総合診療 Vol.36 No.8
2026年 08月号
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Editorial
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避けられない死と正面から向き合う──死を自然な過程に、そこに至る道をなだらかに
平島 修(徳州会奄美ブロック総合診療研修センター)
毎年160万人が死んでいくわが国で、医療はいまだに死が苦手だ。
病院の廊下ではこっそり語られ、学会でも死は周辺テーマに追いやられる。医学教育の多くは“治す”ことに費やされ、“看取る”ことに割かれる時間は驚くほど少ない。治療が成功すれば死は去り、失敗すれば死が訪れる。そんな構図のまま医師は育てられる。死を語ることが、何か敗北を認めることのように感じる空気が、医療現場にはいまだ漂っている。
だが、現実は容赦ない。2040年代には年間170万人近くが命を落とす。がんだけではなく、心不全、老衰、認知症──死の形は多様で、予測しがたい。そのほとんどに緩和ケアの専門家はおらず、その多くを担うのは、われわれ総合診療医である。昼夜を問わず外来で、在宅で、施設で、何度も死に向き合うのは、患者に一番近い私たちである。
本特集「死をみとる1カ月」は、その現実から目を逸らさないために企画した。総論では、ACPの本質、DNARや緩和的鎮静をめぐる倫理的判断、臨床宗教師が担う役割まで、死そのものの問いに向き合う。各論では、半数の患者が最期まで痛みを抱えるという現実、心不全や末期腎不全それぞれのジレンマ、若手医師が初めて看取りに直面するその瞬間まで、珠玉の17本の論稿がベッドサイドの「どうしたらいい?」に答えてくれるはずである。
本特集が読者にとって、最期の1カ月を最期まで生きることを支える医療への一助になればと願っている。
田上恵太(悠翔会くらしケアクリニック練馬/東北大学大学院医学系研究科 緩和医療学分野)
死は度々、つらさや苦しみを伴い、古来から忌み嫌われた。苦しく、不安なことを避けようとするのは当然で、人は死を遠ざけようとするが、そのなかで、われわれ医療者の役割は何かと、考えたことはあるだろうか?
かつては「絶望させるので、本人には死について伏せる」ことが普通に行われてきたが、自らの身体に異変を感じた患者たちは、死を疑い、「何か隠されているのではないか」と一人思い悩み、苦しんでいた。死を伏せ、責任という十字架を背負う決断をした家族や医療者も、患者が死に至るまでいろいろ判断に迷いながらも、「仕方ない、これ以上できることはないのだから」と自らに言い聞かせてきたように感じる。
それから数十年が過ぎ、緩和ケアのエビデンスや経験が蓄積され、「死はつらく苦しい」ことを今、まさに緩和できるようになってきた。本特集「死をみとる1カ月」では、終末期ケアの本質や種々の概念を認識し、各病態における“つらさや苦しさ”を緩衝する手立てやヒントを数多く示している。本特集を通して家族や医療者など周囲が患者と共に歩みやすくなり、死に至る道をなだらかにすること、ひいては、「死が悲しいことは自然の過程である」と市民が認知し、市民同士が悲しみを慈しみ合うような世の中になっていくことを願っている。
本企画にお誘いくださった平島修先生、そして知識や経験の数々を文章に著してくださった執筆者の皆様に御礼申し上げると共に、平島先生との出会いを導いて下さった奄美の神々の思し召し、そして死をもってわれわれに教えやメッセージをくださった、先に旅立って逝かれた患者さんたちに心から感謝の意をお伝えしたい。
収録内容
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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 死をみとる1カ月──人生の最期をどう支えるか
企画:平島 修|田上恵太
■総論 死をみとる1カ月と倫理的視点
①超高齢社会における看取りの現状と課題
平島 修
②人生の最終月に向き合う医療哲学
横田雄也
③人生の最終月に向き合う医療と宗教
金田諦晃
④終末期医療の倫理と法──何が許され、何が許されないのか
田代志門
⑤ACPと意思決定支援・看取りのコミュニケーション技術
濱田 努
■第I章 症状緩和の実践
①痛みと全人的苦痛への対処
田上恵太
②せん妄・不安への対応
山口順嗣|貞廣良一
[コラム] 認知症の人が死を迎えるとき──残り1カ月、患者はどういう状態で、われわれはどう支えるのか
吉田哲彦
③消化器症状と栄養・水分のマネジメント──医師の立場から
佐々木 淳
④消化器症状と栄養・水分のマネジメント──管理栄養士の立場から
塩野﨑淳子
■第II章 多様な疾患別の看取り
①心不全終末期のケア
大森崇史
②呼吸器疾患終末期のケア──最期まで寄り添うための実践知
豊島孝幸|森川 暢
③末期腎不全・透析患者の終末期ケア
大武陽一
④肝不全患者の終末期ケア
結束貴臣|石原 洋|髙橋宏太
■第III章 ケア提供体制と医療者の取り組み
①看取りを支える多職種チームアプローチ
七澤ゆきの
②若手医師が初めて看取りに直面するとき
名嘉祐貴
③最期の場所をどう選ぶか──病院・在宅・施設の視点
髙橋啓悟|田代直寛|西尾裕樹|中安一夫
●Editorial
避けられない死と正面から向き合う──死を自然な過程に、そこに至る道をなだらかに
平島 修|田上恵太
●新連載 医学生のアトリエ2025作品紹介|1
【写真】庄司 桃太朗
●総合診療医、病院を診る|経営も“一診入魂”|2
病院という「患者」を診断する
高田史門
●構造式で語る医学|薬物の交差反応や意外な副作用を学ぼう!|20
細胞の中から効く局所麻酔薬
上田剛士
●What's your diagnosis?|284
何か飲んだ?
酒見英太|西 輝人
●オスラーに学ぶ“平静の心”|医師と医学生に贈ることば|13
適切な治療
森島祐子|仁木久恵
●地域に根ざす泌尿器科医が贈る|新発想! 超プライマリ・ケア目線からの泌尿器疾患診療|8
プライマリ診療で前立腺肥大症の診療を上手に行うために
松木孝和
●臨床に役立つ 東洋医学のパール&ピットフォール|5
【パール】胃腸を制するものが夏の暑さを制する!
【ピットフォール】夏バテの漢方薬は清暑益気湯一択ではない!
堀場裕子(著)|吉野鉄大・鈴木雅雄・寺澤佳洋(監修)
●CKD診療の新しい潮流|“腹膜透析”という選択肢|5
【情報提供④】腎臓・透析専門医の立場からプライマリ・ケア医に期待するもの──高齢化する腹膜透析患者を「2人主治医制」で支える
櫻田 勉
●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|76
ただ、そこにいること
佐々木隆徳
●投稿
Empirical EYE
「心因性」と言いたくなったときの会話の迂回路──共感的理解と「I-message」で関係を立て直す
猪野裕之
総合診療外来・在宅
うつ病患者において睡眠時無呼吸症候群の診断を契機に向精神薬多剤併用の見直しが可能となった1例
猪野裕之





