総合診療 Vol.36 No.7
2026年 07月号
特集 今知っておきたい認知症診療 専門医×プライマリ・ケア医で築くこれからの現場力
| ISSN | 2188-8051 |
|---|---|
| 定価 | 2,860円 (本体2,600円+税) |
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Editorial
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認知症医療を取り巻く変化
片岡仁美(京都大学医学部医学教育・国際化推進センター)
認知症の特集を組ませていただくことになり、京都大学の木下彩栄先生に共同企画をお願いした。木下先生に専門家の立場から貴重なご示唆とご執筆者の推薦をいただいて構成した本特集は、認知症診療の最新の知見を網羅した必読の内容であると考えている。木下先生およびご執筆者の先生方に厚く御礼を申し上げたい。
認知症の診療に苦手感があった。患者さんとのコミュニケーションが容易ではなく、ご本人を理解するよりご家族の困りごとに対応する比重が自然に増え、しかも有効な手立てが限られている。
そんな中ユマニチュードに出会ったことは一つの転機であり、福音でもあった。しかし、記憶という目に見えないものが失われる辛さはなかなか理解が及ばない。ある患者さんが認知症の進行に伴い「色がわからなくなっている」ことに気が付いた瞬間があった。その方は以前繊細な植物画を絶妙な色遣いで描いていた。しかし今、塗り絵の色遣いから色覚異常の進行に気づいた。色鉛筆を前にして逡巡している姿を見て、好きだったからと差し出した塗り絵が、本人にとっては「わからないことを突きつけられる」残酷なことであったことも認識した。機能だけでなくその人らしさの一部を喪失することだと実感するとともに、「見える」形でなければ深く感じることができなかった自分の至らなさを悔いた。
認知症診療は自身にとって取り組むべき大きな課題だ。一方で、機能や後天的に獲得したものを失っていっても最後まで残る根源的なその人の本質、愛情やあたたかさを実感するに至り、その意味をもっと汲み取りたいと願う。
木下彩栄(京都大学大学院医学研究科在宅医療・認知症学)
2023年以降、認知症診療は「対症療法中心の時代」から、「早期診断・疾患修飾・予防」を重視する時代へと大きく転換した。その最大の契機は、抗アミロイドβ抗体の登場である。これはAlzheimer病(AD)の根本病態に関与するアミロイドβを除去し、認知機能低下の進行を抑制する初めての実用的な薬剤であり、認知症診療に「治療可能性」という新たな概念をもたらした。
この変化に伴い、診療体制も大きく変わった。従来より一段階前の軽度認知障害(MCI)の時期からの治療開始が可能になったことにより、患者さんへの説明や意思決定支援、かかりつけ医との連携に大きな変化が生じている。
さらに近年は、「予防」への関心が急速に高まっている。生活習慣への介入が進行抑制に寄与することが明らかになり、認知症診療は、専門医だけでなく、地域医療、生活習慣病管理、公衆衛生と連携した「ライフコース全体のシームレスな医療」へと拡大している。
このように、認知症診療は、「認知症になってから支える医療」から、「早期に診断し、進行を抑制し、予防しながら認知症の人の生活を社会全体で支える医療」へと大きく変革している。
こうした認知症医療の進展の一方で、高額な薬剤費、地域格差、専門人材不足、治療適応判断などの課題も顕在化し、認知症に対するスティグマから治療の遅れも生じている。
本特集では、このような最近の認知症医療を取り巻く変化を、第一線の先生方にわかりやすく解説していただくことを企図した。
収録内容
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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 今知っておきたい認知症診療──専門医×プライマリ・ケア医で築くこれからの現場力
企画:片岡仁美|木下彩栄
【Overview】
一目でわかる認知症の今
木下彩栄|片岡仁美
【All about Dementia】
■診断総論
① 認知症の早期診断の重要性
木下彩栄
② 認知症の診断と専門機関への紹介のタイミング
石川光紀
③ 認知症診療の実践:鑑別診断のステップと新しい医療連携
葛谷 聡
■診断各論(ケースで学ぶ診断)
① 物忘れ・認知症の原因を見極める──脳神経内科の視点から
上田紗季帆
② BPSDにどう対応するか──精神科からみた認知症診療
繁信和恵
③ 認知症を疑ったときにまず除外すべき脳神経外科的疾患──treatable dementiaを見逃さないために
梶本宜永
④ 総合内科で診る認知症──治療可能な内科疾患の鑑別
大塚勇輝|櫻田泰江|大塚文男
⑤ 認知症診療における訪問診療の役割
田中 誠
■治療総論
認知症治療のアップデート
和田健二|秋山真樹
■治療各論(治療の最前線)
① 抗アミロイドβ(Aβ)抗体療法の現状と今後
佐藤謙一郎|岩坪 威
② 行動・心理症状への対応
太田深秀|新井哲明
③ 認知症と漢方治療
谷川聖明
④ 認知症診療──非薬物療法のための指針
上村直人|數井裕光
⑤ 認知症進行抑制のための多因子介入
古和久朋
■マネジメント総論
認知症ケアの最前線──Society 5.0時代におけるパーソン・センタード・ケアの実装
山川みやえ
■マネジメント各論
① 「患者の視点」で認知症を考える
遠藤英俊
② ケアの技法:ユマニチュード
本田美和子
③ 認知症疾患の新しい医療連携
葛谷 聡
④ 認知症介護に携わる家族の支援
武地 一
【Q&A】
Q1 外来で簡単に認知症のスクリーニングをするには?
武田朱公
Q2 認知症の予防と患者指導はどうしたらよい?
服部頼都|猪原匡史
Q3 認知症の人にACPをどう切り出す?
小川朝生
Q4 認知症患者への説明と寄り添い方、家族への説明は?──意思決定支援の観点から
樋山雅美|成本 迅
Q5 認知症サポート医と認知症サポーター制度とは?
澤田親男
Q6 認知症にやさしい病院づくりとは?
木内大介
Q7 認知症基本法で何が変わるのか?
江川斉宏
●Editorial
認知症医療を取り巻く変化
片岡仁美|木下彩栄
●ゲストライブ
認知症のケアの本質とは
イヴ ジネスト|本田美和子|片山充哉|関口健二|片岡仁美
●新連載 総合診療医、病院を診る|経営も“一診入魂”|1
総合診療医が病院経営を救う
高田史門
●構造式で語る医学|薬物の交差反応や意外な副作用を学ぼう!|19
ジギタリス製剤に似た物質
上田剛士
●地域に根ざす泌尿器科医が贈る|新発想! 超プライマリ・ケア目線からの泌尿器疾患診療|7
プライマリ診療での夜間頻尿診療の考え方も変えてみる
松木孝和
●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|30
“医学教育”深掘り大調査!──さらに深く学ぶためにはどうしたらいいの?
佐田竜一|木村武司|長野広之
●オスラーに学ぶ“平静の心”|医師と医学生に贈ることば|12
適切な判断
森島祐子|仁木久恵
●What’s your diagnosis?|283
フェイクニュース~垣間見えた真実~
藤本卓司
●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|75
その“棘”は性格か、それとも…
森永康平
●臨床に役立つ 東洋医学のパール&ピットフォール|4
【パール】尿管結石の除痛に、芍薬甘草湯や志室穴
【ピットフォール】ツボの場所は正確にとろう?!
寺澤佳洋|吉野鉄大、他(監修)
●CKD診療の新しい潮流|“腹膜透析”という選択肢|4
【情報提供③】腹膜透析の原理と治療手技、合併症とその対応──実践の基礎知識と総合診療医が知っておきたいポイント
森本耕吉(コメント:小林 竜)





