調査データから日本の健康神話を検証する(岩尾総一郎)
健康格差社会・検証「健康格差社会」を読んで
2008.03.31
調査データから日本の健康神話を検証する
健康格差社会・検証「健康格差社会」 を読んで
岩尾 総一郎(国際医療福祉大学教授,前WHO健康開発総合研究センター所長)
今年創立60周年を迎えるWHOが,夏の総会報告へ向け準備している「健康の社会的決定要因に関する委員会」の最終会合が,1月16日から3日間にわたり神戸で開催された。世界中の英知を集めたこの会議では,社会的格差によって健康レベルに差が生じるメカニズムと,その社会的要因の平準化方策について多くの議論がなされた。WHO創立時の憲章,そして30年後のアルマアタ宣言(1978年)でも述べられているが,健康の享受は人種,宗教,政治理念,社会的・経済的状況にかかわらず,人類すべての基本的権利のひとつである。そして,WHOの使命は可能な限り最高水準の健康をすべての人々が達成することにある。
ヨーロッパ,カナダ,オーストラリアでは早くから,健康を保障する手段として,健康格差を生じさせる社会格差(すなわち,教育,雇用,性差,食料,住環境など)の是正に取り組んできた。すでにこれらの諸国では,格差要因分析のための社会疫学方法論が確立されており,ポピュレーションアプローチ手法を用いた多くの論文,報告書が発表されている(一例をあげれば,University School of LondonのSir Michel MarmotらによるWhite Hall Study, Harvard UniversityのIchiro Kawachiの教科書など)。
日本において健康格差の要因を抽出・分析し,...
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