医学界新聞

2007.09.10

 

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


解剖学カラーアトラス 第6版

J. W. Rohen,横地 千仭,E. Lutjen-Drecoll 著

《評 者》松村 讓兒(杏林大教授・解剖学)

実習の道案内役から人体解剖学の必須指導書へ

 本書は1985年を初版とする解剖学カラーアトラスの第6版である。実に23年もの間,人体解剖学を学ぶ人たちの傍らで,人体構造の道案内を果たしてきたことになる。一般には「ローエン・横地」と呼ばれる本書が如何に多くの学徒に受け入れられてきたかは「医・歯学生の間で単にアトラスと言えば本書を指す」ということからも知ることができる。

 本書はイラストや細密画による解剖学図譜ではなく,写真アトラスの範疇に属する。周知の通り,写真アトラスの優劣は,写真自体の精度もさることながら,もとになる剖出標本の質と種類に依存するため,標本作製技術とその保存管理がきわめて重要である。その点から見れば,本書は単なるアトラスではなく,きわめて質の高い人体剖出標本の存在を世に知らしめるアーカイブということができよう。将来にわたって,かくも繊細に剖出された人体標本を一堂に提示することは不可能であると言っても過言ではない。

 1985年の初版以来,本書は1990年(第2版),1994年(第3版),1999年(第4版),2004年(第5版)そして今回の第6版と4-5年のペースで改訂されている。初版の序でも述べられているように,局所ごとの提示を原則とした構成は本書の一貫した方針であり,実習に用いる学生の利便性を考慮したものである。今回の第6版においても基本的な構成は踏襲されており,旧版からの利用者にとっても違和感はない。しかしながら,新版には,読者に違和感を与えないように工夫された新しい試みが随所に見られる。

 第6版で目につくのは30余の増頁であるが,これは単なる写真の増加ではない。通常なら「削除するのは勿体ない」とも思える標本の写真が,「人体解剖実習で真に必要な資料を提示する」方針のもとに,繊細な局所標本写真や立体的な模式図に替えられている。著者らが初版でめざした「解剖学の勉学に資するアトラス」に対する思いがここでも貫かれているのである。さらに,今回の改訂では吟味された医療画像が効果的に採用されている。旧版でも医療画像は掲載されていたが,今回の改訂では質量ともに充実が図られ,格段に理解しやすいアトラスとなっている。

 初版が...

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