理学療法ジャーナル Vol.59 No.2
2025年 02月号
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- EOI : essences of the issue
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EOI : essences of the issue
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特集 遠心性収縮を考える
遠心性収縮は日常生活活動における力の調整や運動速度の制御に重要な役割を果たすが,筋損傷リスクへの誤解から臨床では遠心性抵抗運動が敬遠されがちである.本特集ではエビデンスに基づき,その安全性と有効性を解説した.低強度から段階的に実施することで筋肥大や筋力増強を促し,高齢者や虚弱な患者にも適応可能であることを紹介している.さらに,関節制御の改善,マイオカイン分泌の促進,心血管ストレスの軽減といった利点も注目されている.正しい理解と技術習得を通じて,遠心性収縮の可能性を臨床に活かすきっかけとしたい.
運動学的分析による遠心性収縮力強化のアプローチ──スクワット動作の運動学的分析 三谷保弘
スクワットは,大腿四頭筋の筋力強化や膝蓋腱障害(ジャンパー膝)の症状改善などを目的に行われる動作である.理学療法で行う際には,スクワットの効果やそのメカニズムを理解しておく必要がある.また,スクワットの方法によって下肢の筋活動や膝関節に加わる物理的負荷が変化するため,安全かつ効果的にスクワットを行うためには運動特性について理解しておく必要がある.
運動学的分析による遠心性収縮力強化のアプローチ──着座動作の運動学的分析
──高齢者,変形性膝関節症患者に着目して 山本吉則,他
本稿では,着座動作における遠心性収縮の重要性を,健常者と高齢者,変形性膝関節疾患の観点から検討する.健常者の着座動作は,主に遠心性収縮による重心制御により安全かつ効率的に遂行される.一方で,高齢者や変形性膝関節疾患患者では,筋力低下や関節可動域制限,疼痛がこれを妨げ,不安定な要因となる.遠心性収縮トレーニングは,筋力の向上やバランスの改善に有用であり,低い代謝コストと安全性を有するため,高齢者への適応が期待される.
関節制御の弱化に対する遠心性収縮トレーニングの必要性──加齢に対する遠心性収縮トレーニングの必要性 竹林秀晃,他
日常生活の動作は,さまざまな筋収縮様式や力の加減,運動速度の調節により成り立っている.臨床場面においては,求心性収縮より遠心性収縮のほうが困難な場面が多くみられ,加齢による影響を顕著に受ける.本稿では,加齢による求心性・遠心性収縮時の関節位置制御特性について紹介した.遠心性収縮の評価・トレーニングに際して,求心性収縮との比較において単なる運動パターンの違いとして捉えるだけでなく,運動制御や神経系活動の違いを考慮することの必要性を述べた.
関節制御の弱化に対する遠心性収縮トレーニングの必要性──人工膝関節全置換術後患者の歩行に対する遠心性収縮トレーニングの必要性 深谷隆史,他
本稿では,歩行立脚初期に着目し,変形性膝関節症における膝関節伸展筋群の筋収縮様態の変化について述べる.健常者と比べ,変形性膝関節症では歩行立脚初期の伸展筋群の発揮モーメントは小さく,十分な遠心性収縮が発揮されない.人工膝関節全置換術後では術後比較的早期の段階でも,適切な理学療法により伸展筋群の発揮モーメントは改善し,遠心性収縮が得られ,歩行立脚初期の荷重伝達機能が改善していることがうかがえる.
遠心性収縮時の生理学的効果──電気的遠心性収縮がマイオカイン分泌に及ぼす効果
──hybrid training system 松瀬博夫
電気刺激療法は一般的な運動療法の代替手段として注目されている. Hybrid training system(HTS)は,電気刺激療法の一つで,電気刺激と随意運動を同時に組み合わせた方法である. HTSは,比較的低い運動強度でも十分な運動負荷が得られる電気的遠心性収縮を活用することによって効率的に運動効果が得られる.本稿では,運動によって骨格筋から分泌され臓器連関を介してさまざまな運動効果をもたらすマイオカインに関する研究を紹介する.
遠心性収縮時の生理学的効果──遠心性収縮の筋酸素動態への効果 寺田 茂
関節運動を生じさせる力源である筋収縮の様式には,静的収縮と動的収縮の 2種類がある.さらに動的収縮は,筋収縮時の筋長の変化から収縮を伴いながら筋が短縮する求心性収縮と逆に筋が伸張される遠心性収縮に分類される.これらの筋収縮様式には,それぞれさまざまな特徴があるが,本稿では求心性収縮と遠心性収縮時の筋酸素動態の比較を中心に,遠心性収縮の筋収縮特性について解説する.
遠心性収縮時の生理学的効果──遠心性収縮による持久力トレーニング 野中紘士
遠心性収縮は,求心性収縮に比べて酸素消費量が少なく,筋力強化効果が期待できるため,心臓や呼吸器に問題がある患者に対しても安全かつ効果的なトレーニング法として注目されている.持久力トレーニングは,最大酸素摂取量の向上やミトコンドリアの増加,筋線維タイプの変化,毛細血管の増加といった骨格筋に対する多くの適応効果をもたらす.遠心性収縮による持久力トレーニングは,筋力や筋量の改善,毛細血管の増加が確認されているが,遅発性筋痛や筋損傷,酸化ストレスの増大といったリスクが伴うため,適切な負荷設定が必要とされる.
疾患への影響──慢性閉塞性肺疾患患者における遠心性収縮トレーニングの効果 佐々木 誠
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)患者における遠心性収縮トレーニングは,遠心性収縮自転車エルゴメーター漕ぎや下り勾配トレッドミル歩行で行われている.いずれのトレーニングでも 4~12週間の実施によって,呼吸・心循環反応が少ないままで下肢筋機能をより大きく改善する効果が認められている.また,病態や症状に加え,健康に関連した生活の質にまで好影響を及ぼす可能性があり,呼吸理学療法の一手段として試行することが推奨される.
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特集 遠心性収縮を考える
エディトリアル 遠心性収縮を再考する
白谷智子
運動学的分析による遠心性収縮力強化のアプローチ──スクワット動作の運動学的分析
三谷保弘
運動学的分析による遠心性収縮力強化のアプローチ──着座動作の運動学的分析
──高齢者,変形性膝関節症患者に着目して
山本吉則,他
関節制御の弱化に対する遠心性収縮トレーニングの必要性──加齢に対する遠心性収縮トレーニングの必要性
竹林秀晃,他
関節制御の弱化に対する遠心性収縮トレーニングの必要性──人工膝関節全置換術後患者の歩行に対する遠心性収縮トレーニングの必要性
深谷隆史,他
遠心性収縮時の生理学的効果──電気的遠心性収縮がマイオカイン分泌に及ぼす効果
──hybrid training system
松瀬博夫
遠心性収縮時の生理学的効果──遠心性収縮の筋酸素動態への効果
寺田 茂
遠心性収縮時の生理学的効果──遠心性収縮による持久力トレーニング
野中紘士
疾患への影響──慢性閉塞性肺疾患患者における遠心性収縮トレーニングの効果
佐々木 誠
■Close-up 高齢者のシーティング
本邦における車椅子シーティングの変遷と機能的な意義
森田智之
病院における高齢者のシーティング
阿部高家
施設・在宅での高齢者のシーティングとキーパーソンへの指導
田中義行
●とびら
「あなただけをみている」自負
新屋順子
●視覚ベースの動作分析・評価⑩
腰部──動作分析に基づいた腰背部痛の評価と治療
森 健太郎
●薬剤と理学療法②
ステロイド
船木麻美
●文献収集と管理②
文献データベース
森山英樹
●理学療法とAI──活用実践例と近未来の展望②
AIツールを活用した情報収集
柳 尚弥
●理学療法士のキャリアデザイン──多様な可能性と挑戦②
理学療法士×起業──挫折と挑戦
保坂 広
●臨床実習サブノート
「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか⑪
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する全身持久力増強運動
沖 侑大郎
●報告
膝関節屈曲可動域120°獲得するための人工膝関節全置換術術後早期膝関節屈曲可動域のカットオフ値の検討
大塚真倫,他
●資料
理学療法士の社会進出に関する国際動向
川村博文,他
●My Current Favorite
小児リハビリテーション──知識と技術の継承をオンラインで行う
齋藤大地
●私のターニングポイント
怪我の功名
小宮山一樹
●学会印象記
第10回日本糖尿病理学療法学会学術大会──糖尿病治療におけるピットフォールを多角的な視点から考える
東根風志
第12回日本運動器理学療法学会学術大会──科学と技術,研究と臨床を循環させていく
西宮亜樹
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