BRAIN and NERVE Vol.77 No.8
2025年 08月号

ISSN 1881-6096
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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神経筋疾患では,モノクローナル蛋白(M蛋白)の合併は診断の手がかりとして重要視されている。従来,M蛋白は生命予後に大きな影響を及ぼさないとされ,血液内科の分野ではMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)という,やや軽視されるような名称で呼ばれてきた経緯がある。しかし近年,M蛋白が各神経筋疾患の病態にどのように関与するかが解明されつつあり,neurological gammopathy of clinical significanceという呼称も提唱されている。本特集では,M蛋白が関わる神経筋疾患の病態や最新の治療について,第一線で活躍するエキスパートの解説をお届けする。神経筋疾患診療の新たな地平を拓く一助となれば幸いである。

ALアミロイドーシス 井手 俊宏 , 小池 春樹
ALアミロイドーシスは免疫グロブリン軽鎖のミスフォールディングにより多臓器にアミロイドが沈着する全身性疾患である。感覚解離や自律神経障害を伴うニューロパチーは本疾患の重要な初発症状の1つであり,時にCIDPとの鑑別が必要である。本論では,臨床症候,診断,神経生検を含む病理所見,最新の治療法を概説し,脳神経内科的視点からの診療の重要性について論じた。

POEMS症候群 水地 智基 , 三澤 園子
POEMS症候群は単クローン性の形質細胞増殖と血管内皮増殖因子(VEGF)の異常産生を病態の基盤とする全身性疾患である。疾患概念の確立や治療開発に,日本の研究者が大きく貢献してきた。その病態はいまだに不明な点も多いが,形質細胞を標的とした治療により,本疾患の生命予後は大幅に改善する可能性が高い。しかし,本症候群の適応を有する薬剤は,2021年に承認されたサリドマイドのみである。さらなる予後改善に向けて解決すべき課題は多い。

MAG抗体陽性ニューロパチー 佐藤 亮太 , 神田 隆
MAG抗体陽性ニューロパチーは特徴的な臨床像と病理所見を有する独立した疾患単位として確立されている。疾患概念の提唱から40年以上が経過し,病態メカニズムの解明,診断法の標準化,治療法の開発において着実な進歩を遂げてきた。近年,M蛋白陰性例の存在や,MYD88変異に基づくブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬による治療などの新たな知見が蓄積され,早期診断と適切な治療選択により患者の予後改善が期待されている。適切なバイオマーカーの確立,より効果的な治療法の開発,個別化治療の推進が今後の課題である。

モノクローナル蛋白とニューロパチー—診断までのプロセスを中心に 古賀 道明
M蛋白血症とニューロパチーはともに有病率が高く,因果関係なく偶然に合併することが多いが,一部のM蛋白はニューロパチーを惹起する。M蛋白によるニューロパチーは多彩で,M蛋白の特性や神経所見,電気・病理所見,全身合併症など多面的なアプローチが必要である。発症時にM蛋白血症は良性であっても,経過中に血液悪性腫瘍への進展リスクを管理することが脳神経内科に求められ,日常診療で押さえておきたいポイントを概説した。

孤発性成人発症ネマリンミオパチー(SLONM) 倉重 毅志
孤発性成人発症ネマリンミオパチー(sporadic late-onset nemaline myopathy:SLONM)は,遺伝子異常を伴う先天性のネマリンミオパチーとは異なる疾患である。M蛋白血症を伴うSLONM症例は数多く存在するが,治療反応性および生命予後が不良であり,SLONMの背景には後天的な免疫学的異常が存在すると考えられている。M蛋白陽性SLONMに対して高用量メルファラン療法と自家末梢血幹細胞移植による高用量メルファラン併用自家造血幹細胞移植(HDM-ASCT)を施行し,良好な経過が得られた症例が長期経過も含めて相次いで報告されている。そのため,SLONMでは早期診断が重要であるが,診断までに時間を要する場合や他疾患と誤診される場合が多いのが現状である。近年,SLONMおよびネマリンミオパチーの病理に関する知見は徐々に増しており,本論では特徴的な臨床所見および筋病理所見に着目してSLONMを概説する。

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特集 M蛋白と神経筋疾患

ALアミロイドーシス
井手俊宏,小池春樹

POEMS症候群
水地智基,三澤園子

MAG抗体陽性ニューロパチー
佐藤亮太,神田 隆

モノクローナル蛋白とニューロパチー──診断までのプロセスを中心に
古賀道明

孤発性成人発症ネマリンミオパチー(SLONM)
倉重毅志


■総説
アファンタジア──頭の中でイメージを形成できない人たち
工藤 駿

眼球運動の神経回路からみた“Active Vision”
高橋真有

早期症候性アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬ドナネマブ──臨床試験結果の概要
佐藤祥一郎,他

■症例報告
胸骨正中切開拡大胸腺摘除術を控え,クリーゼ予防としてジルコプランを導入した球麻痺を伴う全身型重症筋無力症の一例
山中菜々美,他


●日本人が貢献した認知症研究の足跡
第5回 前頭側頭葉変性症とC9ORF72 リピート伸長変異
森 康治

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