第11回日本看護管理学会
変化する医療提供体制と福祉
2007.10.22
変化する医療提供体制と福祉
第11回日本看護管理学会開催
第11回日本看護管理学会が8月24-25日の両日,梶原和歌会長(医療法人近森会;右写真)のもと,「変化する医療のかたちと看護の創造――流れ・循環・個からの拡がり」をメインテーマに「高知市文化プラザかるぽーと」にて開催された。
医療提供体制の変化
シンポジウム「医療提供体制――求められる具体的対応」(座長=青森県立保健大・上泉和子氏)では4名の演者が,医療提供体制の変化に伴う新たな取り組みを紹介した。久常節子氏(日看協)は,看護職配置や教育改革などの取り組みとともに,「看護職確保定着推進事業」を紹介。新卒者の職場選択支援に加え,看護管理者に対しても「選ばれる職場づくり」のマニュアル冊子を配布するなどして働きかけを強めると語った。池谷俊郎氏(前橋赤十字病院)は,乳癌術後地域連携パス作成の取り組みを紹介した。地域での勉強会を経た後に賛同者を「提携医」として登録し,異常所見が出た際の乳腺外来受診の手続きも事前に定めるなど,連携パス導入には(1)提携医が十分実施可能,(2)患者が安心して治療を受けられる,(3)診療者間で緊密な情報交換ができる,の3点が重要であると指摘した。
島森万二氏(青磁野リハビリテーション病院)は,4年後の介護療養病棟廃止を見据えて今後考え得る選択肢を説明。病棟再編や機能分化の推進を含めて検討中であり,「来年には方向性を決め準備を始めたい」と語った。近森正幸氏(近森病院)は,DPC下では,多職種チームによって良質で効率的な医療を提供するほど経営が良好となることを他施設とのデータ比較を通じて説明。患者の利益のために自己変革し続ける病院しか今後は生き残れないと強調した。
1990年以降の福祉改革と医療
中村秀一氏(厚労省社会・援護局)による特別講演「これからの福祉と医療」では,冒頭で1990年以降の福祉改革を概説。80年代までは,老人医療費無料化(1973年)など高齢者介護のニーズは医療によって支えられる状況が続いてきた。しかし90年代以降は,福祉8法の改正(1990年)にはじまり,介護保険法施行(2000年),障害者自立支援法の制定(2005年)など,福祉分野において「地殻変動的な変化」が生じた。その結果,1990年以降の福祉給付費の増加は,医療給付費の増加を上回る結果となり,福祉と医療の連携によって国民のニーズに応える時代となったと強調した。さらに,介護分野における看護の役割についても言及した。特に特別養護老人ホームにおいては平均要介護度が高く,死亡による退所が全体の7割を占めるというデータを提示。現状では,看護職の取り組みが入所者の健康障害が発生してからの処置に偏りがちで,予防的活動も不十分であることから,入所施設における看護のあり方の検討や介護職との連携を課題とした。最後は,看護管理者らが“介護のよき理解者”となり,協働をさらに推し進めることを期待し,講演を閉じた。
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