医学界新聞


言語聴覚療法の更なる普及・向上を

2007.07.16

 

言語聴覚療法の更なる普及・向上を

第8回日本言語聴覚学会開催


 さる6月2-3日,長谷川賢一会長(聖隷クリストファー大)のもと,第8回日本言語聴覚学会が浜松市のアクトシティ浜松にて開催された。

 会員の約7割が20-30歳代という若い学会らしく,すぐにでも臨床に活かせる実際的な手技や,評価・訓練のポイントが具体的に提案されるなど,言語聴覚士の資質の向上をめざした取り組みが随所に織り込まれた構成となった。会長指定演題(ポスター発表)では,「言語聴覚療法のコツとツボ」と題し,臨床経験から知得した効果的・具体的な訓練方法が紹介され,また,生涯学習プログラムでは,「言語聴覚療法の動向」「協会の役割と機構」「臨床実習」の3題が催され,いずれも好評を博した。このほか,言語聴覚士をめざす学生のために,交流会の場が設けられたのも新たな試みである。

早期言語聴覚療法のポイント

 シンポジウム「急性期における言語聴覚士のあり方――早期言語聴覚療法のポイント」では,座長の立石雅子氏(目白大)が,「発症早期から言語聴覚士が関わる重要性が医療現場で認識されつつある一方で,急性期はとかく症状の変化が多く,経過の見極めに難しさがあるため,いまだに具体的な対応の指針が示されていない。加えて診療報酬改定後,入院期間がさらに短縮化され,適切な療法がますます必要とされている」と述べた。

 続いて各演者から,自らの症例を通じて得た早期言語聴覚療法のポイントが述べられた。まず佐藤睦子氏(総合南東北病院)からは,変化の多い急性期に,画像情報を活用して適切な評価・訓練を始めることの重要性が述べられた。春原則子氏(目白大)は,発症前の患者情報・画像などの医学的所見・多職種から得る情報,さらに言語聴覚士が自ら得た情報を,どのように収集・統合し,いかに介入していくべきかを例示した。諏訪美幸氏(恵寿総合病院)は,急性期に予想された障害の程度と,その後の実際の経過を具体的に検証することで,見通しを立てる重要性を解説した。また適切に見通しを立てるためには,他職種や家族からの情報収集,さらに患者の小さな状態の変化も見逃さないことがポイントであると述べた。布施幸子氏(都立大塚病院)は,意識障害を伴い,身体状況も変動しやすい急性期の嚥下・摂食訓練について解説した。ポイントは,リスク管理を行い,患者の覚醒のよい時に,反応を見ながら訓練をすることとし,また訓練しながら同時に評価することも重要であると述べた。

つなぎ目の無い言語聴覚療法

 シンポジウム「在宅リハビリテーションにおける言語聴覚士のあり方――つなぎ目の無い言語聴覚療法を提供するために」は,昨年の診療報酬改定,その後の見直しに関連して,高い関心を持たれたテーマであった。座長の高橋育子氏(NPO法人地域リハ実践プロジェクト)はまず,高齢者リハビリテーション研究会の考えとして,リハ提供の場が変わることでその目的に差異が生じてはならず,また全ライフステージに継続性が確保されることが大事であると紹介した。しかし,今回の診療報酬改定で患者・利用者は,今まで以上に早期に在宅生活をスタートさせる必要が生じ,継続性=つなぎ目の無いリハの実施が難しくなっていること,加えて介護保険下の施設で働く言語聴覚士が増え,新しい制度に戸惑いが大きいことを訴えた。また在宅の場では,言語聴覚療法の認知度がまだまだ低いため,今後はケアマネジャーはじめスタッフと良好な関係を構築することが課題であると述べた。

 各演者はそれぞれ,回復期リハから維持期リハ(熊本機能病院・小薗真知子氏),外来リハと訪問リハ(在宅リハビリテーションセンター成城リハビリテーションクリニック・半田理恵子氏),通所リハと訪問リハ(天翁会あいクリニック・大澤真理氏)と,各ステージでの移行において,いかにつなぎ目の無い言語聴覚療法を患者・利用者に提供するか,その現状と課題について述べた。

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