総合診療 Vol.34 No.3
2024年 03月号

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総合診療医が担う外来診療では、幅広い疾患に対して適切な対応が求められる。なかでも“コモンディジーズ”と呼ばれる日常病に遭遇する機会は、実に多い。
このコモンディジーズについては、発症ごく初期の非特異的症状から非典型的症状まで、その“イルネススクリプト”を的確に捉え、つまり「真にコモンディジーズを理解する」ことが求められる。
病初期や非典型的症状であっても、適切な診断を想起し、タイムリーに診断からマネジメントにつなげられることは、患者アウトカムの改善のみならず、増加する医療費の問題にも資すると考えられる。
そこで、問診や身体診察を中心とした「臨床推論」にこだわり、“コモンディジーズ”のイルネススクリプトの理解を深め、アップグレードすることに役立てばと、本特集を企画した。

ISSN 2188-8051
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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「コモンディジーズに真に精通する」とは?

鋪野紀好(千葉大学大学院医学研究院 地域医療教育学/千葉大学医学部附属病院 総合診療科)

 総合診療医に求められる資質・能力とは何であろうか? その1つには、「総合的に患者・生活者を診る」ということがあげられる。このなかには、「患者中心の医療」「包括的統合アプローチ」「連携重視のマネジメント」「地域志向アプローチ」など、多彩な能力が含まれる。これらは良質な医療を提供するために必要不可欠な能力であるが、その基盤として備えるべきは「一般的な健康問題に対応する診療能力」であることを強調したい。総合診療医は特定臓器にとらわれず、生物・心理・社会的要因が関わる無数の疾患と対峙する。時には患者から、「私は何の病気なのでしょう?」と問われることがある。その時に「いえ、うちの科ではないですから…」と答える時の苦しさは、患者はもとより、それを言う医師にも共通することだ。プライマリ・ケアの最前線で診療に従事する者にとって、「診断する」という能力はその幹にあるべき能力なのだ。
 では、その「診断する能力」を身につけるには、どうしたらよいだろうか? その近道が「コモンディジーズに精通する」ことである。「シマウマ探し」という名言があるように、コモンディジーズはその名のとおり、日常診療で高頻度に遭遇する疾患である。いきなり稀な疾患を考えるより、まずはコモンディジーズを想起しアプローチすることは、限られた診療時間のなかでも効率的に質の高い医療を提供するために必要不可欠である。
 ただ、ここで述べている「コモンディジーズに精通する」というのは、その疾患のよくある臨床症状や経過を理解することに留まらない。コモンディジーズに真に精通するには、発症ごく初期の「非特異的症状」から「非典型的症状」に至るまで、その“イルネススクリプト”を幹から枝葉まで的確に理解することが求められる。病初期や非典型的症状であっても、適切な診断を想起し、タイムリーに診断からマネジメントにつなげられることは、患者アウトカムの改善のみならず、増加する医療費の問題にも資すると考えられる。
 そこで本特集では、問診や身体診察を中心とした「臨床推論」にこだわり、“コモンディジーズ”のイルネススクリプトを幹から枝葉まで理解し、アップグレードすることを狙いとした。34名の卓越した総合診療医によるコモンディジーズの症例提示を基盤に、「診断に合致する点/合致しない点」を検討し、診断エラーに陥る“バイアス”から脱却するための方略、疾患仮説を想起するための「Semantic Qualifier」など、コモンディジーズを真に理解するために必要な実践に基づく思考プロセスが凝縮されている。本特集を今後の日常診療に役立てていただきたい。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 え、ウソ!実は○○だった!? “コモンディジーズ”の診断ピットフォール
企画:鋪野紀好

①「Wernicke脳症」かと思ったら…!?──お酒好きの意識障害
松本貴文|志水太郎

②「脳梗塞」かと思ったら…!?
関 隆実|小坂鎮太郎

③「単なる椎骨動脈解離」かと思ったら…!?
保科耀司

④五月病!?──仕事はストレスじゃありません!
鈴木森香

⑤「椎骨動脈解離による一過性脳虚血発作」かと思ったら…!?
藤井真理

⑥「過換気症候群」かと思ったら…!?
松尾裕一郎

⑦「肺塞栓症」かと思ったら…!?
森川 暢

⑧「急性低音障害型感音難聴(ALHL)」かと思ったら…!?
折原史奈|松本朋弘

⑨「頸椎症」かと思ったら…!?
鋪野紀好

⑩「関連痛には騙されないぞ!」と思っていたけど…
佐々木陽典

⑪「非特異的腰痛」が最も多いが…!?
山本 祐

⑫「蜂窩織炎」かと思ったら…!?
齊藤琢真|綿貫 聡

⑬「変形性膝関節症」かと思ったら…!?
木村浩史|鵜木友都

⑭「尿路感染症」かと思ったら…!?
久保崎順子|國友耕太郎

⑮「薬剤性浮腫」かと思ったら…!?
田村弘樹

⑯これゼッタイ「ACNES」でしょう! 間違いないッ
和足孝之

⑰下痢;二度あることは三度ある
青山彩香

⑱中年女性の“kissing disease”…!?
中島浩一

⑲「膠原病・筋炎疑い」で引き継いだけど…!?
本郷舞依

⑳「流行性筋痛症」かと思ったら…!?
西澤俊紀

㉑「かぜ」という言葉で見落とされる感染症
髙橋宏瑞

㉒若年女性の腹痛──入院中発症なので妊娠の可能性は100%ありません!?
河東堤子

㉓症状・所見は常に非特異的…!?
大塚勇輝|大塚文男

㉔「適応反応症」かと思ったら…!?
飯塚玄明

㉕突然発症の「更年期障害」…!?
德島 緑|多胡雅毅

今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題


●Editorial
「コモンディジーズに真に精通する」とは?
鋪野紀好

●What’s your diagnosis?|255
介達痛が無いのは心外です
柴田裕介|上田剛士

●対談|医のアートを求めて|7
医療×音楽 「好き」を追求して生きる──歌手として、そして医師として【後編】
アン・サリー|平島 修

●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|12
ご遺体の検査③ 「穿刺」の応用
森田沙斗武

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|86
納豆は海人(うみんちゅ)に食わすな!?
大城亜怜|佐々木秀章|佐藤直行、他(監修)

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|47
忘れえぬ患者さんとの出会い~神経難病における和温療法~
天野惠子

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|48(最終回)
味覚性発汗とは?
上田剛士

●臨床医のためのライフハック|限りある時間を有効に使う仕事術|12
学術活動──自分の研究を知ってもらい、人脈をつくる「学会発表・参加」の秘訣
中島 啓

●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|13
“会心”の回診にする「MiPLAN」あります!
木村武司|佐田竜一|長野広之

●投稿 GM Clinical Pictures
わからなければ我々が呼吸困難になる
若林崇雄|古川直幸|石橋幹之介|秋山由樹|須藤大智|渡邉智之|スフィ・ノルハニ

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