ジェネラリストのための内科診断リファレンス 第2版
病歴、身体所見から検査まで、一連の流れをすべて網羅。エビデンスに基づく診断学のテキスト、10年ぶり待望の改訂版。
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10年の歳月をかけ、何と3万本以上もの論文に目を通し徹底的な文献吟味を経て、遂に完成したまさに待望の改訂版。今版では、外部リンク(QRコード/ハイパーリンク)を採用し論文などに掲載されている教育的な画像や動画にアクセスできるようになった。また指定難病の診断基準・調査票へのリンクも掲載。若手医師、総合診療医のみならず、全ての内科医にとって臨床の現場で必ずや役立つ一冊。医学生にもおすすめ。
更新情報
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2024.09.17
- 序文
- 目次
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序文
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第2版 推薦の序/第2版 監修にあたって/第2版 序
第2版 推薦の序
病院総合診療が成功する鍵として以下が挙げられる.
①リーダーの存在(総合診療の質).②内科部長(見識・権限)と内科系プログラム責任者(専従)の実質的・恒常的存在.③病院・行政管理者の理解(総合診療の量).④専門諸科との協働.⑤内科系専門諸科指導層の「内科全般に関する基本的臨床・教育能力」が高いこと.⑥学閥・医局支配の極小化.⑦臨床研究の遂行.⑧医療安全への貢献.⑨専門医認定・医学界での市民権.⑩社会的(世間からの)評価.⑪患者・家族からの感謝.
京都市の地理的中央に位置する洛和会丸太町病院は150床の急性期病院であり,総合診療(救急・総合診療科)が突出した規模なので,大病院とは次元が異なり,③と④に難渋することはあまりないと考えられる.何といっても肝要なのは①と②ということになるが,同科は現在満開状態である.その学術的象徴の1つが本書だと言っても過言ではあるまい.
米国でEBMが立ち上げられて30年になる.それ以前にも同様の概念はあり,医療疫学とか臨床疫学などで括られていた.臨床現場ではもっと平たく,「文献による確証があるのか」が問われた.ひとえにevidence-basedという言葉が斬新で印象的だったので,あっという間に世界を席巻してしまった感がある.
小生が研修医だった半世紀前の文献検索には過酷さが尽きなかった.大学の医学図書館で書物と格闘しながら検索する以外に方法がなかった.それも夕刻以降には閉まってしまうことが多かったから,外部利用者には不便きわまりなく,大学人の特権をひたすら羨んだものである.
本書に関しては初版から付き合わせてもらったが,広く江湖に迎えられたのには嬉しいと同時に驚かされた.守備範囲が広く,また内容が濃いだけでなく,EBM用語や言葉遣いが満載な書物なので,さほど売れまいと思っていたからである.実際,小生よりも年長の世代には難解書・悪書扱いした方々もおられた.にもかかわらず予想以上に多数の読者を獲得できたのは,医療界の需要と若手医師世代の読解力の進化にもよると考えられる.EBM恐るべし.いや,上田剛士医師恐るべしか!
10年が経過して第2版出版の運びとなった.この間の臨床畑での個人的経験の熟成に支えられて,「digitalの申し子」とでも言える著者がさらなる発展を見せてくれている.もとより単著であるが,恩師の監修だけでなく,広く後輩・弟子たちに原稿のチェックを願い出たという態度にはこのうえない清々しさを感じる.
本書は内科系EBM診断学の網羅書である.研修医・若手医師・総合診療医は言うに及ばず,すべての内科系臨床医が読者対象になってほしいものだ.というのも,前記⑤に関して,日米の開きがなお大きいからである.自分達の専門領域以外の内科諸領域の基本的臨床・教育能力は,日本は米国よりもずっと低いままである.そのことの気付きすらなく,気付いても気にならない鈍感さは,先進国では日本の医学界にしかない.
最後に,新春の夢を1つ.明治期にお雇い外国人(ドイツ人)として26年間も東大医学部で教鞭をとったエルヴィン・ベルツは,帰国が近づいた前世紀初頭の2つの講演で2つ箴言を残している.1つは,医学生への授業はできるだけ臨床的・実用的であるべきこと.もう1つは,自分達は古代から続く西洋の「学術の精神(der Geist der Wissenschaft)」や「科学の樹(der Baum der Wissenschaft)」をこそ教えようと努めたのに,受け手(の主として医学生)が「科学の成果や果実」のみを採取しようとするのは誠に遺憾であること.
EBMも,「学術の精神」や「科学の樹」である.本書には,著者の批判的吟味に堪えた膨大な文献が載っている.という次第だから,読者のうち著者よりも若い世代の幾割かは,本書の読み手に留まらずに,論文の書き手にもなり,将来の本書第3版で引用されるくらいに育ってほしい.そのための参考資料としても本書は十分に活用できる.
2024年1月好日
医療法人社団洛和会本部参与 松村理司
第2版 監修にあたって
10年前にEBMをふんだんに取り入れた診断学の手引書として出版された本書は,その「痒い所に手が届く」網羅性から当時のあるライバル教育病院の指導者から「迷惑なくらいだ」と皮肉を込めた賞賛を送られるほどインパクトが大きかった.この本の出版が,著者である上田先生を一躍カリスマ指導医として表舞台に押し上げ,以後彼は洛和会丸太町病院に参集する数多くの後進の指導を行う傍ら,日本各地での講演,幾多の論文の執筆と,八面六臂の活躍をこなすことになった.その多忙ななか,ついにさらに中身を更新・充実させた第2版の出版にこぎつけた彼の労をねぎらいたい.
症候からの診断学の価値はいささかも損なうものではないが,この10年の間に医学界では遺伝子解析による診断や,分子を標的とした治療を中心に大きな進歩を遂げた.が,それ以上に特筆すべき変化は,本書の改訂・監修作業も大詰めとなった2023年に,ChatGPTに代表される進化した生成AIの利用が瞬く間に世界中に広がったことであろう.かつて自家用車の普及が人間の歩行不足による身体能力の低下を招いたように,依存度を高めれば人間が何万年もかけて獲得してきた言語能力や思考能力でさえも衰退させてしまうのではないかとの不安さえよぎる.「検索」があまりにも便利になった世の中で,情報量が多いことを言い訳に,医師の間でさえ知識を頭に入れるのを諦めて,パソコンに保存するかスマホで検索できるようにすることで済まそうとする傾向はすでに見えている.日進月歩の医学においては,最新のエビデンスに基づいた標準的治療──foreground knowledgeにあたる──を患者に施すために効率よくそれを入手するスキルは必要であるが,患者を前にして症候から診断仮説を立てて臨床推論を進めるために必要な症候論や疾患概念などのbackground knowledgeは頭に入れておくべきで,いちいち検索していたら患者の信頼を損なうであろう.少なくとも次の10年ぐらいの間は.
そんな時代において,どの所見がどれほど役立つかにつき定量的に示すことで診断推論に資する網羅的レファレンスとして書籍の形で1冊にまとめられたものとしては,もしかしたら最後の砦になるのではないかと思われるのが本書である.内科診断学において大事なことはたいてい書いてあるので,読者は症候にしろ疾患にしろ,遭遇するたびに一度は本書の該当箇所を読んで欲しい.
第2版では色刷りもイラストも初版より格段に目に優しくなった.文字では伝えにくいが診断に大きく寄与する身体所見の画像や動画情報は,Mindsガイドラインライブラリなどに代表される信憑性の高い医学情報へのQRコードを用いたリンクも充実させたので,読者は右脳も十分鍛えていただきたい.
すでに書籍も電子化され,分厚く重い冊子を持ち運ばなくとも,端末さえあればいつでもどこでも読めるようになった.この大著を,利便性の進んだ現代の読者の方々がさまざまな場面で活用され,自分で考える習慣は維持しつつ,ますます内科診断力を高めることで,患者さんの診療に活かしていただければ幸いである.
2024年1月吉日
酒見英太
第2版 序
『内科診断リファレンス』の初版を上梓してから10年ほどの年月が過ぎた.この間,総合診療科医として多種多様な疾患に対する診療の機会に恵まれ,医師としての経験も前版執筆時に比べて倍増した.前版を顧みるに,その内容および質に改善の余地があると痛感し,全項目を論文検索より見直す作業が必要であると判断した.
著者自ら,診断学においては未だ修練が足りぬと自覚しており,執筆に際しては今まで通り徹底的な文献吟味を行うほかにないと考えた.第2版の改訂作業を開始して以降,3万報以上の論文に目を通すという長期にわたる作業を経て,遂に出版に至った.
第2版で外部リンク(QRコード/ハイパーリンク)を多く採用したことは,大きな変更点である.これにより,論文などに掲載されている教育的な画像や動画にアクセスすることができる.リンク先は信頼性が高く,今後リンク先が途絶える可能性が低いものを選択してはいるが,執筆時点から変更される可能性はあり,その信頼性については読者自身でご判断いただくようお願い致したい.
また臨床現場での有用性を考慮し,公費負担が受けられる指定難病については診断基準・調査票へのリンクを掲載したり,保険未収載の検査やコマーシャルベースでは測定できない検査についても著者の把握する範囲で委託先を記載した.
若手医師や総合診療医のみならず,すべての内科医にとって臨床の現場で役立つ1冊となるように書き上げたつもりである.ぜひ診察机や書斎に本書を置いていただき,役立てていただければ執筆者としては望外の喜びである.
最後に編集に際して協力頂いた医学書院の関係者の方々,快く監修を引き受けてくれた酒見英太先生,ボランティアで原稿チェックをしてくれた(当時)洛和会丸太町病院在籍の吉川聡司先生,柴田裕介先生,丸山尊先生,阿部昌文先生をはじめとする多くの先生方,そして執筆期間の引きこもり生活を支えてくれた家族にこの場を借りて感謝を申し上げたい.
2024年1月吉日
上田剛士
謝辞:
ボランティアで原稿のチェックをしていただいた以下の先生方に,この場を借りて深く感謝の意を表します.
吉川 聡司 先生
柴田 裕介 先生
丸山 尊 先生
阿部 昌文 先生
島 惇 先生
大江 将史 先生
山下 恵実 先生
黄 俊大 先生
左近 真之 先生
井上 弘貴 先生
目次
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A 主要症候・内科一般
1 体重減少 / 2 浮腫 / 3 リンパ節腫脹 / 4 動悸 / 5 めまい総論 / 6 頭位めまい症 / 7 急性前庭症候群 / 8 失神 / 9 ショック / 10 意識障害 / 11 発熱 / 12 薬剤熱 / 13 悪性症候群・セロトニン症候群 / 14 寝汗 / 15 脱水・出血 / 16 心停止 / 17 短期的な生命予後予測 / 18 原発不明癌 / 19 アルコール使用障害
B 消化管
1 急性腹症 / 2 嘔気・嘔吐 / 3 胃もたれ・心窩部痛 / 4 胃食道逆流症(GERD) / 5 特発性食道破裂 / 6 上部消化管出血 / 7 消化性潰瘍 / 8 ヘリコバクター・ピロリ菌感染症 / 9 消化管穿孔 / 10 アニサキス症 / 11 食道癌・胃癌 / 12 急性下痢症 / 13 クロストリディオイデス・ディフィシル感染症 / 14 慢性下痢症 / 15 便秘症 / 16 過敏性腸症候群 / 17 下血 / 18 炎症性腸疾患 / 19 大腸癌 / 20 虫垂炎 / 21 大腸憩室炎 / 22 腸閉塞総論 / 23 腸閉塞・イレウスの原因 / 24 外ヘルニア / 25 虚血性大腸炎・急性腸間膜虚血 / 26 腸管気腫症・門脈内ガス
C 肝・胆・膵・脾
1 肝疾患の診察 / 2 “肝障害”の判読 / 3 ウイルス性肝炎 / 4 アルコール性肝障害 / 5 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) / 6 薬剤性肝障害 / 7 自己免疫性肝炎 / 8 原発性胆汁性胆管炎(PBC)・原発性硬化性胆管炎(PSC) / 9 その他の肝障害 / 10 肝細胞癌 / 11 肝膿瘍 / 12 胆石症・胆道感染症 / 13 胆囊ポリープ・胆囊癌 / 14 腹水総論 / 15 特発性細菌性腹膜炎(SBP) / 16 結核性腹膜炎・癌性腹膜炎 / 17 脾腫 / 18 急性膵炎 / 19 慢性膵炎 / 20 膵癌・膵囊胞性疾患
D 循環器
1 頸静脈の観察 / 2 心雑音 / 3 慢性冠動脈疾患(労作性狭心症) / 4 冠攣縮性狭心症 / 5 急性冠症候群 / 6 心囊液貯留 / 7 心外膜炎 / 8 心タンポナーデ・収縮性心膜炎 / 9 急性心筋炎 / 10 心不全 / 11 心筋症 / 12 たこつぼ心筋症 / 13 Brugada症候群・早期再分極症候群 / 14 感染性心内膜炎 / 15 大動脈解離 / 16 腹部大動脈瘤(AAA) / 17 静脈血栓塞栓症・深部静脈血栓症 / 18 肺塞栓症 / 19 末梢動脈疾患(PAD) / 20 二次性高血圧症 / 21 腎血管性高血圧 / 22 原発性アルドステロン症
E 内分泌・代謝・栄養
1 低ナトリウム血症 / 2 血清カリウム濃度異常 / 3 高カルシウム血症・低カルシウム血症 / 4 糖尿病 / 5 低血糖症 / 6 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)・高浸透圧性高血糖状態(HHS) / 7 甲状腺癌 / 8 びまん性甲状腺腫(goiter) / 9 甲状腺機能低下症 / 10 甲状腺中毒症 / 11 亜急性甲状腺炎 / 12 副腎偶発腫 / 13 クッシング症候群 / 14 褐色細胞腫・パラガングリオーマ / 15 副腎不全 / 16 骨粗鬆症
F 腎・泌尿器
1 血尿 / 2 蛋白尿・ネフローゼ症候群 / 3 急性腎障害(AKI) / 4 急性腎炎症候群・感染後糸球体腎炎 / 5 急速進行性糸球体腎炎 / 6 慢性腎臓病(CKD) / 7 酸塩基平衡異常 / 8 尿路感染症 / 9 急性前立腺炎 / 10 尿路結石症 / 11 腎梗塞 / 12 腎囊胞・腎腫瘤 / 13 下部尿路症状・尿閉 / 14 前立腺肥大症 / 15 前立腺癌 / 16 急性精巣痛
G アレルギー・膠原病
1 関節痛 / 2 化膿性関節炎 / 3 痛風 / 4 ピロリン酸カルシウム結晶沈着症 / 5 関節リウマチ / 6 脊椎関節炎 / 7 リウマチ熱・連鎖球菌感染症後反応性関節炎 / 8 抗核抗体(ANA) / 9 全身性エリテマトーデス(SLE) / 10 シェーグレン症候群 / 11 抗リン脂質抗体症候群 / 12 全身性強皮症 / 13 特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎・多発性筋炎を含む) / 14 混合性結合組織病(MCTD) / 15 再発性多発軟骨炎 / 16 成人スチル病 / 17 リウマチ性多発筋痛症 / 18 血管炎総論 / 19 巨細胞性動脈炎 / 20 高安動脈炎 / 21 中~小血管炎 / 22 ANCA関連血管炎 / 23 サルコイドーシス / 24 ベーチェット病 / 25 IgG4関連疾患 / 26 自己炎症性疾患・家族性地中海熱
H 血液
1 貧血総論 / 2 貧血の鑑別 / 3 小球性貧血・鉄欠乏性貧血 / 4 大球性貧血・巨赤芽球性貧血 / 5 白血球数の異常 / 6 好酸球増加 / 7 血小板数の異常 / 8 汎血球減少 / 9 血球貪食症候群 / 10 血栓性微小血管障害症(TMA) / 11 血管内悪性リンパ腫 / 12 形質細胞腫瘍・多発性骨髄腫
I 感染症
1 菌血症 / 2 伝染性単核症 / 3 HIV感染症 / 4 結核総論 / 5 粟粒結核 / 6 免疫抑制患者の感染症 / 7 免疫抑制患者における肺疾患 / 8 開発途上国からの帰国後発熱 / 9 毒素性ショック症候群 / 10 健常な成人においても問題となりやすい全身性ウイルス感染症 / 11 ダニ媒介感染症
J 呼吸器
1 呼吸困難・呼吸不全 / 2 喀血 / 3 慢性咳嗽 / 4 ばち指 / 5 インフルエンザ / 6 百日咳 / 7 市中肺炎の診断 / 8 市中肺炎の起因菌 / 9 レジオネラ肺炎 / 10 院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎 / 11 誤嚥・誤嚥性肺炎 / 12 肺結核 / 13 びまん性肺疾患 / 14 間質性肺炎 / 15 過敏性肺炎 / 16 気管支喘息 / 17 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / 18 自然気胸 / 19 特発性縦隔気腫 / 20 胸水の存在診断 / 21 胸水貯留の原因 / 22 肺炎随伴性胸水・膿胸 / 23 悪性腫瘍に伴う胸水 / 24 結核性胸膜炎 / 25 肺癌
K 神経
1 頭痛 / 2 認知症総論 / 3 認知症評価 / 4 認知症の主な原因疾患 / 5 可逆かもしれない認知症 / 6 急速進行性認知症,クロイツフェルト・ヤコブ病 / 7 自己免疫性脳炎・橋本脳症 / 8 Wernicke脳症 / 9 パーキンソン症候群 / 10 特発性正常圧水頭症 / 11 慢性硬膜下血腫 / 12 脳卒中 / 13 くも膜下出血 / 14 髄膜炎 / 15 結核性髄膜炎・クリプトコッカス髄膜脳炎 / 16 ヘルペス脳炎 / 17 低酸素脳症の神経学的予後予測 / 18 てんかん / 19 顔面神経麻痺 / 20 末梢神経障害 / 21 ギラン・バレー症候群(GBS) / 22 重症筋無力症
L 皮膚科
1 結節性紅斑 / 2 多形滲出性紅斑,スティーヴンス・ジョンソン症候群 / 3 薬疹 / 4 帯状疱疹 / 5 壊死性筋膜炎
M 整形外科
1 頸椎症 / 2 肩痛 / 3 手根管症候群 / 4 腰痛症 / 5 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症 / 6 椎体骨折 / 7 悪性疾患による腰痛 / 8 感染性脊椎炎・椎間板炎 / 9 骨腫瘍 / 10 糖尿病性足骨髄炎
N 眼科・耳鼻科
1 眼の充血 / 2 咽頭炎 / 3 急性喉頭蓋炎 / 4 副鼻腔炎 / 5 アレルギー性鼻炎 / 6 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
O 産婦人科
1 正常な妊娠 / 2 産婦人科的急性腹症総論・異所性妊娠 / 3 卵巣出血 / 4 付属器捻転(卵巣捻転) / 5 骨盤内炎症性疾患(PID)
和文索引
欧文索引
書評
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診断力を高めるための強力なツール
書評者:林 寛之(福井大病院教授・救急科総合診療部長)
内科のテキストよりも分厚い(?かもしれない)内科バイブルが改訂された。上田剛士先生の日々の研鑽の珠玉のたまものと言える。これだけ分厚いと枕にも使えそうだが,それは正しい使い方ではない。ぜひとも読んでそしゃく,または調べ物の参考にして欲しい。これだけの情報をまとめ上げるのはさぞ大変だっただろう。働き方改革なんてなんのその,莫大な時間を費やしてわれわれ臨床家のためにまとめてくれて感謝しかない。本書作成時間は,全て「勤務」ではなく,「研鑽」であろうから,プライベートの時間をつぶしたのは疑いもなく,上田先生のご家庭を心配するのは私だけではないだろう(笑)。
この書籍は,内科医としての診断力を高めるための強力なツールであり,医学生から一般医師まで幅広い層に参考になる。本書はとにかく内科の重要なポイントを網羅的にまとめあげた素晴らしい本であるだけでなく,色使いがとてもきれいで見やすい。見てくれは絶対大事だもの。ポイントになるところは黄色い色が付いているので,そこだけ見ておいてもいいかも……(手抜きもできる素晴らしさ!)。
箇条書きというのは,医療現場ですぐに情報が欲しい実地医家にとっては,拾い読みしやすく時短にもなってとてもありがたい構成になっている。日々の疑問に答えてくれる内容を扱っているので,皆さんも手に取って,外来や病棟ですぐ手に届くところに置いておくことを強くお勧めする。枕元に置いておくと,枕にしてしまうかもしれずお勧めしない。
さらに内科とうたっていながら,なんともズルく(?),整形外科やマイナー科,産婦人科まで記載があるのは特筆すべき点だ。実際に患者さんはいろんな問題を抱えてやってくるのであって,内科だけ診て「うちじゃない」なんて門前払いをしているようでは優秀な臨床家とは言えない。内科だけを診るのではなく,(病気を抱えた)「人」を診るという姿勢の表れである。さすがの総合診療医である上田先生のもとに多くの専攻医が集まるのもうなずける。
医学生も一般的な教科書で知識を固めた後に,実臨床では本当はどんなポイントに注目したほうがいいのかがわかるので,どうぞ読んでもらいたい。内科実習ローテーションでまとめを作るにはとても便利だ。初期研修医はEPOCで症例をまとめるときに本書から抜粋すれば,ChatGPTを使うよりはるかに立派な提出資料が出来上がる。専攻医は学会発表や勉強会でプレゼンテーション資料を作るときに参考にすると,これまた時短よろしく良いものができるだろう。実地医家はもちろん知識のアップデートに本書を使おう。
医学知識はアウトプットしてこそ血や肉になる。皆さんも本書を読むだけでなく,上田先生に続いて文献をきっちり調べてまとめあげ,自分なりのアウトプットにつなげていけば,臨床力の高い医者になるのは間違いない。
診断エクセレンスをめざすジェネラリストが待っていた改訂版が出た
書評者:徳田 安春(群星沖縄臨床研修センター長)
10年前にも本書の書評を書いた。本書を読んだ感想をまとめると,本書はシステム2的な分析的推論を行うための当時最強のツールであり,EBM実践のためのクイックなデータブックである,であった。臨床疫学の各論必携本と呼んでもよい。
あれから10年,われわれジェネラリストが待っていた第2版がついに出た。待ちこがれていた理由は,医学は日進月歩で変化し発展するからだ。新たな疾患概念や病歴,身体所見,そして診断検査のデータを供給する論文が無数に出版されている。3万もの論文の中から新しくかつ重要な情報を追加してくれている。
本書の改訂でさらに注目すべきは,上田剛士先生流クリニカルパールが随所に記載されていることである。総合内科と救急の現場で研修医や専攻医を直接指導するジェネラリストが日々直面し解決してきた臨床問題への最適解がパールとなって輝いている。加えて,重要論文の写真のサイトへ飛べるQRコード等も付いており,学習者を助けてくれている。
疫学データも常に変化する。さまざまな症候の鑑別診断で挙げられる重要疾患の事前確率も変化する。最新の臨床疫学データを用いてEBMを実践したいと思う人々には,この改訂版を病棟,外来,自宅に置いておくことをおススメしたい。
最近,診断エクセレンスへの関心が集まっている。患者の健康問題の診断を正確かつタイムリー,そして効率的に実践するプロセスのことだ。これを実現するために現場の医師に求められるのは,アートとサイエンスの卓越した実装である。つまり,患者さんに共感を持って医療面接と身体診察を実施し,臨床疫学データに基づく臨床推論を正確かつ迅速に行うことだ。
診断エクセレンスのための実装はそう簡単ではないが,本書を活用することが助けになる。特に,本書を参照する習慣を身につけ,最新の臨床疫学データとクリニカルパールを迅速に取り出すことで,アートとサイエンスにおける卓越した実装につながるだろう。