総合リハビリテーション Vol.53 No.12
2025年 12月号

ISSN 0386-9822
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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特集 ALSの治療とリハビリテーション

 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の治療に関しては,有効な治療薬の開発が期待されるとともに,新たなリハビリテーション治療手段の進歩も重要です.また,難治性疾患の場合には診断告知の問題や心理的なサポートの必要性なども課題です. 今回の特集ではALSに関する診断と告知の問題から,福祉用具を利用した環境整備の問題までさまざまな観点から最新の治療や支援について述べていただきました.具体的でテクニカルな内容もある一方,在宅での生活を支えるうえでの多職種連携の重要性まで含まれていて,非常に幅広く読み応えのある特集となりました.

1.診断と告知 荻野美恵子 氏
 豊富な臨床経験に基づいて筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断と告知の実際について解説していただいた.臨床経過の丁寧な聴取や十分な神経学的検査の実施の重要性をあらためて認識する.現在の診断基準や鑑別診断の難しさに触れながら,告知の実際についても詳細に記載されている.リハビリテーション科医や関連専門職種がALSの診断や告知をすることはまずないと思うが,専門医がどのように臨床を進めているのかの詳細な記述はわれわれにとっても非常に参考となる内容である.

2.治療薬の開発と現状 和泉唯信 氏
 日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療のトップランナーの一人である和泉先生に執筆していただいた.2024年にメコバラミン,トフェルセンが承認され,リルゾールとエダラボンと合わせて4剤がALS治療薬として投与可能になった.また,薬物治療というと進行抑制や生存期間延長が期待できるものが想定されがちだが,ALSで生じるさまざまな症状に対する治療薬や対応方法も重要であり,それらについても記述していただいた.少し難しい内容もあるかもしれないが,基礎知識として知っておきたい.

3.ALSの身体機能障害とリハビリテーション──病期に応じた支援と治療 早乙女貴子 氏
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病期とリハビリテーション専門職が支援および配慮すべきことについて解説していただいた.日常診療ではALS患者に接することが少ないリハビリテーション専門職であっても,ALSの病期ごとの症状や対応方法がわかりやすく概観できる.リハビリテーションアプローチについては,四肢体幹と呼吸機能障害について触れていただいたが,特に生命予後に直結する呼吸機能障害に対するリハビリテーション治療が詳細に記述されており,実際的である.

4.コミュニケーション支援 山﨑文子 氏ら
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病状に合わせたコミュニケーション用具の選択方法や導入の実際,支援者指導などに特化して解説していただいた.著者らは横浜市の在宅リハビリテーション事業としてコミュニケーションに支障のない時期から福祉用具の導入以降まで適時支援を行っている.コミュニケーション支援では,身体機能などに応じた用具の選択が当然重要となるが,その前段階としての姿勢や呼吸機能の保持・維持,さらには機能の変化に応じた用具の調整や変更も欠かすことができない.

5.ALSの在宅医療・緩和ケア 中村明澄 氏
 在宅医療専門医の立場から,筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の在宅療養を支えるうえでの治療やケア,利用可能な制度,家族のサポートなどの課題について,リハビリテーション関連職にとっても必要な知識や考え方を解説していただいた.特に,在宅療養を支えるうえでの協働意思決定の重要性が強調されている.医療チーム全員で,情報を正しくバランスよく整理し「本人にとっての最善」を模索し続け,対話を積み重ねるプロセスそのものが医療者に求められる重要な役割の一つである.示唆に富んだ論文である.

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 ALSの治療とリハビリテーション

診断と告知
荻野 美恵子

治療薬の開発と現状
和泉 唯信

ALSの身体機能障害とリハビリテーション──病期に応じた支援と治療
早乙女 貴子

コミュニケーション支援
山﨑 文子,他

ALSの在宅医療・緩和ケア
中村 明澄


●巻頭言
車椅子は空を飛べる
出田 良輔

●入門講座
睡眠とリハビリテーションを科学する④
睡眠と身体機能
西多 昌規

●実践講座
心臓リハビリテーションに役立つ検査レポートの読み方③
心エコー検査
駒村 和雄,他

嚥下障害の評価の実際⑨
誤嚥性肺炎症例の入院時に必要な包括的な評価
藤谷 順子

●研究と報告
慢性期脊髄不全損傷者に対するHAL®(Hybrid Assistive Limb®)を用いた歩行練習の有効性
延本 尚也,他

●紹介
パーキンソン病の基本動作における評価法──日本語版改訂版パーキンソン病アクティビティ・スケール(M-PAS)の紹介
谷口 星来,他


●ビッグデータ,リアルワールドデータの活用③
心臓リハビリテーションにおけるリアルワールドデータ活用
谷口 達典

●デジタルアウトリーチの進化が切り拓く新たな可能性⑤
VR医療相談集会が創造する新たなヘルスケアの可能性
葉梨 輝

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
細井和喜蔵の『女工哀史』──虐げられた者の心理特性
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「はだしのゲンはまだ怒っている」──漫画『はだしのゲン』の現在位置から見えてくる日本と世界の課題
二通 諭

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