医学界新聞

寄稿

2007.06.25

 

【視点】

慢性看護の知の体系化をめざして

野並葉子(日本慢性看護学会理事長,兵庫県立大学教授(成人看護学))


 変動の社会にあって,慢性状態にかかわる健康問題は,ますます複雑さを増している。人々の暮らしは,物質の豊かさ,情報の豊かさとともにさまざまな犠牲のもとに成り立っていると言えるだろう。ITの発達は,情報量を莫大に増加させ,人々のコミュニケーションの形態を変え,家族の形態を変え,社会の形態を変え,新たなネットワーク社会を創出してきている。それらの社会と人々の暮らしの変化は,人の心身の健康問題に待ったが効かないスピードで影響を現してきている。

 慢性看護学の領域は,看護学の歴史の中で古くから看護が大事にしてきた「人の苦悩をケアする」ことを教授し,研究してきた。今の時代だからこそ求められている実践の中で脈々と看護の臨床家によって培われてきた叡智こそ,あらためて実践の学として体系化し,社会に広く伝えていく必要がある。

 日本慢性看護学会は,慢性看護の知の体系化,慢性看護の研究者の交流を支援するとともに,慢性看護提供システムに関する政策提言を行うことを目的に,2006年12月3日に設立された。慢性看護研究のメソドロジーの洗練・開発,慢性看護の構成概念および実践知の抽出,慢性に関連する保健・医療・福祉の連携において病院と地域のネットワークの創出,慢性看護外来システムの構築,慢性看護ケアシステムに関する政策提言,慢性看護研究者の支援および連携,関連学会との連携などに取り組んでいく。

◆第1回日本慢性看護学会学術集会は2007年8月3-4日,「慢性看護のフロンティア」をテーマに兵庫県立大明石キャンパスにて開催される。
 学術集会HP=http://jscicn07.umin.jp/


野並葉子
高知女子大卒。聖路加看護大博士課程修了。1997年,兵庫県立看護大大学院修士課程にて慢性看護専門看護師教育課程を開設。2006年より日本慢性看護学会理事長。

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