和ケア──われわれに何ができ,かつ何をなすべきか(非侵襲的呼吸器症状管理のエビデンス),(15)国立がん研究機構による共同研究の最新知見,(16)がん治療の最新治験──化学療法の進歩,(17)別れと喪失と悲嘆──われわれの任務は何か...

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