総合リハビリテーション Vol.52 No.10
2024年 10月号

ISSN 0386-9822
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 今月のハイライト
  • 収録内容

開く

特集 義肢装具治療の最前線

 義肢装具については,製作方法や素材,情報技術(information technology:IT)の導入など,進歩が著しい分野です.これに伴い,計測機器や機能改善効果に関する研究も進んでいます.さらに,ルールの変更も行われており,今回の特集では,これらの最新の進展について,専門の先生方に多角的にご解説いただきました.

1.義肢装具治療の近年の進歩 坂井一浩 氏
 義肢装具(および補装具)は,医療機関を受診し,保険医から処方を受ける流れと,補装具費支給制度に基づき,身体障害者手帳の所有者を対象として行われるものがある.補装具費支給基準で価格が定められており,その制度についてはいくつかの問題点が指摘されている.軽量化・装着感・脱着の容易性などの改善も重要であり,近年は3D技術の進歩,人工知能(artificial intelligence:AI)の導入,義肢装具ユーザーのフォローアップ,足部関連の業務のタスクシフトが課題となっている.

2.脳卒中患者のリハビリテーションと長下肢装具 冨田 憲 氏ら
 長下肢装具の適応は重度弛緩性麻痺や感覚麻痺を伴って麻痺側の支持性が低く,身体の垂直性障害を呈する症例である.長下肢装具により,麻痺側下肢3関節のうち膝関節と足関節を固定することで学習課題を体幹と股関節の制御に限定し,課題を至適難易度に調整することができる.しかし,遊脚困難性と立脚期における膝関節の自由度調整困難性が課題である.その課題克服にさまざまな工夫がなされているが,その発展形として,歩行練習支援ロボットが開発されている.

3.短下肢装具 山本澄子 氏
 脳卒中患者のための短下肢装具(ankle.foot orthosis:AFO)は治療用と機能代償用がある.AFO足継手の機能は初期角度と底屈背屈両方向の可動域と制動の強さで示され,歩行練習中の課題難易度を調整することができる.近年は特に機能調節に焦点をあてて開発されたAFOもある.使用効果の評価として,比較的簡便に計測が可能なウェアラブルな計測器の開発が進められている.

4.義手最前線 柴田八衣子 氏
 義手は,装飾用義手,作業用義手,能動義手の3つに大別される.作業用義手では,近年,さまざまな運動に特化した専用の作業用手先具が台頭してきている.体内力源の能動義手に関しては,2024年に「能動義手適合検査表日本版」が完成し,適合検査の明確化がなされた.体外力源の能動義手(筋電電動義手)では,2つの電極を使用するマイオボックシステム(myobock system)が主流であるが,近年,多指駆動型の電動ハンドも販売され,多電極型筋電義手制御システムが開発されている.

5.義足の近年の進歩と義足ユーザーへの適応 赤星和人 氏
 義足のソケットは義肢装具士が採型し個々の患者に合わせて作製するが,それ以外の足部,膝継手などのパーツは「完成用部品」であり,近年さまざまな機能のものが市販されており,ユーザーに合わせて選択する.増加している高齢者切断においては,「歩行能力と活動性」のみでパーツを選択していくだけでなく,「義足の着脱能力」と「断端の皮膚状態とその管理能力」にも着目する.また,アスリート向けのスポーツ義足では,費用負担の大きさや体験機会の少なさが課題となっている.

6.電動車椅子 高塩純一 氏
 小児の電動移動機器(power mobility device:PMD)は単なる移動するための機器ではなく,発達保障の立場から重要である.PMDによる自己主導的な移動は,環境との相互作用のなかで身体および認知機能の成熟に影響を与え,運動学習を可能にすると考えられる.さらに,自ら動くことは,自分の有能性を育み,意思決定を可能にすると考えられる.筆者らが設立した Kids Loco Projectでの経験が蓄積しつつあり,PMDの早期導入が望まれる.

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 義肢装具治療の最前線

義肢装具治療の近年の進歩
坂井 一浩

脳卒中患者のリハビリテーションと長下肢装具
冨田 憲,他

短下肢装具
山本 澄子

義手最前線
柴田 八衣子

義足の近年の進歩と義足ユーザーへの適応
赤星 和人

電動車椅子
高塩 純一


●巻頭言
義足と社会
梅澤 慎吾

●特別記事
補装具費支給制度の指針及び要領の改正ポイント
徳井 亜加根

●入門講座
あなたは知っていますか? 現場で必要な医療知識・技術②
薬剤
高橋 哲也,他

●実践講座
高度肥満症患者のリハビリテーション治療④
高度肥満症患者の関節障害とリハビリテーション治療
原 茂之,他

パーキンソン病治療の新しい展開①
臨床診断
野川 茂

●研究と報告
日本版リバーミード行動記憶検査児童バージョン(RBMTC)の信頼性と妥当性の検討
渡邉(阿部) 真理奈,他

●症例報告
脳卒中片麻痺患者の経時的変化に合わせて多様な機器を用いて作業療法を行った1症例
横山 雄一,他


●わたしたちのメンタルヘルスケア②
メンタルヘルスケア総論②──職場内の連携体制と復職支援を中心に
小山 文彦

●チーム医療を支えるリハビリテーション看護①
リハビリテーション看護からみる摂食嚥下の管理──必要な動作を引き出す看護アプローチ
矢野 聡子,他

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
司馬遼太郎の『ひとびとの跫音』──昭和40年代の脳卒中への対応
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「生きるのに理由はいるの? 『津久井やまゆり園事件』が問いかけたものは...」──優生思想克服の道程で正対すべき一作
二通 諭

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。