総合リハビリテーション Vol.54 No.11
2026年 11月号

ISSN 0386-9822
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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脳卒中片麻痺患者の歩行──リハビリテーション治療の実践

 歩行改善に向けたアプローチは,急性期・回復期・生活期問わず,リハビリテーション治療において重要な位置を占めています.一方,めざすべき移動手段のゴール,歩行パターン・歩容のゴール,装具や歩行補助具をどのように用いるか,そしてそれぞれのゴールのために各時期にどのようなリハビリテーション治療を行うのが最適かについて,迷う場面も臨床では多くあると考えられます.
 そこで今回は,特にリハビリテーション治療に難渋しやすい脳卒中片麻痺患者の「歩行」をテーマとし,予後予測,そして各時期の評価と実際のリハビリテーション治療の組み立てを具体的にご解説いただく特集を企画しました.

1.脳卒中片麻痺患者の歩行特性 大畑光司 氏
 脳卒中片麻痺患者は,その多くが自立歩行を獲得すると報告されているが,「自立」だけでは活動に結びつかない例もあり,歩行速度・安定性・効率性・耐久性の側面を評価する必要がある.それぞれが機能障害,活動や参加とどのように関連するかを解説した.そしてこれらの低下は,それぞれ特徴的な運動学・運動力学的変化をもたらし歩行偏倚として現れる.機能障害から直接生じる一次的な歩行偏倚だけでなく,補完的運動方略としての二次的歩行偏倚もあり,その理解も重要である.

2.脳卒中後片麻痺患者の歩行予後予測 藤本宏明 氏ら
 歩行回復には多様な因子が関与するため,複数の臨床指標を組み合わせて予後予測する必要がある.「歩行自立を獲得できるか」だけではなく,「いつ獲得するか」,「どの程度の歩行能力を獲得するか」を区別した歩行予後予測モデルが開発されている.近年では,予測アルゴリズムに神経生理学的・画像バイオマーカーや人工知能を取り入れた個別化予測がされるようになっている.このようにマルチモーダル予測へと広がった予後予測を,患者ごとのリハビリテーション戦略の立案に活用していくことが期待される.

3.急性期から進める歩行再建 阿部浩明 氏
 歩行障害に関しては,歩行そのものを含む課題特異的な練習の反復が必要である.麻痺側下肢の支持性が著しく低下した片麻痺患者で,急性期から十分な歩行練習量を確保するためには,免荷装具・ロボットなども有用であるが,臨床実装しやすい代表的な手段として長下肢装具がある.長下肢装具の特徴と,適応,その歩行パターンや筋活動に関して解説した.また,長下肢装具で膝関節運動を制御し,足関節は底屈制動・背屈遊動として前型歩行練習をする筆者らの施設の歩行練習法について紹介した.

4.回復期の歩行リハビリテーションプログラム 冨田 憲 氏ら
 入棟時歩行に全介助から最大介助を要する患者を例にとり,回復期の歩行リハビリテーションプログラムを解説した.初期には補助具や手すりを用いて歩行練習の難易度を下げ,長下肢装具やリハビリテーション支援ロボットを用いる.中期には,短下肢装具と杖での歩行も組み合わせながら,周囲環境が統制されたリハビリテーション室で歩行練習を行い,立ち上がりなどの病棟練習も行う.T字杖と短下肢装具での歩行での介助量が減ってきたら,歩行練習環境を生活場面に切り替えていく.筆者らの施設で用いている歩行自立チェックシートも紹介した.

5.生活期の歩行リハビリテーションプログラム──活動・参加につなげる目標設定 佐藤 亘 氏
 生活期リハビリテーションにおいては,機能の維持・向上にむけた直接的なアプローチだけでなく,間接的に機能向上につながる活動・社会参加へのかかわりが重要である.回復期リハビリテーション病棟退院後から,通所や訪問リハビリテーションを利用した生活期リハビリテーションプログラムについて,筆者らの施設での取り組みを紹介した.例えば関節可動域の確保や麻痺側下肢への荷重練習といった身体機能面へのアプローチに加えて,家庭でのトイレのドアの開け閉めなど環境にあわせて練習を行っている.また,活動量の確保は重要であり,そのために具体的に目標設定をすることが求められる.

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 脳卒中片麻痺患者の歩行──リハビリテーション治療の実践

脳卒中片麻痺患者の歩行特性
大畑 光司

脳卒中後片麻痺患者の歩行予後予測
藤本 宏明,他

急性期から進める歩行再建
阿部 浩明

回復期の歩行リハビリテーションプログラム
冨田 憲,他

生活期の歩行リハビリテーションプログラム──活動・参加につなげる目標設定
佐藤 亘


●巻頭言
患者を診る,人生を支える──リハビリテーション診断が拓く可能性
尾川 貴洋

●入門講座
視覚障害者への対応③
盲ろう者の現状と援助の基本
前田 晃秀,他

ロボット介護機器の今⑥
ロボット介護機器の種類と適応(3) 起居・移乗・移動
福元 正伸,他

●実践講座
せん妄予防のストラテジー③
せん妄予防のための身体的拘束最小化戦略
宮川 慶

身体障害者診断書(肢体不自由)の書き方──ここがポイント③
意識障害によってほぼ寝たきり状態になっている場合はどのように考えればよいでしょうか?
小林 宏高

●短報
変形性膝関節症者における自主練習メニューの自己選択が自主練習実施回数に与える影響──シングルシステムデザインを用いて
前田 麗二,他

●調査
作業療法士による神経心理学的検査の使用実態──北海道内の作業療法提供施設を対象とした調査
齊藤 秀和,他


●サルコペニア・フレイルに対する領域横断的視座④
ヒアリングフレイル
中石 真一路

●患者会がつなぐ当事者の力⑥
近畿SCD・MSA友の会の取り組み
新保 健次

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
半藤末利子の『夏目家のそれから』──漱石の長女の脳卒中
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「青葉学園物語」──原爆孤児らの異年齢集団がもつ教育力に光を当てる
二通 諭

●学会報告
第60回中国四国リハビリテーション医学研究会
鴻上 繁

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