精神医学 Vol.66 No.10
2024年 10月号

ISSN 0488-1281
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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特集にあたって
金生由紀子(東京大学大学院医学系研究科こころの発達医学分野/本誌編集委員)

 不登校は,文部科学省によると,年度間に30日以上登校しなかった児童生徒のうち,「何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし,「病気」や「経済的理由」,「新型コロナウイルスの感染回避」による者を除く。)」とされている。小中学生の不登校の人数の推移を見ると,2012年度から増加し続けており,2022年度は29万人以上となっている。新型コロナ感染症の流行後にその傾向が特に顕著である。
 不登校の動向には,家庭や学校,社会のあり方の変化も関連していると思われる。たとえば,インターネットやデジタル機器の普及による生活の諸側面の変化に新型コロナ感染症の流行が重なって,より影響が増幅したということもあるかもしれない。このような変化は,余裕の乏しい家庭や学校には負担となるかもしれない一方で,新たな活動や居場所の可能性を広げるかもしれない。
 また,学校を巡る環境を受け止める児童青年一人ひとりによって反応が異なってくるであろう。不登校に至るまでに,どのような発達水準なのか,どのような発達の経過をたどってどのような発達の課題を乗り越えてきたかによっても違ってくると思われる。どのような発達特性やパーソナリティであるかも関わると思われる。そして,不登校を経験したとしても,その人の特徴と置かれた環境によって影響は一律ではないだろう。
 不登校という状態にある人がよりよく生活できるようにするには,社会のあり方までを見渡すと同時に,一人ひとりを丁寧に把握して,その実態に合わせて多側面から多職種で支援することが重要と思われる。
 本特集では,家庭や学校,社会との関連からの検討に加えて,不登校につながりうる精神・行動面の不調として,うつ病や不安症などの精神疾患のみならず,発達障害,いじめや自殺,ゲーム依存・ネット依存,睡眠の問題,身体症状を取り上げて論じていただいた。不登校を支援の対象とするだけでなく,レジリエンスやwell-beingにつなげるという観点からの論考もあり,包摂的な内容になっているのではないかと考える。
 一般の精神医療の現場で不登校という状態にある人に遭遇することは珍しくない一方で,そういう人が必ずしも医療機関を訪れるとは限らない。どのような場面で出会うとしても,精神科医をはじめとしてこころや発達に関わるさまざまな人たちが不登校について理解を深めるのに役立てたら幸いである。

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 不登校の理解と支援
企画:金生 由紀子

特集にあたって
金生 由紀子

■総論
不登校概論
宇佐美 政英

■家庭・学校・社会との関連
不登校と家族の状況──子どもが発信するSOSを手がかりとした家族理解
中地 展生・他

学校教育の在り方と不登校──学校は変われるのか?
和久田 学

不登校を取り巻く社会の状況
中土井 芳弘・他

愛着や居場所という視点から考える不登校
和迩 健太・他

各国における不登校を取り巻く状況──COVID-19パンデミック前後の変化を中心に
西村 倫子

■不登校に潜む精神疾患・症状
不登校と精神疾患
山岸 正典

発達障害のある子どもの不登校への支援
井上 雅彦

いじめ被害と不登校,自殺
桝屋 二郎

不登校とゲーム依存・ネット依存
館農 勝

不登校と睡眠の問題
井上 彩織・他

不登校と身体症状
永光 信一郎

■社会資源との連携
不登校支援における,学校内での多職種連携・協働のあり方
竹森 元彦

「メガネ」を外してみませんか?──不登校「理解」の歴史から「支援」を考える
山下 耕平

不登校に伴う家族への支援
牛島 洋景

不登校から社会的自立へ──不登校者支援体制の課題と可能性
足名 笙花・他

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