MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.04.02
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/../../../imgdir/prevbtn.gif)
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/../../../imgdir/nextbtn.gif)
目黒 泰一郎 編
《評 者》延吉 正清(小倉記念病院長)
左アプローチの利点から術中・術後の要所を詳細に記載
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/n2726gif/n2726_12.gif)
その後,ステントやロータブレーター,DCAなどの出現によりPTCAをPCI(Percutaneous Coronary Intervention)と呼ぶようになった。歴史的には股動脈穿刺の後,Stertzerらにより右前腕穿刺で行うPTCAも普及した。
1992年8月14日 アムステルダムのKiemeneij(kimney)によって,初めて経橈骨動脈冠動脈インターベンションが行われた。当時,Campeauにより経橈骨動脈冠動脈造影(TRA)が紹介され,さらに1990年代初めにステント植え込みは十分な後拡張なしで行われていたため,ステント血栓症を防ぐ強力な抗凝固療法が必要であった。そこで,出血の合併症を減少させるために,工夫されたのがTRIなのである。
わが国においても,齋藤滋先生が右経橈骨動脈よりのTRIを普及させておられるが,左アプローチによるTRIは目黒泰一郎先生によって初めて行われたのである。当時左からのアプローチは一般的ではなかったが,目黒先生を中心とするグループがカテーテルシース,圧迫帯などを研究し,現在ではradial approachは左経橈骨動脈からになってきている。
目黒先生編集の『左アプローチによるTRI』には,何千例と行われた症例の結果が平易にまとめられている。
まずは,なぜ左アプローチなのかに始まり,左アプローチに必要なデバイス,穿刺法,ガイディングカテーテルの選択や操作のコツ,ご自分たちで開発されたシースレスガイディングカテーテルの用い方,DCAやロータブレーターの場合の使用方法とコツ,複雑病変に対するPCIや急性心筋梗塞に対する左アプローチの考察,合併症とその対策など,手技のすべてについて非常に詳細に,しかも初心者が気をつけなければならない点をも含めて書かれている。例えば,左経橈骨動脈のTRIでは,カテーテル操作時に右手が遠くなるが,特別なアームレストを使用されており,術者と左経橈骨穿刺部位が離れない工夫をされておられる。このような目黒グループの独特な工夫は,他の追随を許さない一流の仕事であると考える。
PCIを行う初心者の方にはぜひともお薦めしたい1冊である。
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/../../../imgdir/prevbtn.gif)
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/../../../imgdir/nextbtn.gif)
金澤 一郎,北原 光夫,山口 徹,小俣 政男 総編集
《評 者》井村 裕夫(京大名誉教授/先端医療振興財団理事長)
進化する内科学 進化する教科書
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/n2726gif/n2726_13.gif)
序文にもあるように,内科学は医学の王道であると言ってもよい。病気を正確に把握し,できるだけ患者に負担をかけない,侵襲の少ない方法で治療するのが,医学の究極の目標だからである。この目標を達成するためには,基礎研究の成果を活用することが不可欠である。内科学こそは臨床医学の中でも最も生命科学に基礎を置いた分野であり,その理解なしに診療にあたることは困難である。本書ではそのような配慮が十分になされていると言える。
とは言え,内科学は,あくまでも臨床医学の一分野であり,対象とする患者は異なる遺伝素因を持ち,異なる環境に住む社会的な存在としての人間である。医師はその片足を近代科学に,もう一方の足を人間科学に置いて活動しなければならない。本書の冒頭に「社会のなかの内科学」という章が立てられているのは,その意味で誠に適切な配慮であると言えよう。序文にも「患者との関係や社会的な問題にまで十分配慮した内容とする」と書かれている編集の意図は,これからの臨床医学の重要な2つの方向を示したものである。
本書は,最初の計画以来12年の歳月を費やしたとされている。2段組みで約3000頁に及ぶ内容,700名近い執筆者から考えて,それは止むを得なかったことであるかも知れない。ただ1つ注文をつけるとすれば,長い時間がかかったため,新しい分野の記載がやや不十分になっている箇所があることである。例えば,生物学の中ではやはりヒトゲノムの解読の完成と,その臨床医学へのインパクトについての項目があることが望ましい。また昨今流行語にもなったメタボリック・シンドロームや,それに伴うNASHなどの疾患についても,より詳細な記載が望まれる。それらの点が改訂の時に追加されれば,より完成度の高い教科書となるであろう。
内科学は臨床医学のあらゆる分野で必要な,基礎臨床医学とも言うべき領域である。その巨大な領域に本格的に取り組んだ密度の高い本書は,恐らくすべての臨床医学を専攻する人々にとっても十分参考になるものである。この新しい,本格的な内科学書が,幅広く活用されることを期待したい。
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/../../../imgdir/prevbtn.gif)
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/../../../imgdir/nextbtn.gif)
国際膵臓学会ワーキンググループ 著
田中 雅夫 訳・解説
《評 者》山雄 健次(愛知県がんセンター中央病院・消化器内科部長)
IPMN/MCNを知る最良の書
![](https://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2726dir/n2726gif/n2726_14.gif)
さて,この本は“International Consensus Guidelines for Management of Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms and Mucinous Cystic Neoplasms of the Pancreas”として,2006年の春にPancreatology誌上に報告された論文の日本語版解説書である。その論文があっという間に,わかりやすい日本語の解説文に多数の新たな写真が加えられた一冊のすばらしい本に化けてしまった。さすが田中教授,見事と言う他はない。
9名からなる国際診療ガイドラインワーキングチームの一員にさせていただいた私の目に焼きついているのは,ガイドライン作成過程での田中教授の凄まじい働きぶりと,要領を得た纏めぶりである。中でも最も困難であった,疾患概念の異なる諸外国との症例や画像診断法の相違からくる侃々諤々の議論のすれ違いを,田中教授はリーダーとして纏め役に徹し,矢継ぎ早にワーキングチームのメンバーにメール攻勢をかけて実に見事に海外と国内の意見調整をされ,短時間で完成にまで持っていかれたのであった。本書の発刊に到る一連のこれらのお仕事は,正に田中教授なくしてはなしえなかったものであり,田中教授に心から感謝申し上げたいと思う。
さて本書の構成は,本ガイドラインの日本語解説文とPancreatologyに掲載されたオリジナル論文からなっている。日本語の解説文には,原文にはない本ガイドラインの作成の経緯や作業過程も詳しく述べられており特に興味深い。さらにこの本の根幹である,(1)定義と分類,(2)術前診断,(3)切除術の適応,(4)切除術式,(5)病理組織,(6)追跡経過観察法,の大きな6項目とその中をさらに細分化した18個の設問と回答が日本語訳とともに新たな写真などを加えて紹介されている。設問はIPMN/MCNの日常臨床上での具体的な疑問から作成されたもので,回答はIPMN/MCNに対する数多くの文献(それでも作成過程で随分削られたが)と国内外の専門家の意見からなる。読み方としては冒頭から通読されるのもいいが,表や写真,とくに日本語版独自の綺麗な写真を最初に見て疾患概念や現時点での問題点をまず理解し,その後で自分の疑問点に対する回答を拾い読みする形で読まれてもいいと思う。
本書はIPMN/MCNに対する現時点での最高のガイドラインであり,その解説書である。IPMN/MCNの病態を理解するにはこの本をおいてないと言える。また,“著者からのメッセージ”にあるように,紹介されている多くの参考文献により,本書はIPMN/MCNに関する研究や,論文を発表する際の座右の書としてなくてはならないものとなっていると信ずる。
B5・頁84 定価4,830円(税5%込)医学書院
いま話題の記事
-
事例で学ぶくすりの落とし穴
[第7回] 薬物血中濃度モニタリングのタイミング連載 2021.01.25
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
寄稿 2016.03.07
-
連載 2010.09.06
-
人工呼吸器の使いかた(2) 初期設定と人工呼吸器モード(大野博司)
連載 2010.11.08
最新の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]BQ11 要介護高齢者の栄養障害(低栄養・過栄養)の危険因子は何か?
『生活期におけるリハビリテーション・栄養・口腔管理の協働に関するケアガイドライン』より2024.07.26
-
2024.07.26
-
取材記事 2024.07.22
-
医学界新聞プラス
[第3回]半月板損傷の術後リハビリテーション 手術後3か月以降まで
『こんなときどうする!? 整形外科術後リハビリテーションのすすめかた 第2集』より連載 2024.07.19
-
スポーツ医学を学生主導で専門的に学ぶ
順天堂大学スポーツ医学塾 特別セミナー開催取材記事 2024.07.19
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。