医学界新聞


日本医療機能評価機構 設立10年を迎えて

2007.01.08

 

新春随想
2007


日本医療機能評価機構 設立10年を迎えて

坪井栄孝(日本医療機能評価機構理事長)


 1981年から日本医師会は病院委員会で「病院機能評価への実践的アプローチ」を厚生省及び関係団体などと共同して検討を重ね,1995年7月ようやく現在の医療機能評価機構の設立を実現した。それによってわが国で初めての病院機能評価事業の基礎固めができあがった。機構設立10年を迎えた今日,その内容の完成度はおおむね満足すべき状態となった。現在,認定病院は2200病院を超え,わが国病院数(9014病院)の24.3%を占めるにいたった。しかも,その認定病院の大多数が200床以上の病院であるのを見るとわが国医療のほぼ全貌を掌握していると考えられ,日本の医療の質をほぼ表現していると見ている。

 今日,本機構は10年の実績を経て集積したデータを処理するデータベースの充実をはかることが喫緊の重要課題であると考えている。また,受審した病院側は自主的な内部審査機構を設置し,継続的な病院管理を可能にするとともに,現在評価機構で行われている5年ごとの更新事業を補完する機能を添付することになり,当該病院の運営経費を節減することにも役立ち,さらには国の医療費抑圧政策に対して,病院側の防御反応として備えるべき機能の一つであると考える。また,内部審査を含め第三者機構の審査成績が,医療の質の高さを示すオフィシャルスコアとして診療報酬に反映させるよう働きかけて,強力な資料作りになることを確信している。そのためにも当機構の事業内容を広く一般の人々にも理解できるよう,わかりやすい広報を繰り返して行うことによって一般社会からの理解を喚起し,そして地域の医療機関の評価を高めていく努力も必要と考えている。一方,一般国民には病院の治療成績がわかりにくいという苦情もあるが,従来機構が必ずしも行っていなかった各病院の治療成績の評価を明確に公表する必要も出てきたと考えられている。このことは,先に述べたデータベースの充実とも深く関係することであり,機構も現在,近未来の事業としてぜひとも明確にしたいと思っているところである。

 機構の事業成績は近年各病院の意識の高まりの中で格段の発展を遂げてきたことは間違いないが,今述べたような事業を附加することによって,さらに実践的な価値観が芽生えることに弾みがつくであろう。それとともに一般国民の機能評価事業に期待感が高まることを予感している。


ICN横浜カンファレンスに向けて

南 裕子(国際看護師協会会長/兵庫県立大学副学長)


 108歳になる国際看護師協会(ICN)は,現在129か国・地域の看護団体が所属し,1300万人の全世界の看護の声を代表する組織です。日本では1977年に東京の真新しい武道館において,当時の皇太子殿下と同妃殿下のご臨席を賜り,約2万人の参加者を得て,ICN大会が華々しく開催されました。それが,日本の看護界の国際舞台へのデビューだったと思いますが,外国人受付のボランティアの経験は,私自身にとっては今の役割への出発でした。

 それから30年が経過して,2007年5月27日から6月1日までICN横浜カンファレンスがパシフィコ横浜で開催されることになりました。最近の経験から,90か国以上から4000人以上の参加が期待されています。共催する日本看護協会は,ICN加盟団体では最も大きい組織ですので,参加者の期待も大きく膨らんでいます。

 今回のテーマは「予期せぬ事態に立ち向かう最前線の看護者たち」ですが,大きな災害を経験している日本から世界の看護界へ発信するよい機会だと思います。災害だけではなく,新しい感染症や社会問題など,看護者はいつも予期せぬ事態に立ち向かうことが求められています。また,開発途上国でも人口の高齢化はいまや,日本のスピードを超えるくらいですから,日本の高齢社会の実情は世界の看護界へ大きな刺激となると思います。2年前の台湾大会の時は,日本からの発表者が170人を越えたと聞いていますが,横浜ではどれくらいになるでしょうか。

 日本看護協会の久常節子会長をはじめ会員の皆様,関係者の皆様には大変なご苦労をおかけします。そのご苦労が吹き飛ぶような意義深く楽しい学術集会となることが私の今年の大きな夢であり願いです。


脳死と移植医療をめぐる日本文化

寺田秀夫(聖路加国際病院内科顧問/昭和大学内科客員教授)


 わが国で臓器移植法が施行されたのは1997年。今年でちょうど10年経過したことになる。しかし,脳死者からの臓器移植は20-40例に留まっているのが現状である。とはいえ,生体肝移植は現在まで3000例以上施行され世界をリードしている。一方,小児心臓移植は依然として欧米に渡ってドナーを求めなければならない。なぜわが国では脳死移植が進まないのであろうか。

 近年厚労省研究班が全国の大学病院など...

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