見て学ぶ 一般検査学アトラス
外観検査から顕微鏡検査まで
日常の一般検査にすぐに役立つ参考書──1,203枚の写真と解説文で検体検査の知識が身につく
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好評を博した『検査と技術』誌 Vol.50 No.3(2022年3月・増大号)「見て学ぶ 一般検査学アトラス──外観検査から顕微鏡検査まで」の待望の書籍化。検体の外観・顕微鏡写真をさらに充実させ、「チェック問題」を付録に加えました。検体の多彩な外観(性状・色)を目で見て確認できること、典型的な成分の顕微鏡写真を多く掲載したことが本書の特長です。臨床検査のみならず、臨床診療にも役立つ一冊です。
編集 | 宿谷 賢一 |
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発行 | 2024年07月判型:B5頁:240 |
ISBN | 978-4-260-05663-2 |
定価 | 5,940円 (本体5,400円+税) |
更新情報
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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序
一般検査は,わが国の独特の検査分野であり,クリニックから大学病院まで,あらゆる臨床検査の場で実施されています.取り扱う検査材料には尿,糞便,喀痰,髄液,胃・十二指腸液,穿刺液,精液などがあり,幅広く“血液以外の体液”が該当します.
そして一般検査は,いわゆるスクリーニング検査としてだけでなく,疾病原因を確定づける検査としての一面も有しています.糞便検査の寄生虫検査,髄液検査の細胞算定検査,関節液検査の結晶鑑別などは確定診断に直接結びつく,重要な検査です.また,尿検査や糞便検査は多くの生体情報を得ることができるにもかかわらず,患者の負担が少なく,理想的な非侵襲的検査であるといえるでしょう.
他方,髄液検査は採取量が少ないことから,多岐にわたる検査は実施できず,少量の検体からいかに多くの情報を見つけ出せるかが要求される検査です.したがって,医師が患者の臨床所見を大切にするように,臨床検査技師は,外観検査によって検体の色調や混濁を詳細に確認し,適切に判断できる能力が求められます.
2022年春に発行された「検査と技術」誌増大号「見て学ぶ 一般検査学アトラス──外観検査から顕微鏡検査まで」が好評により早々に品切れとなり,このたび,さらに写真を充実,補足教材として2次元コードで写真を拡大して見られるチェック問題を加え,単行本として発行することになりました.
本書は,一般検査が取り扱う幅広い検査材料について,外観検査と顕微鏡検査に重点をおきつつ,“読んで知る”ではなく,“見て学ぶ”教本をコンセプトに構成しました.そのため,解説文は最小限に留めてあります.
各種検査材料の外観検査と疾患の関連については多くの書籍に記載されていますが,本書のように実際の検体の写真が多岐にわたり掲載され,外観検査にクローズアップされたものは少ないのではないでしょうか.また,顕微鏡検査では,臨床検査を学ぶ学生が理解できる典型的な成分を多く掲載し,特に尿沈渣成分は542枚の写真から構成しています.さらに,尿沈渣検査の理解を深めるために腎・尿路系の組織像も加えてあります.
検査材料の色調などの情報は,臨床検査のみならず,臨床診療においても確認する機会があることから,医師・看護師にも有用な一冊であるといえます.本書を一般検査学の参考書として活用していただくことにより,外観検査の多彩な情報を体感し,顕微鏡検査のレベルアップにつながることを願っています.
最後に,本書の発刊にあたり,貴重な写真のご提供,ご執筆をいただきました諸先生に心から感謝いたします.
2024年5月
順天堂大学医療科学部教授・臨床検査学科
宿谷 賢一
目次
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尿検査
尿の外観検査
尿沈渣検査
尿沈渣検査に必要な組織像
髄液検査
髄液の外観検査
髄液の顕微鏡検査
穿刺液検査
【胸水・腹水】
胸水・腹水の外観検査
胸水・腹水の顕微鏡検査
【CAPD排液】
CAPD排液の外観検査
CAPD排液の顕微鏡検査
【関節液】
関節液の外観検査
関節液の顕微鏡検査
糞便検査
糞便の外観検査
寄生虫検査
精液検査
精液の外観検査
精液の顕微鏡検査
結石検査
結石の外観検査
その他の検体の検査
その他の検体の外観検査
文献一覧
チェック問題
索引
書評
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一般検査学領域における画像の宝庫
書評者:坂本 秀生(神戸常盤大教授/学科長・医療検査学)
『見て学ぶ 一般検査学アトラス―外観検査から顕微鏡検査まで』を手にした際,鮮明な画像が整然と満載された本が世に出る喜びを感じた。手に取っていただければ実感できるが,本書には1203枚もの豊富な画像が鮮明に掲載され,それぞれの色合いが極めて「本物」に近いからである。
一般検査では尿の外観観察から始まり,尿沈渣観察として尿中成分の判別が重要である。教科書などの成書で外観の表現として「乳白色~白濁」と記載されることもあるが,初学者や慣れない者には,どのような色かイメージし難い。本書は一般検査業務の流れに沿い,採尿カップ上部から撮影した多様な外観写真がまるでアートの作品のように掲載され,それぞれの色調や特徴が画像と共に簡潔に説明されている。
一般検査の醍醐味と奥深さは尿沈渣観察であり,沈渣がどのような過程を経て尿中に出現するか,腎臓を解剖学的に理解した上で組織的構造までイメージできると,より的確に判断可能である。本書は腎臓をマクロからミクロまで画像付きで解説しており,顕微鏡を通して腎機能を俯瞰的に理解するにも役立つ。
尿沈渣で観察する成分は赤血球,白血球,大食細胞,複数の上皮細胞や各種細胞,円柱,結晶,微生物・寄生虫,その他の成分など多種多様である。本書ではそれらの重要性と有用性を解説するとともに,多くのページを割いてアトラスと呼ぶにふさわしく,精細で実物に極めて近い色調の写真を多数掲載している。また,一般検査業務として髄液・胸水・腹水・関節液などの穿刺液やCAPD排液検査,寄生虫や媒介動物の観察,結石検査なども含まれるが,依頼頻度が低い,もしくは外注検査に出している施設もあろう。本書にはそのような内容も掲載しており,本書一冊を通し,一般検査全般の概要や方法・鑑別まで網羅されていることも特徴である。
本書は索引から画像の掲載ページも参照可能であることが特徴で,画像辞典のように使用も可能だ。索引に加え,「尿の外観検査」では色調と原因に対応した図番号,「尿沈渣検査」では成分名と意義に対応した図番号が表形式で一覧できるように掲載されており,解説と呼応した画像検索が容易である。一覧が掲載されない解説文中では,対象となる画像の解説と共に括弧内に画像番号を提示し,目的画像を参照しやすい。序文にて編集者が述べているように,解説文は最小限にとどめた「見て学ぶ」教本とのコンセプトが随所に活きている。
本物を見たことがなくとも,多数の鮮明な画像が掲載された本書を通して「見て学ぶ」ことが可能である。巻末には画像から判断が行えるか確認できるよう,チェック問題も設けてあり,一般検査に携わって間もない臨床検査技師,または臨床検査技師をめざす学生にも有用であり,一般検査学領域では随一の本として推薦する。
教科書に望むことが十分に満たされる本を見つけました
書評者:下澤 達雄(国際医療福祉大大学院教授・臨床検査医学)
大学の教員として,学生,スタッフに,教科書もいいけど,「読むなら論文」と伝えてきました。教科書は査読がないので独りよがりの記述が入ります。また,書いてから時間がたつため最新の情報は含まれません。SNSなど無料で手に入る情報が多くなった現在,アトラスのような図表はインスタグラムのような手軽なツールに置き換わるものと考えています。
それでも教科書が作られるのは,専門の分野に特化している論文に比べて「網羅性・わかりやすさ・教育支援」があることと,ケーススタディなどが含まれたものでは臨床応用ができるからです。SNSは,「体系学的な学習」「深い理解のための解説」「長期的リソースとしての検索,安定性」といった点で書籍に劣る面があります。
学生の立場に立つと,教科書は授業や実習の補助・試験勉強・リファレンス・概念の理解,そして巻末にある問題などを使い自己評価をするのに活用できます。職場ではどのように使うかと考えると,図表は特に,卒後研修・患者教育・チームコミュケーションに有効でしょう。
このような観点から小生はさまざまな教科書を見てきましたが,今回,宿谷賢一教授編による「見て学ぶ 一般検査学アトラスー外観検査から顕微鏡検査まで」は上述の教科書に求められる点をほぼ完壁にカバーしているもので,学生のみならず検査室,あるいは外来診療室に一冊置いておきたい教科書と思いました。図表は網羅的であり,代表的な写真が多く掲載されており,体系的に分類されていて読者にわかりやすくまとめられています。索引もキーワードが細かく上げられ検索しやすいため,臨床現場で困ったときのレファレンスとして使いやすくまとめられています。また実習,講義ではレファレンスとしてだけではなく,その近辺にある図表をついでに見ることで知識を広げることが可能なように工夫されています。巻末にはWebで写真を拡大参照できるクイズがあり,自己評価や試験対策に使えるものです。
解説は簡略で,忙しい合間でもエッセンスを取り込むことができます。患者指導に用いる際には専門用語をわかりやすく一般的な言葉に置き換える必要がありますが,写真はまさに百聞は一見に如かずで,患者の細胞の写真と本書にある写真を比べて見せることで患者は納得できるのではないでしょうか?
宿谷教授の発見した尿細管再生にかかわる丸細胞について25ページに写真が出ていますが,まだ詳しい説明がなされていません。また,今後新規薬剤による薬剤性の細胞変化などの写真,解説が補遺として順次追加されていくと最新の情報も追加され,論文におとる教科書の欠点までもカバーできると期待される一冊です。