MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.07.09
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


岡田 正,馬場 忠雄,山城 雄一郎 編
《評 者》武藤 輝一(新潟国際情報大学長)
臨床栄養学辞典として使える身近に備えておきたい一冊

冒頭,臨床栄養の長い歴史についてわかりやすく簡潔に記述された後,これまで医学教育の中では重要視されていなかった“臨床栄養教育”の重要性が強調されている。これは医学教育の将来に向けて編集者が最も強調したいことの一つと思われる。
まず臨床栄養実施の前に知っておかなければならない基礎的事項として,(1)体内にどんな栄養・代謝物質がどんな形でどこにあり,どんな働きをするのか(病態生化学),(2)健常状態で,あるいは種々の病的状態で,栄養物質や代謝作動物質がどのように変動するのか(病態生理学)など,最近の分子生物学的知見も加えてわかりやすく詳細に記述されている。
ついで本書の中心となる臨床栄養の実際について,(1)まず栄養管理を実施する前に,患者の栄養状態を素早く確実に把握するため,どのような検査を行い,栄養状態を正しく把握するか,(2)栄養補給法として経口栄養法,経腸栄養法,静脈栄養法(腸管内を栄養物質は通らないが,それと同等の効果のある栄養補給法をparenteral nutritionといい,現在静脈栄養法がその代表である)のいずれを選ぶか,同じ静脈栄養法でも末梢静脈栄養法を用いるのか,あるいは中心静脈栄養法(高カロリー輸液)を用いるのか,その実施方法は,またどのような栄養物質を投与すべきか,在宅での栄養管理はどのようにするか,病院内外に向けての栄養管理チームの存在意義とその成果なども記述され,(3)最後に,それぞれに異なる栄養管理が必須である代表的な36の病態別に,栄養管理の実際が詳細に記述されている。
本書は臨床栄養学に関する総合テキストというよりは,臨床栄養学辞典とも言えるほどに内容は網羅されていて詳しく,見事なものである。強いて付け加えるとすれば,経皮内視鏡的胃瘻造設術では図が示されていたように,経腸栄養の中の経胃・経食道・経空腸栄養および静脈栄養でのカテーテルの写真あるいは図,さらにカテーテルの経路別挿入・留置図などが記載されているとわかりやすかったかなと思った次第である。
臨床栄養の基礎となる事項も臨床での実際もすべて記載されており,医学生や研修医はもちろんのこと臨床の第一線で活躍する医師にとっていつでも参考とすることができるよう,身近に備えておきたい本である。医療施設のNST(栄養管理チーム)に参加する看護師,栄養師,薬剤師の皆さんにとっても大変役立つ本であり,参考とされるようお勧めしたい。


国立がんセンター内科レジデント 編
《評 者》石岡 千加史(東北大加齢研教授・癌化学療法)
がん専門医療者をめざすすべての医師・コメディカルに

本書は現場ですぐに役に立つマニュアルとして版を重ね,早10年の月日が経ちました。この間,コンパクトながら系統的にまとめられた内容が好評で,主に腫瘍内科をめざす若い研修医やレジデントに愛読されてきました。がん専門医療者に求められる知識は,各臓器別,治療法別の知識に留まらず,がんの疫学,臨床試験,がん薬物療法の基礎知識,緩和医療など臨床腫瘍学の幅広い領域にわたります。今回の第4版は,前版までの読みやすくかつ系統的な内容・書式を継承しつつも,疫学データや標準治療などを最新の内容にアップデートしたもので,腫瘍内科医はもとより,がん専門医療者をめざすすべての医師,コメディカルの入門書として大変有用だと思います。さらに若い医療者や学生を育成する指導者のための参考書としても役に立つはずです。
本書をきっかけに,将来,1人でも多くの若い医師,看護師,薬剤師などの医療者や学部・大学院の学生ががん専門医療者をめざし,日本のがん医療を支える人材として育つことを期待します。


坂井 建雄 監訳
小林 靖,小林 直人,市村 浩一郎 訳
《評 者》大谷 修(富山大教授・解剖学)
生涯役立つ解剖学図譜

本書の最大の特長は,古典的な解剖図のすばらしさにある。この図譜の多くの解剖図は,カナダのトロント大学の解剖学博物館に展示してある解剖標本を落ち着いた色彩で,美しく,正確に描いたものである。十数年前,トロント大学を訪れた際に,解剖学博物館に立ち寄ってみた。そこには,Grant教授が作った,複雑な構造をわかりやすく解剖した標本が展示してあり,それを学生たちがスケッチしている光景を見ることができた。このように,本書の主要な解剖図は実物を忠実に再現してあり,したがってわかりやすく,実習室...
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