DNETT-Japanの取り組み(槇野博史,四方賢一)
糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療
寄稿
2007.04.02
【Medical Frontline】
DNETT-Japanの取り組み
糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療
槇野博史・四方賢一
(岡山大学医歯薬学総合研究科 腎・免疫内分泌代謝内科学)
わが国の透析患者の有病率は世界第一位
わが国の腎臓病領域で現在の最大の問題は慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)の増加に伴う透析患者の増加である。日本透析医学会の2005年末の統計によれば,わが国では約26万人の患者が透析を受けている。これは,日本人の約500人に1人,人口100万人当たりの透析患者数は世界で最も多い。その最大の原因は糖尿病性腎症の増加であり,新規透析導入の原因疾患の42%を占めている。早期糖尿病性腎症は寛解する
糖尿病性腎症は一旦発症すると進行性で非可逆性であると考えられていたが,Mauerらのグループにより,膵移植を受けた糖尿病性腎症患者の結節性病変の軽快が報告され,糖尿病性腎症は血糖を正常化できれば必ずしも進行性ではなく寛解(remission)の可能性が示唆された。臨床的にも近年,1型糖尿病における早期腎症(微量アルブミン尿期)では,血圧,血糖および脂質の管理により高率にアルブミン尿が減少し,さらにアルブミン尿が陰性化(腎症が寛解)することが欧米で報告された。一方,荒木らはアルブミン尿を伴う日本人2型糖尿病による早期腎症患者においても,腎症の寛解が期待できることを明らかにした。
チーム医療を実践したSteno type2試験
Steno糖尿病センターの研究グループにより,微量アルブミン尿期の早期腎症の2型糖尿病に対する集約的治療の成績が報告された。この研究では,医師とコメディカルスタッフがプロジェクトチームを作り,禁煙,脂肪制限食や運動の指導を行って積極的に生活習慣に介入し,血糖,血圧および脂質を厳格にコントロールするのみならず,アスピリンや抗酸化薬(ビタミンC・E)等を用いて多くの進展因子を同時に治療した。このような集約的治療により,従来の標準的な治療に比して,早期腎症,網膜症などのミクロアンギオパチーのみならず,心血管合併症が有意に抑制された。また,8年間の長期の観察によると,正常アルブミン尿への寛解群ではGFR(糸球体濾過値)の減少が軽度であり,血圧と血糖は腎症寛解の独立した予測因子であった。以上のように,糖尿病患者に対する集約的治療は,腎症のみならず心血管合併症を予防するために有効であると考えられる。
DNETT-JapanのVision
現在のところ顕性腎症期に対する大規模臨床試験によるエビデンスは存在しない。そこでわれわれは,厚生労働省研究事業として,DNETT-Japan(Diabetic Nephropathy Remission and Regression Team Trial)を開始した。本研究は,顕性腎症(3期-4期)を伴う2型糖尿病患者を対象に,医師と糖尿病療養指導士(CDEJ)を中心としたチーム医療による集約的治療が,腎症の進展を抑制できるか否か,さらには寛解させることが可能であるかを多施設共同無作為化臨床試験で検証する。プロトコールAでは腎機能が比較的保たれている第3期を対象とし,蛋白尿の減少効果を主要評価項目としている。プロトコールBでは血清クレアチニン値の上昇が見られる第4期を対象に,血清クレアチニン値の2倍化,透析療法への導入または腎移植,死亡を複合エンドポイントとして,集約的治療法における腎症の進行抑制効果を検討する(図)。
両プロトコールとも,...
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