第16回日本総合診療医学会開催
2008.03.31
「総合する専門医」の育成を
第16回日本総合診療医学会開催
第16回日本総合診療医学会が3月8―9日,伴信太郎会長(名大)のもと,名古屋市公会堂(名古屋市)にて開催された。テーマは「日本の医学・医療を変革する――発信する総合診療」。今回は,日野原重明氏による基調講演のほか,昨年5月に厚労省より出された「総合科」標榜構想と専門医制度に関するパネルディスカッション,診療のコツをレクチャーするティーチング・パールセッションなど多彩なプログラムが組まれた。本紙ではその一部を紹介する。
会長講演「大学における総合診療のあり方」で伴氏は,「総合する専門医」の必要性を説き,ジェネラリストには不明瞭かつ複数の問題が持ち込まれることが多いことから,総合的判断力こそがその真骨頂であるとした。また,大学の総合診療部における教育的役割として「基礎的臨床能力教育」「プライマリ・ケア教育」「“総合する専門医”教育」の3点を挙げ,「ジェネラリストを養成するには,大学と地域両方での研修をうまく組み合わせることが必要。大学での複雑な症例で思考過程を学び,地域の多彩なニーズに対応できるようになることが求められる」と述べた。
続いて,総合診療医学会昇格10周年記念シンポジウム「総合診療部が歩んできた道」では山城清二氏(富山大),伴会長の司会のもと,研究会創設初期から学会運営に携わってきた今中孝信氏(天理よろづ相談所病院),伊藤澄信氏(国立病院機構),箕輪良行氏(聖マリアンナ医大),五十嵐正紘氏(五十嵐こどもクリニック)らが登壇。総合診療の歴史を振り返りつつ,地域医療における総合診療医の役割,小児のプライマリ・ケアやプライマリ・ケア関連学会の専門医制度など幅広い話題が話し合われた。討論では,「専門医との顔の見える交流が必要」「5―10年目のジェネラリストが生き生きと働くことで,次の世代のロールモデルとなるべき」といった意見が交わされた。
EBMIPな感染症診療を
指定企画の1つ,藤本卓司氏(市立堺病院)による「ジェネラリストに求められる感染症診療のスキル」では,はじめに藤本氏が,つい行いがちなエンピリック治療の問題点を指摘。「あるべき感染症治療とはEBMIP(Evidence Based Medicine of Individual Patient)である」との喜舎場朝和氏の言葉を紹介。そのうえで,個々の患者に特異的な情報を得るための問診,診察に加え,グラム染色の重要性を強調。臨床の場で役立つグラム染色の活用術について解説した。デモンストレーションでは,実際にプレパラートを見ながら鏡検に適切な部位の選択や菌の見つけ方,同定の仕方などを説明。また,観察する部位によっては適切な情報が得られないことや,検体が採取しにくい場合のコツなどについても触れた。氏は「グラム染色なしで行う抗菌薬治療は,心電図なしで行う抗不整脈薬の投与と同じようなもの」と述べ,グラム染色の有効的な活用を呼びかけて締めくくった。
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