日本ヘルスサポート学会について(田中滋)
寄稿
2007.04.16
【寄稿】
日本ヘルスサポート学会について
田中滋(日本ヘルスサポート学会理事長・慶應義塾大学大学院教授)
学会設立の背景
生活習慣病発症予防と要介護予防,およびそれらの状態悪化の防止は,生活の質を保ち,健康寿命を延ばすために何より大切な事業に他ならない。予防分野に対するわが国の研究と実践は,決して最近始まったものではなく,以前から着実に行われてきた。職域においては労働安全衛生法に基づく活動が積み重ねられる一方,地域保健分野においても,老人保健法に基づき,各地の地方公共団体が国保ヘルスアップ事業などの保健実践活動を展開してきた。あわせて,介護予防に取り組む地域活動にかかわる報告も珍しくない。職域・地域の両分野とも,それらの活動をベースにさまざまな理論的また実証的研究が蓄積されている。さらに政策面でも大きな変化がおき,医療保険制度ならびに介護保険制度の双方に予防が明示的に取り入れられるに至った。生活習慣病予防に関しては,メタボリック・シンドロームの概念が導入され,2008年度からすべての公的医療保険者の法定事業として,特定検診・特定保健指導事業が全国的に展開されることは周知のとおりである。また介護予防に関しては,予防給付の実施と地域支援事業など,すでに予防重視型システムへの転換が図られている。
なお最近では,各種の事業体による専門性の高い活動が積極的に始まっている。これは,米国を中心に発達したいわゆる「ディジーズ・マネジメント」と呼ばれる活動を踏まえているケースが多い。日本でもディジーズ・マネジメントに関する本格的な研究が2000年頃から行われ,学術成果が蓄積されてきた。医療経済研究機構の自主研究としてなされた「職域における健康管理に関する実態調査」(座長は松田晋哉当学会副理事長),2001年から開始された損保ジャパン記念財団主催の「ディジーズ・マネジメントに関する研究会」(座長は筆者),2005年に活動を開始した日本疾病管理研究会(会長は武藤正樹国際医療福祉大学附属三田病院副院長・同大学教授)などが代表例である。
われわれはこうした状況に鑑み,わが国におけるヘルスケアの領域において,医学・看護学・保健学,経済学,経営学,心理学,社会学等の関連諸科学による学際的な研究活動の場をつくる必要性が大いに高まったと判断し,2006年6月に日本ヘルスサポート学会を発足させた。
学会の目的
ここで「ヘルスサポート」という名称について説明しておこう。この名称を採用した主な理由として,ディジーズ・マネジメントの直訳である「疾病管理」の響きがきついことがあげられる。「疾病」とこの記事はログインすると全文を読むことができます。
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