医学界新聞

2008.07.14



安全・安心・信頼の医療をめざす
第10回日本医療マネジメント学会開催


 第10回日本医療マネジメント学会が6月20-21日,稲垣春夫会長(トヨタ記念病院)のもと,「安全・安心・信頼の医療――未来につづく地域医療連携」をテーマに,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)において開催された。4疾病5事業を核とした地域医療計画が施行され,新たな医療体制の構築が求められるなか,いかに地域医療連携を推進し,医療の質向上を図っていくか,職種を越えた活発な議論が交わされた。本紙では,その一部を紹介する。


医療におけるCSとは

 トヨタ方式――「カイゼン」「見える化」などの言葉に代表される,“ありたい姿”に向かってチャレンジし続けるトヨタ自動車のマネジメント手法が,世界的に注目されるようになって久しい。近年医療界でもその組織マネジメントやチームワークなどの考え方を導入しようという動きが見られる。

 会長講演「病院のマネジメントはCS(顧客満足)から」では,トヨタという大企業に必要とされる地域に向けた社会貢献の一端を担う病院として,いかに医療の質向上をめざすマネジメントを行っていくかについて語られた。

 トヨタ記念病院では,企業流のマネジメント手法を病院経営に積極的に取り入れている。医療界ではしばしば「医療はサービス業か」「患者は“お客様”か」といった声が聞かれる。それに対し稲垣氏は,CSを「顧客の問題を発見し解決すること」と定義づけ,「不安や苦痛を抱えた患者の問題解決を目的とする医療のマネジメントはCSを主体に行われるべきだ」と述べた。

 また,子育てから老後まで安心して暮らせる都市づくりを実現させるために「メディカル・ケアランド構想」という長期ビジョンを掲げ,病院を機能分化させることで地域連携を図り,地域保健・医療・福祉の一体的提供をめざしている。そのために,マーケティング手法による戦略策定を行い,トヨタの方針管理手法を用いた体制を整えたという。そして,病院を改善していく仕組みとして,PDCAを回す,標準化・可視化する,継続するという3つのポイントを挙げ,そのためには人づくりとリーダシップが不可欠と述べた。

 さらに,同院が行っているCS向上委員会や地域連携パス,医療安全運動,人材育成などの取り組みを紹介。今後めざすべき職場組織体制として,「教え教えられる職場風土づくり」を挙げた。

電子カルテをどう更新するか?

 パネルディスカッション「電子カルテはずっと使えるの? 買い換えないといけないの?――病院マネジメントの観点からこれから導入する病院へのアドバイス」(座長=岐阜大病院・白鳥義宗氏)では,はじめに岡本泰岳氏(トヨタ記念病院)が,電子カルテの更新・再構築に伴って生じた「医療情勢の変化にどう対応するか」「現場からの要望にどれだけ応えるのか」などの疑問を提示。続いて座長の白鳥氏が「電子カルテのソフトウェア・ハードウ...

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