総合診療 Vol.34 No.7
2024年 07月号

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本邦では、世界的に見ても健診/人間ドック受診率が高い。しかし、健診/人間ドック受診者はもちろん、医師でさえ、そのデータの取り扱いに迷うことも多い。
本特集では、われわれプライマリ・ケア医は、「どんな時に各専門医に紹介すべきなのか?」「患者にはどう説明すべきか?」「健診の意義を高めるためにどうアドバイスするか?」を、健診項目をいくつかのカテゴリーに分けて解説する。
患者・家族から厄介な健診結果で相談を受けても、「明日からはもう大丈夫!」と感じていただければ幸いである。

ISSN 2188-8051
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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健診結果説明は、予防・健康教育を促し、患者とよりよい信頼関係を築くチャンス!

宮上泰樹(順天堂大学医学部総合診療科学講座)

 患者が健康診断や人間ドックの結果を持って病院受診したとき、その解釈や説明に困ることは多いと思います。説明をした際に患者を怒らせてしまった、その場で適切な説明ができず後悔したという経験は一度や二度ではないのではないでしょうか。かくいう私も「大丈夫ですよ、また次の健診で」といった事なかれ主義的な対応をとり、患者とトラブルになったことがありました。
 また、外来という短時間で健診結果を把握し適切に回答するのは、かなりハードルが高いと感じます。エビデンスは国内外で異なり、どう回答すべきかわからないことも多々あります。しかも、患者は突然ふらっと健診結果を持参してくるため、予習は全くできません。
 しかし、われわれ総合診療医にとって健診結果の説明はとても重要な診療の守備範囲と言えます。知識を持ち、適切な対応を行うことで患者の予防・健康への意識を促す、攻めに転じることもできうる場面なのです。そんな「ピンチをチャンスに変えることができる魔法のような本があったらいいのになぁ」と思っていたのが本特集の企画の入り口でした。
 本特集では、ありがちなNG対応を挙げ、なぜそれがNGなのか、そしてどう対応すべきかを解説していただきました。若手の読者では先人の失敗から学ぶことができ、また経験を積まれている方には、自身の対応への振り返りや気づきにつながるのではないかと思います。ぜひ1診療部に1冊、健康診断/人間ドックの結果説明で困った時のお助け本として手に取っていただければ幸いです。


内藤俊夫(順天堂大学医学部総合診療科学講座)

 当科では、15年以上前から人間ドックの結果説明を行っています。総合診療医は、臓器横断的に患者を診ますが、そのアプローチは健診結果の説明やその後の対応に役立ちます。また、普段われわれは、健診異常を指摘された人を受ける側にいますが、健診結果を読み解き、順位付けを行い、その後の方向性を示す、という送る側の経験もまた重要です。
 しかし、患者への健診・検診に対する説明は、そう容易くありません。もちろんそこにはエビデンスも重要ですが、患者背景を鑑みる必要があります。医師の説明の仕方次第で、その後の患者のQOLを損なうこともありえます。患者・家族の意思を尊重しつつも、時に「今後の検診は不要」と責任をもって言える覚悟、そしてそれを受け入れてもらえる人間関係を築いておくことも必要です。つまり、全人的に患者に寄り添う能力が試されているのです。
 そこで、本特集では、当院の経験をもとに、①患者・家族からよく受ける質問、②実際に回答に困った質問、について、提示症例の背景を鑑み、また最新かつ重要なエビデンスも踏まえた回答例をお示ししました。
 「健診歴」は患者の健康リテラシーの評価指標となります。そして、「健診結果について質問をする」ということは、より自身の健康への意識が高いことを示しており、行動変容を促す絶好の機会となります。この好機を逃さず、患者の予防・健康への意識を高め、その後の診療に活かすべく、本誌をご活用いただければ幸いです。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 どうする!? 健診異常──これってホントに異常なの? どう説明する?
企画:宮上泰樹|内藤俊夫

■総論
①健康診断とヘルスリテラシー
福田 洋

②健診・検診の必要性とエビデンス
内藤俊夫

③当科の人間ドックにおける女性医師の取り組み
齋田瑞恵

④健康診断/人間ドックと総合診療
宮上泰樹

■各論 「健診で〇〇と言われたのですが……」にどう対応するか?
健診・ドックの有用性
Q1 そもそも何歳まで健診を受けたらよいのでしょうか?
前川耀一郎|齋藤淑子

Q2 人間ドックって必要ですか?
前川耀一郎|齋藤淑子

心血管系
Q3 頸静脈エコー検査でIMT肥厚があると言われたのですが……
山藤光一郎|小西博応

Q4 ABI・CAVIで異常を指摘されたのですが……
山藤光一郎|小西博応

Q5 心電図検査で心室性期外収縮と言われたのですが……
山藤光一郎|小西博応

Q6 「脳の加齢性変化あり」と言われたのですが……
飯田圭祐|小川まゆ

消化器系
Q7 肝臓に「できもの」があると言われたのですが……
小原俊介|久代聖子

Q8 胆囊がおかしいと言われたのですが……
小原俊介|久代聖子

Q9 便に血が混じっていると言われたのですが……
小原俊介|久代聖子

Q10 胃にポリープがあると言われたのですが……
小原俊介|久代聖子

生活習慣病1
Q11 「コレステロール値が高いと動脈硬化を起こす」と言われたのですが……
小泉文乃|横川博英

Q12 血圧が高いと言われたのですが……
小泉文乃|横川博英

Q13 痛風になるかもと言われたのですが……
小泉文乃|横川博英

Q14 「HbA1cが高いから糖尿病」と言われたのですが……
小泉文乃|横川博英

生活習慣病2
Q15 脂肪肝と言われたのですが……
木附大晴|青木のぞみ

Q16 内臓脂肪が多いと言われたのですが……
木附大晴|青木のぞみ

Q17 BMIが高いと言われたのですが……
木附大晴|青木のぞみ

呼吸器系
Q18 肺のCTを撮影したところ、「異常陰影あり」と言われたのですが……
飯田圭祐|小川まゆ

腎・泌尿器系
Q19 腎臓に石があると言われたのですが……
三澤 麦 リチャード|濱田千江子

Q20 尿は赤くないのに、「血が混じっている」と言われたのですが……
宮上泰樹

Q21 尿に蛋白が混じっていると言われたのですが……
三澤 麦 リチャード|濱田千江子

Q22 尿にばい菌が混じっていると言われたのですが……
三澤 麦 リチャード|濱田千江子

血液
Q23 貧血だと言われたのですが……
東中園真也|森 博威

Q24 血が多すぎると言われたのですが……
東中園真也|森 博威

ウイメンズヘルス
Q25 乳癌検診はもう受けたほうがいいですか?
坂入みずき|有川茉莉

Q26 子宮頸癌検診は、細胞診とHPV検査のどちらを受ければいいですか?
坂入みずき|有川茉莉

腫瘍マーカー
Q27 PSAが高いと言われたのですが……
パディアチィ プラベン|草生多恵

Q28 CEAが高いと言われたのですが……
パディアチィ プラベン|草生多恵

Q29 CA125が高いと言われたのですが……
パディアチィ プラベン|草生多恵

感染症
Q30 梅毒の疑いがあると言われたのですが……
上西信慶|佐野文昭

Q31 HIV陽性と言われたのですが……
上西信慶|佐野文昭

Q32 HBVの検査が陽性と言われたのですが……
上西信慶|佐野文昭

聴力・視力
Q33 聴力低下を指摘されたのですが……
田島篤生|齋田瑞恵

Q34 視神経乳頭陥凹拡大と言われたのですが……
田島篤生|齋田瑞恵

甲状腺機能
Q35 甲状腺が腫れていると言われたのですが……
田島篤生|齋田瑞恵


●Editorial
健診結果説明は、予防・健康教育を促し、患者とよりよい信頼関係を築くチャンス!
宮上泰樹|内藤俊夫

●What's your diagnosis?|259
Basedowの震え?
酒見英太

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|51
BMI81への挑戦
赤津晴子

●対談|医のアートを求めて|9
医療×対話──精神医療とは? 患者の心にどうアプローチしたらよいか?
斎藤 環|平島 修

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|90
腸のクスリも超リスク?
中島洋平|杉田周一|本永英治|佐藤直行、他(監修)

●臨床医のためのライフハック|限りある時間を有効に使う仕事術|16
問題解決②──大きな問題を解決し、不運や逆境も乗り越えていくには?
中島 啓

●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|16
ご遺体の検査⑦ 解剖
森田沙斗武

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