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第3225号 2017年5月29日


【短期集中連載】

伝わる!
医療者のためのスライドデザイン講座

勉強会や研修会,学会発表など,医療者にとって,スライド準備は切っても切り離せない作業です。どうすれば,見やすくて伝わりやすいスライドを作れるでしょうか。すぐに使えるデザインのルールとテクニックを短期集中連載でお伝えします。

[第1回]スライドなんて必要ない?

小林 啓(京都大学大学院医学研究科 脳病態生理学講座精神医学教室)


 プレゼンテーション,大変ですよね。症例報告,研究発表,講義,抄読会,果ては事務連絡まで……。医療に携わる人であれば,誰もプレゼンテーションから逃れることはできません。しかし,プレゼンテーションの作り方について体系的に学ぶ機会はとても少なく,いまだに先輩から教わるバラバラの知識を頼りに,手探りで作られているのが現状ではないでしょうか。

 この連載では,プレゼンテーションにおけるスライドの作り方について,デザインの視点から考察していきたいと思います。伝えるための考え方やテクニックを身につけることにより,あなたのプレゼンテーションは今よりもずっと素晴らしいものになります!

デザインとセンス

 「デザイン」と聞くと,どのような印象を受けるでしょうか? 多くの人が「良いものだけど,自分には関係のないもの」と感じており,「自分にはセンスがないから,デザインは難しそう……」という意見もよく耳にします。デザインをするためには,やはりセンスが必要なのでしょうか? 確かにプロとして本格的なデザインを行うのであれば,技術的,芸術的なセンスは不可欠かもしれません。しかし,スライド作りにおけるデザインの基礎を学ぶに当たっては,「整っているかどうか」がわかる程度の感覚的なセンスがあれば十分です。デザインに関するいくつかのルールを習得できれば,あなたのプレゼンテーションは見やすく,伝わりやすいものへと変化していきます。

スライドなんて必要ない?

 スライドを作る際に最も大切なことは何だと思いますか? それは「スライドを作る前の準備」です。この準備により,プレゼンテーションの成功の8割は決まるといっても過言ではありません。では,いったい何を準備をすればよいのでしょう? それは,「ストーリー」と「トーク」です。話す内容と話し方,これが完璧に作られていればスライドなんて必要ないくらいです。

 読者の皆さんは,スライドに発表内容を全て箇条書きにし,ひたすら読み上げるようなプレゼンテーションをしていませんか? そのような「スライドが主役」のプレゼンテーションは時代遅れであり,聞き手の頭に何も残らないことは多くの人がすでに気付いています。

 TEDカンファレンスのような一流のプレゼンテーションを見てもわかるように,現在は「プレゼンターが主役」のプレゼンテーションが主流であり,スライドは補助の役割にすぎないのです。

 まずは筋の通ったストーリーを作り,どのように話せば聞き手に伝わるかを徹底的に練りましょう。それに合わせてスライドをデザインしていくことで,効率よく質の高いプレゼンテーションを作ることができます。

脳に優しいスライド作りを

 ストーリーとトークが出来上がったら,いよいよスライド作りです。ここで意識してほしいキーワードは「余計なことを書(描)かない!」です。「この1枚のスライドで自分は何を伝えたいのか?」を明確にし,それ以外は全て聞き手の脳のメモリを消費するノイズになると考えましょう。次のスライドのように,多過ぎるテキストや,余計な背景,関係のない写真,ロゴマーク,意味のないアニメーションなどは,全てが聞き手の注意の妨げになってしまいます。次のスライドが何を伝えたいのか,一目でわかりますか?

 スライドの情報はできるだけシンプルにし,口頭での説明を丁寧に行うほうが印象に残りやすく,理解を促すこともできます。できるだけ脳に負担をかけない優しいスライドを作り,メッセージをプレゼンターがしっかりと伝えるようにしましょう。

 次回はスライドをきれいに見せるためのテクニック,「整列」と「余白」についてお話しします。

つづく


こばやし・けい氏
2002年阪大基礎工学部システム科学科卒。09年京府医大医学部卒。同大病院にて初期研修,北斗会さわ病院を経て,16年より京大大学院医学研究科脳病態生理学講座精神医学教室の大学院生として,脳病態生理学を専門に現代の生活習慣と脳の健康について研究中。学生時代からグラフィックデザインに携わり,ポスター,フライヤー,Webサイトなどを多く手掛け,2016年12月より京大病院総合臨床教育・研修センター主催によるデザイン講座を開始。第37回日本社会精神医学会のポスターも担当している
デザインは,「相手に伝えたい,楽しませたい」という願いを叶えることのできるツールです。聞き手と話し手の双方が価値ある時間を共有できる,魅力的なスライドデザインを学んでいきましょう。

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