医学界新聞

寄稿

2008.07.07



【寄稿】

「小児NIVセンター」の取り組み
子どもたちの未来のために,不要な気管内挿管・気管切開を減らそう!

土畠 智幸(手稲渓仁会病院・小児NIVセンター長)


不要な気管内挿管・気管切開を減らす

 「あなたのお子さんは,もう気管切開するしかありません」――あなたがもしもそう言われたらどうしますか?

 「声がきちんと出せなくなってしまう,ご飯が食べられなくなるかもしれない,何度も苦しい思いをして痰を吸引しなければならない,でもそれしか方法はないと言っているし……」。

 もちろん絶対に気管切開が必要な場合もありますが,そうでない場合もあります。そこで出てきたのが,「非侵襲的換気補助療法」NIV(noninvasive ventilation)という治療です。従来は人工呼吸器を使用する場合,気管内挿管や気管切開をしなければならなかったのですが,NIVでは,鼻にマスクをつけることでそこから空気を入れて呼吸の補助をします。

 NIVは,成人領域では結核後遺症やCOPDなどに対して標準的な治療となりましたが,小児科領域では,小児用のマスクや呼吸器が少ない,患児の協力を得られないなどの理由から,あまり普及してきませんでした。

 当院小児科では,2006年より小児に対しても積極的にNIVを使用し,これまで約100例に対して使用,在宅導入も20名となりました。気管切開が必要と言われていた児が,NIVによって抜管ができ,夜間のみNIVを使用することで毎日小学校へ通えるようになったり,新生児期より気管切開をしていた児が,気管切開孔を閉鎖しNIVに変更することで普通小学校へ入学できたりと,患児およびそのご家族のQOL向上に大きく役立っています。

ICUから在宅まで

 対象疾患としては,筋ジストロフィー・ミオパチー・脊髄性筋萎縮症といった神経筋疾患のほか,気管支狭窄・肺低形成などの肺疾患,代謝疾患,脳性麻痺など多岐にわたります。基礎疾患に起因する呼吸障害があり,風邪などで急激に悪化し,ICUに入室してNIVを行うこともあります。

 改善すると,小児科病棟に移って夜間のみのNIVへ移行します。そして,自宅の環境を整えた後,在宅へと移っていきます。その際も,機械のトラブルが起きたらどうするか,どのようなときに受診するか,リハビリはどうするかなど,長期的な計画を立てます。

 退院後は,月に1回外来を受診し,年に1回検査入院を行い呼吸器やマスクの設定を行います。患者さんが普段生活している家庭の状況を知るため,センターのスタッフが往診し,そこで指導を行ったり,呼吸器の調節を行うこともあります。また,訪問看護...

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