臨床研究の実践知
[第16回] 研究におけるロジスティックスの重要性
連載 前田 一石
2020.07.06
臨床研究の実践知
臨床現場で得た洞察や直感をどう検証すればよいか。臨床研究の実践知を,生物統計家と共に実例ベースで紹介します。JORTCの活動概要や臨床研究検討会議の開催予定などは,JORTCのウェブサイト,Facebookを参照してください。
[第16回]研究におけるロジスティックスの重要性
前田 一石(JORTC外来研究員/千里中央病院 緩和ケア科)
(前回よりつづく)
ロジスティックスとは,材料調達から生産・販売に至るまでの物流,またはそれを管理する過程を指す経済用語ですが,もともとは「兵站」を表す軍事用語で,作戦計画を円滑に進めるための人員・物資の移送・補給等の業務を指すものでした。
これを臨床研究の場面に当てはめると,研究におけるロジスティックスは,研究対象者を適切かつ効率的にリクルートするための手順や役割分担などの調整を含む管理業務全般と言えそうです。
ロジスティックスから研究の実施環境を確認する
臨床研究を実施する研究者は,研究仮説の設定,プロトコル作成,協力施設の募集など,やるべきことが山のようにあります。研究がスタートした後にそれぞれの施設で症例集積がスムーズに進むための方策を,あらかじめ十分に考えておくことが必要です。わが国では研究に専念できるスタッフが少ないため,ロジスティックスの効果的な構築と運用が,臨床研究の成否を決めると言っても過言ではありません。
緩和ケア研究では症状を研究の対象・適格基準とすることが多いため,「病理検査や画像検査で『A』と診断された患者」のように疾患単位で実施される研究に比べ,対象者の同定(スクリーニング)のタイミングや方法に注意を払う必要があるなど,特有の課題があります。
今回は,第14回(3370号)でも取り上げたデュロキセチンの痛みに対する研究(JORTC-PAL08研究)1)を題材に,研究参加施設である国立病院機構近畿中央呼吸器センターで研究のロジスティックスがどのように構築・運用されたか見ていきたいと思います。
緩和ケアチームが主体となって行われた本研究は,大枠として図1のようなプロセスで実施されました。研究責任者が作成したプロトコルの提供を受け,スタートアップ会議で多職種が集まってその内容を吟味し,自施設でその研究が実施可能なのか,どのような点を工夫すれば安定的・効率的に実施できるのかを考えま...
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