MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.06.25
NURSING LIBRARY 書評・新刊案内
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小島 操子,佐藤 禮子 監訳
日本がん看護学会教育研究活動委員会コアカリキュラムグループ委員 訳
《評 者》日野原 重明(聖路加看護大名誉学長)
がん患者のあらゆる面に触れた臨床レベル向上につながる書
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がんは今日,死亡率からいっても最も高率な疾患であり,治療を受けて治るもの,完全には治らなくても日常生活が保たれる程度に進行を阻止できるものなど,さまざまである。また,がんの種類は全身の各臓器にわたり,小児にも成人も老人にも多い病気であり,患者数は膨大なものがある。
そのため,何を専門にするナースであっても,がんのケアに参与するナースは多いはずである。すなわち,幅広く看護を担当するナースは,がんがわからないと,あるいはがん患者のケアができないと,ジェネラリストとは言えない。したがって,がん患者のあらゆる面に触れ,心理的,社会的,病理学的,治療的,予防的各方面にわたって看護において研修すべきカリキュラムが明快に示されている本書は,看護の広い基盤を扱った近代的ナーシングの本とも言えよう。
構成は大きく8部に分けられ,第1部では「クオリティ・オブ・ライフ」としてコーピングや支持的ケアのカリキュラム,第2部には「予防的メカニズム」として身体的変化や神経学的変化,皮膚系全体の変化に及ぶカリキュラムが取り上げられている。第3部は栄養や排泄の変化,第4部は換気や循環の変化,第5部は代謝や構造面での救急,第6部はがん発生の生物学,免疫学,遺伝学,乳がんや肺がんといったさまざまながん患者の看護ケアについての科学的根拠について記述されている。そして第7部にがんの疫学と予防,早期発見,第8部に専門的な働きについてまとめられている。
これらのコアカリキュラムの下に学習がよくなされ,その学習の効果の評価が正しくなされれば,日本のナースの臨床レベルアップにつながり,本書の貢献するところが非常に大きいと思う。本書が,各方面の看護を担当する多くのナースによって,広く活用されることを望んでやまない。
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心臓にいい話
小柳 仁 著
《評 者》小松 浩子(聖路加看護大教授・成人看護学)
生命の不思議さと医学のすばらしさを感じる
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本書の凄さは,心臓の拍動を直視し,そこにメスを入れてきた心臓外科医だからこそ書ける病と治療の意味のわかりやすさです。〈ヒトのワニ化計画〉の項では,心臓には「真っ赤」な血がたっぷりあるにも関わらず,この血液は心臓の筋肉に酸素を与えることができないことがわかりやすく説明されています。そして,ワニの心臓のように自らの内部に入っている血液を利用して心筋に酸素を与える新しい治療法の発案へと話はつながっていくのです。生命の不思議さと医学のすばらしさを感じざるを得ません。
圧巻は,人工心臓と心臓移植の話です。唯一自律して鼓動を続ける(音も奏でる)臓器を動かし続ける治療には,心臓外科医の生涯をかけた熱意と努力により開発された技術の裏打ちがあったことを改めて実感しました。医療技術の発展の重要性はもちろんですが,今,日本で必要なのは,移植先進国に頼らない日本の移植医療システムの発展を社会全体でつくりあげること,そのことを,著者は次のような言葉で鋭く指摘しています。「よその社会が20-30年かけて作り上げたシステムに〈ただ乗り〉するのは,国として恥ずかしい話だと思います。日本のシステムが社会との接点を克服して十分成熟し,この国の人をこの国で救うことができるようにしたい。生涯をかけての願いです」とあります。
生命臓器の医療に生涯をかけている著者の姿勢は,まさしく心に響く「心にいい話」として全編に流れています。最後の章「どうしても伝えておきたいこと」では,医療関係者がリスクを負ってもやり遂げるというスピリットと,そういう人間を熱烈にサポートするスピリットについて述べられています。医療とは限りない理解と技術であり,一方で医師は患者さんを通じてたくさんの人生を体験する。そのようなスピリットを支える社会システムの必要性が紐解かれています。
このスピリットが,今顕在化している医療の地域格差,医師不足の問題に解決の糸口を与えてくれるものと心に留めながら本書のページを閉じました。
新書判・頁192 定価714円(税5%込)新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/
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