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特集にあたって
福田正人(群馬大学名誉教授/本誌編集委員)
精神疾患の大きな特徴は,「本人の気づき」が難しいことである。病気についての気づきという本格的なテーマは「病識」と呼ばれてきたが,気づきにはより広い裾野がある。症状の始まりの時期にそれが病気によると気づかないこと,治療を受けていても症状やその変化に気づかないこと,体の症状や行動の表出が精神疾患に由来すると気づかないことは,日常診療のなかで出会うその例である。
そうした気づきの難しさは,精神医療の特徴の重要な要因となっている。たとえば,受診が遅れがちになることや,受診に後押しが必要なことが多い状況は,精神保健についての特徴である。共同意思決定(shared decision making:SDM)に努めても治療合意が難しい場合があることや,アドヒアランスという考え方そのものが難しいことは,精神医療についての特徴である。精神医療に特化した精神保健福祉法で非自発入院や行動制限が定められていることは,法制度についての特徴である。
当事者にとって,気づきの難しさは,医療についての信頼と納得という医療の基本を感じにくくさせる要因となる。また,病気や症状を自覚してセルフコントロールを図るという,当事者主体の取り組みを難しくする要因でもある。そうした難しさについて,当事者研究やピアサポートという形で,当事者同士の交流を通じて気づきを手に入れる取り組みが広がっていることは,気づきについての今後のあり方を示唆している。
そこで,伝統的な病識や病感という考え方から出発して広がってきた「精神疾患についての当事者の気づき」について,さまざまな視点からの捉え方をまとめる特集を企画した。多くの精神疾患に共通する気づきの難しさとともに,それぞれの疾患の特徴に応じた気づきの難しさがある。医療者の視点からの気づきの難しさとともに,当事者の視点からの気づきの難しさがある。精神疾患についての気づきと病識を俯瞰した本特集が,読者の皆さんの「精神疾患と精神医療の新しい展開への気づき」の機会となることを期待いたします。
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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 精神疾患の気づきと病識
企画:福田正人
特集にあたって
福田 正人
精神障害の気づきと病識を育む
池淵 恵美
当事者活動からみた病識とは何か
山田 悠平
精神医学における病感と病識──精神病理学的視点から
崎川 典子・他
神経心理学から見る気づきと病識
是木 明宏
気分症の気づきと病識
平島 奈津子
統合失調症の気づきと病識
賀古 勇輝
強迫症(OCD)における気づきと病識(洞察)──閾値下強迫症状との関連性をふまえて
松永 寿人・他
不安症群の気づきと病識
塩入 俊樹
身体症状症における病識
名越 泰秀
アルツハイマー型認知症の気づきと病識
繁田 雅弘
高次脳機能障害の気づきと病識
船山 道隆
発達障害の気づきと病識
村上 伸治
パーソナリティ症──患者の気づきを治療に活かす
林 直樹
摂食障害の気づきと病識
西園 マーハ 文
物質使用症の気づきと病識
松﨑 尊信
●研究と報告
統合失調症急性期入院患者の好中球/リンパ球比と血清蛋白量の前向き研究──経時的変化,精神症状との関連,数量的診断について
菊池 章・他
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