医学界新聞


主治医機能を営むための方法の提案

寄稿

2007.07.30

 

【寄稿】

プロブレムリストを見直そう!
主治医機能を営むための方法の提案

三澤健太郎(聖隷三方原病院総合診療内科/内科学研鑽会事務局長)


主治医機能を営むための考え方

 従来の臓器別医療においては,担当医の専門とする疾患にだけ重点が置かれ,しばしば主治医不在となる不都合が見受けられました。その反省もあって,臨床研修制度の改革が行われました。主治医としての医療を営むためには,心構えだけでは達成しがたいいくつかの要素があると考えます。それは以下の3つです。

1)患者が持っている複数の病気を同時に継続的に管理すること
2)患者の一つ一つの現実の病気について深く理解すること
3)複数の症状所見があり,病気の数も疾患名も不明な混沌とした状態から診療すること

 これを成すためには,「診療の考え方の形式」が必要です。この「形式」は,ベテランの優秀な医師はおそらく皆持っているはずですが,それを意識していなかったり,または言語化されていない場合が多いと思います。「一つの所見の評価の仕方」や「一つの疾患の治療選択の仕方」などは研修の場で指導されても,もっと大きな「診療の考え方の形式」全体を指導される機会は少ないと思います。

 その「主治医機能を営むための診療の考え方の形式」が「総合プロブレム方式」です。総合プロブレム方式は“内科医は主治医としての機能を営むべき”と考える,東海地方を中心とした医師の集まり「内科学研鑽会」の医師たちの日々の診療から生まれました。

 これは決して魔法のように楽をして成果を上げるようなものではありません。どの分野でも行っているような,「対象(患者のすべての病気)に関して網羅的に情報を集めて分析し」「最も基本となる情報(患者の病気一覧)を登録し継続的に管理する」という内容です。

 学生の皆さんは,「何を当たり前のことを?」と思われるかもしれません。しかし現実の医療では「入院(受診)した原因となった病気以外の情報収集は手抜きされ」「患者の病気一覧はメモ書き的扱い」がむしろ一般的であることは医師なら実感しているはずです。

 昨年から,内科学会の認定医申請用サマリーのサンプル2つのうちの1つとして,総合プロブレム方式によるサマリーを多少改造したものが掲載されています(サルコイドーシスの症例)。

 今回は,総合プロブレム方式の大きな特徴である「プロブレムリスト」について紹介します。

総合プロブレム方式におけるプロブレムリスト

(1)プロブレムリストの作成と管理

 この方式では「プロブレム」とは「患者が実際に持っている病気」で,その一覧表が「プロブレムリスト」です。プロブレムリストは番号とプロブレム名とそれぞれのプロブレムを登録した日付から成ります(表1)。一度登録したプロブレムは治癒しても記録として残し,新たに生じたプロブレムは次の番号に登録します。つまりこれはメモ書き的なリストではなく,言わば患者の病気の「戸籍」です。

表1 総合プロブレム方式のプロブレムリスト
#1 糖尿病

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