医学界新聞

2007.02.26

 

NURSING LIBRARY 書評・新刊案内


そのまま使える病院英語表現5000

仁木 久恵,森島 祐子,Nancy Sharts-Hopco 著

《評 者》園城寺 康子(聖路加看護大教授)

患者情報を要領よく的確に獲得できる英語表現携帯書

 グローバリゼーションの波は日本人の生活の中にも押し寄せており,医療機関でも,日常活動のなかでコミュニケーションの手段として英語の占める比重は増大してきている。このような状況に対処するために,医師・看護師をはじめ関係者が日常信頼して使用できる辞書・参考書が求められている。

 本書は,主として医師,または看護師,検査技師,薬剤師,受付など医療の現場で働く人が日常会話集,専門用語辞書として手許に置き,積極的に活用できる親切で役に立つ本である。もちろん,医学生,看護学生,医療通訳志望者の学習用テキストとしても大いに活用できる。内容構成としては,主として病院で起こり得るさまざまな状況を想定し,実際の活動の流れに沿って広汎な必須語彙・表現を系統的に章立てを行っている。専門用語については,医療従事者だけが知っているような特殊表現はできるだけ避け,患者にわかりやすい「日常表現」が多く用いられている。したがって,第二言語として英語を話す患者に対応する際に,音声ばかりでなく,当該個所をそのまま見せてコミュニケーションをはかることも可能である。

 構成についてはユニークな工夫がなされている。一般的な質問の後に,Yes/Noで答えられる具体的な質問をして,より正確な,あるいは詳細な情報を引き出せる,痒いところに手が届くような編集になっている。この手法を用いた理由は,患者から正確な情報を得るには多角的な視点から自由に質問することが望ましいが,しばしば返答がまちまちになり,英語の聴取に不慣れな人には返答のポイントが把握しにくく,患者との間に一種の相互不信が発生する危険性があるからであろう。

 問診についての工夫としては,患者から正確な情報を得るために,一定の手順に従って質問を展開しているところがある。例えば,「病歴を取るためのヒント」にあるように,まず一般的な質問をし,次に症状について詳細な質問がなされている。症状の特徴,部位,経過(発症時刻・時期,頻度,症状の経過,同様の症状の経験),症状の誘発因子,増悪因子,緩和因子,随伴症状などについて質問の手順を踏むことで,患者について知るべき情報を要領よく的確に獲得することが可能になるであろう。

 また,言語材料を内容の中心に考え,病気-診療-処方-健康保険・支払い-薬局調剤・服薬,宗教-食文化-医療,生活習慣-既往症-診断-療養・養生,妊娠-診察-分娩-育児・栄養-予防接種,入院-麻酔-手術-退院-自宅ケア,の順序で学習すれば,理解も深まり,利用度も高くなるであろう。

 コラムは患者から話を聞く表現,病院案内,痛みの表現,安心を与える表現などもちりばめられている。また,インフォームド・コンセントや紹介状のサンプル,駐日大使館リストなどが記載され,利用価値を高めている。

 以上のように網羅的内容を持ち,時に専門用語も出現するが,医師をはじめとし,学生,医療関係者が常時携帯し利用することができる好著である。

B6変・頁424用字用語 定価2,940円(税5%込)医学書院

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