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第3324号 2019年6月3日


臨床研究の実践知

臨床現場で得た洞察や直感をどう検証すればよいか。臨床研究の実践知を,生物統計家と共に実例ベースで紹介します。JORTCの活動概要や臨床研究検討会議の開催予定などは,JORTCのウェブサイトFacebookを参照してください。

[第3回]研究デザインの選び方

小山田 隼佑(JORTCデータセンター統計部門 部門長)


前回よりつづく

研究デザインにはどのような分類がある?

 臨床研究を行うにはまず,臨床現場から生じた漠然とした臨床疑問(Clinical Question;CQ)について既存のエビデンスのレビューを踏まえ,研究の目的を具体的かつ明確な形に書き表した研究仮説(Research Question;RQ)に落とし込むことが重要です。他の研究者や研究支援組織と協同で研究を進める上で,RQの作成は必要不可欠です。

 RQが定まったら,RQの検証に適した研究デザインを選択します。研究デザインは,のように大まかに分類することができます1)

 研究デザインの分類(文献1のp.18より改変)(クリックで拡大)

 研究デザインは初めに,観察研究(Observational study)と介入研究(Interventional study)に大きく分類されます。研究を意図した直接的な介入を加えず,診療や経過の成り行きをありのままに観察する場合は観察研究になります。一方,研究者が対象者に対して研究を意図した介入を加える場合は介入研究になります。

 介入研究は,その介入を対象者にランダム(無作為)に割り付けるのかどうかによって,ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial;RCT)と非ランダム化比較試験(non-RCT)に分類されます。観察研究は,比較対照を設定するかどうかによって,比較対照のない記述的研究(Descriptive study)と,比較対照を設定する分析的観察研究(Analytical observational study)に分類されます。

 分析的観察研究は次に,要因とアウトカムを測定するタイミングで分類されます。要因とアウトカムを同時に測定(=対象者を1回だけ観察)する研究は,横断研究(Cross-sectional study)に分類されます。一方,要因を一時点で測っておき,それと異なる時点のアウトカムを測定(=対象者を2回以上繰り返し観察)するような研究を,縦断研究(Longitudinal study)と呼びます。

 縦断研究はさらに,観察の時間軸の方向性によって分岐します。最初に要因を測定し,その後の時点においてアウトカムを前向きに測定する研究は,コホート研究(Cohort study)と呼ばれます。一方,最初にアウトカムを測定し,過去の要因を後ろ向きに測定する研究は,ケース・コントロール研究(Case-control study)と呼ばれます。

 実際は,他にもさまざまな名称の研究デザインが存在しますが,それらは基本的に,これまで説明した研究デザインから派生したものだと考えていただいて問題ありません。

研究目的に応じた適切な研究デザインの選択を

 どの研究デザインを選択するのが適切かは,のようにまとめることができます。RQの種類ごとに順番に見ていきましょう。

 RQの種類と研究デザインの分類(文献1のp.50より改変)(クリックで拡大)

 1つ目の「疾患や診療の実態を調べる」研究には,記述的研究が主流とされています。例えば,ある疾患に関する人口規模別の年齢調整死亡率などの大規模なものや,症例集積研究(Case series study)や症例報告(Case report)などの小規模なものが記述的研究に含まれます。比較的短時間で研究計画を作成・実施することができる一方で,アウトカムを比較するための対照が研究計画の時点で設定されていないため,「要因とアウトカムとの関係」や「治療・予防法の効果」を調べることはできません。

 2つ目の「要因とアウトカムとの関係を調べる」研究の場合に最適な研究デザインの1つがコホート研究です。その理由として,要因を先に測定し,その後にアウトカムを測定するので,原因―結果の時間的関係が明らかである点が挙げられます。また,交絡因子を研究の開始時に測定しておくことが可能な点も大きなメリットです。

 アウトカムの発生がまれな場合には多くの対象者が必要となったり,一定期間(アウトカムの発生に時間がかかる場合は長期間)対象者を丹念に追跡したりしてなるべく脱落が生じないような工夫も必要となりますので,多くの時間や費用が掛かる可能性があります。

 コホート研究のように時間と費用を掛けることが難しい状況で,「要因とアウトカムとの関係を調べる」研究を実施したい場合の候補として,まずケース・コントロール研究が挙げられます。この研究デザインでは初めに,アウトカムが発生した人をケースとして定義し,次にケースとの比較が可能となるコントロールを探し,過去にさかのぼって要因を調べていきます。コホート研究に比べて,時間面・費用面で効率の良いことが多いですが,コントロールの選択が非常に難しく,選択バイアスが生じる可能性が高いです。また,要因に関する必要な記録がないことも多く,対象者に過去の出来事を尋ねる場合には,ケースとコントロールで思い出し方に偏りが生じる(思い出しバイアス)こともあります。

 分析的な横断研究も,「要因と考えられる因子」と「アウトカムと考えられる因子」を同時に測定することで,比較的短時間かつ少ない費用で「要因とアウトカムとの関係を調べる」研究を実施可能です。ただし,要因とアウトカムの間に時間的な関係性が得られないため,因果関係を検討するのには適さず,基本的には関連性の議論しかできません。

メリット・デメリットをよく吟味しよう

 3つ目の「治療・予防法の効果を調べる」研究として,最も適切な研究デザインは介入研究です。介入とは「研究目的で,人の健康に関するさまざまな事象に影響を与える要因」であり,薬物・非薬物的治療の他に,医療機器や検査法なども含まれます。研究者によって介入を割り付けられた対象者を前向きに観察し,アウトカムを群間で比較します。介入の割り付けの方法として最も強力なのがランダム化(無作為割付)であり,ランダム化を用いた介入研究をRCTと呼びます。

 適切に計画・実施されたRCTは,治療・予防法の効果に対する強力なエビデンスを提供する一方で,限られた集団を対象とすることにより,結果が臨床現場(リアル・ワールド)と乖離してしまう可能性がある点に注意が必要です。また,倫理的でないなどの理由でRCTの実施自体が困難な場合もあります。RCTが実施困難な状況では,non-RCTやコホート研究を効果検証に活用することが必要かもしれません。

 今回はRQの種類を基にした研究デザインの選び方について紹介しました。次回から, 介入研究を中心に実例をご紹介しながら, 臨床研究の各論について説明していきます。

今回のポイント

・CQをRQに落とし込んだ上で,RQの検証に適した研究デザインを選択する必要がある。
・同じRQでも,複数の研究デザインが候補となることがあるため,それぞれの研究デザインのメリット・デメリットをよく吟味しなければならない。

つづく

参考文献
1)福原俊一.臨床研究の道標 第2版〈下巻〉.特定非営利活動法人健康医療評価研究機構;2017.

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