理学療法ジャーナル Vol.59 No.3
2025年 03月号
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- EOI : essences of the issue
- 収録内容
- 付録・特典
EOI : essences of the issue
開く
特集 科学的介護
科学的介護は,要介護者の自立支援と重度化防止を目的に,科学的根拠に基づく介護を実現する取り組みです.2021年度介護報酬改定では「科学的介護推進体制加算」が導入され,その推進として科学的介護情報システム(long-term care information system for evidence:LIFE)によるデータ収集とフィードバックが進められてきました.しかし,データ入力の負担や結果の活用,さらにはケアにおける多職種連携など,科学的介護の推進には多くの課題がいまだ残ります.本特集では,科学的介護の意義と課題を整理し,理学療法士が担う役割や現場の工夫を共有することで,その推進に寄与する議論を深めていきます.
科学的介護のめざすもの 川越雅弘
介護保険制度では,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)に基づくケア・マネジメントの仕組みが導入されているが,十分に機能しているとは言いがたい.これを改善するために導入されたのが,介護支援専門員の思考力強化をめざした地域ケア会議であり,個別援助計画およびそれに基づく介護サービスの質向上をめざしたLIFEである.リハビリテーション専門職には,他の職種のアセスメント情報も活用しながら,効果的なリハビリテーション提供のあり方を追求していくことが求められている.
科学的介護情報システム(LIFE)の役割と活用されるデータの質向上に向けて 宇田和晃
科学的介護情報システム(LIFE)は介護施設・事業所でのPDCAサイクルを明示的・効率的に回すことを支援することによって介護・ケアの質向上に資する画期的なシステムである.LIFEの核は,現場で測定され登録されるデータの質である.リハビリテーション専門職としての立場から,LIFEで活用されるデータの質を検証し提言を行うことが,よりよいLIFEの運用にとって重要である.
介護老人福祉施設における科学的介護実践のための組織づくり 井口健一郎
科学的介護情報システム(LIFE)は事業所で行っているケアプロセスを可視化したもので,情報の集合体である.LIFE導入により利用者の観察すべき基本項目について多職種で共通認識をもち,利用者の負担を減らすケアへのアプローチが促進された.加えて多職種が積極的にコミュニケーションを図ることにより,対処的なケアから向上プラン,予防的なケアに転換することができた.一方で異なった教育を経てきた専門職同士が共通言語で語るうえでは,アセスメントや評価の仕方も共通の認識が必要になるため,教育が必要であることはもちろん,職場風土が醸成されるまでに一定の時間を要する.
口腔および栄養ケア・マネジメントに対する科学的介護の取り組み 髙田健人,他
2024(令和6)年度介護報酬改定では,リハビリテーション・機能訓練,口腔,栄養の三領域が共同して計画書を作成し共有する「一体的取組」が加算として評価されることとなった.一体的取組の条件として科学的介護情報システム(LIFE)への情報提出とフィードバックの活用が求められている.本稿では,科学的介護における口腔および栄養ケア・マネジメントの意義と課題を踏まえ,リハビリテーションに期待される役割について概説する.
排泄に対する科学的介護の取り組み 中川朋子
自立支援・重度化防止の取り組みを進める科学的介護の一方で,排泄に問題が生じるとおむつ装着や介助者主導のケアが行われてしまう傾向にある.アセスメントからケアを選択し,多職種と連携することで,本人主体の排泄動作につながっていく.本人主体の身体に負担のない排泄動作は,心身機能や日常生活活動の回復,その人らしさを取り戻していく一助となる.
認知症ケアに対する科学的介護の取り組み 田中繁弥,他
施設入所認知症者における科学的介護の推進に向けて,現実的な運用に関しては課題が報告されている.施設入所認知症者の置かれている心身機能や身体活動,社会的交流の少なさがさらなる廃用を引き起こしている現状から,身体機能面で関与することの多い理学療法士が評価・介入をすることで,心身機能に加えて社会性やQOL向上の改善が期待される.
介護現場におけるDXと職員のデジタルリテラシーをいかに高めるか 波戸真之介
現在の世の中は,デジタル技術を避けて生活すること,働くことがほぼ不可能となった.もちろん介護業界も例外ではなく,介護DXを推進するためのデジタルリテラシーの必要性が高まっている.そこで,デジタル技術を活用して,支援の質や生産性を向上させるために,われわれにどういった視点が必要なのか本稿では整理する.
科学的介護を推進するための理学療法士の役割と期待 牧迫飛雄馬
科学的介護を推進するため,介護分野における理学療法士には信頼性および妥当性が担保された評価の実施体制を構築して定期的に評価を実施することが求められる.また,その結果を個人および施設へ適切にフィードバックするとともに,PDCAサイクルによる継続的な取り組みの改善に寄与できることが期待される.さらに,これらを推進できる人材の育成を見据えた卒前・卒後教育のあり方も課題の一つである.
収録内容
開く
医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 科学的介護
科学的介護のめざすもの
川越雅弘
科学的介護情報システム(LIFE)の役割と活用されるデータの質向上に向けて
宇田和晃
介護老人福祉施設における科学的介護実践のための組織づくり
井口健一郎
口腔および栄養ケア・マネジメントに対する科学的介護の取り組み
髙田健人,他
排泄に対する科学的介護の取り組み
中川朋子
認知症ケアに対する科学的介護の取り組み
田中繁弥,他
介護現場におけるDXと職員のデジタルリテラシーをいかに高めるか
波戸真之介
科学的介護を推進するための理学療法士の役割と期待
牧迫飛雄馬
■Close-up 介護報酬の仕組み
介護保険の基礎知識と理学療法士の役割
川副巧成
地域包括ケアシステムの深化・推進
中田隆文
自立支援・重度化予防に向けた対応
井上達朗
●とびら
一期一会──小児がんの在宅支援の現場から
長島史明
●視覚ベースの動作分析・評価⑪
姿勢の見方──姿勢制御の観点から
今井良輔
●薬剤と理学療法③
パーキンソン病治療薬
宇田川雄也,他
●文献収集と管理③
診療ガイドライン
森山英樹
●理学療法とAI──活用実践例と近未来の展望③
AIを用いた研究支援と論文執筆
柳 尚弥
●理学療法士のキャリアデザイン──多様な可能性と挑戦③
理学療法士×女性のキャリアデザイン──キャリア形成を意識しながら学び続ける
新藤 愛
●臨床実習サブノート
「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか[最終回]
心不全に対する全身持久力増強運動
西川淳一
●紹介
パーキンソン病のすくみ足を評価する──日本語版 New Freezing of Gait Questionnaire(NFOG-Q)の紹介
谷口星来,他
●ひろば
多様な理学療法学生に対する学修支援とは──合理的配慮を見据えて
中村壮大
●私のターニングポイント
意志を行動へ
武田将英
●学会印象記
第7回日本がん・リンパ浮腫理学療法学会学術大会──多様な病期・領域でのがん理学療法の可能性
遠山柊介
第11回日本地域理学療法学会学術大会──地域とつながる,地域でつながる
渡邊康介
●My Current Favorite
研究成果の社会実装に向けた機器開発
三栖翔吾
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。