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第3206号 2017年1月9日


めざせ!病棟リライアンス
できるレジデントになるための㊙マニュアル

ヒトはいいけど要領はイマイチな研修医1年目のへっぽこ先生は,病棟業務がちょっと苦手(汗)。でもいつかは皆に「頼られる人(reliance=リライアンス)」になるため,日々奮闘中!!……なのですが,へっぽこ先生は今日も病棟で頭を抱えています。

[第8話]
バトンミス厳禁!
スマートな引き継ぎのコツを身につけよう

安藤 大樹(岐阜市民病院総合内科・リウマチ膠原病センター)


前回よりつづく

 へっぽこ先生の消化器内科での研修も明日で終わりです。研修を開始した日に消化管出血のため入院してきた男性のAさん(78歳)は,途中でせん妄や誤嚥性肺炎を起こしたり,転倒したりと,夜中に何度も呼び出されましたが,その分たくさんのことを勉強させてもらった思い出深い患者さんです。ご家族を含めてすっかり親しくなったへっぽこ先生,最後のあいさつをするためにベッドサイドへ向かいました。

(へっぽこ先生) Aさん,1か月間ありがとうございました。たくさん勉強させていただきました。……まあ,色々大変でしたけどね(笑)。

「お~,へっぽこ先生! 今日でおしまいなんだ。残念だな,先生には本当に良くしてもらったからなぁ。うちの母ちゃんも悲しむよ。で,次からは誰に話をすればええんかね?」と,Aさんも別れを惜しんでくれています。

(へっぽこ先生) 来週からはB先生が研修でまわってきます。Aさんの担当にもなりますので,これからはB先生に話してくださいね。

「そうか,また新しい先生なのか。ゼロから話すのも大変だわな。わかってもらえるかね……。」と心配そうです。

(へっぽこ先生) 多分,Aさん不安だよな。できることなら自分で最後まで診たいけど……。
(セワシ先生) 来週以降も時間があるときにのぞいてあげると,患者さんも喜ぶよ。あとはいかに上手に引き継ぐかだね。頑張れば確実に患者さんのためになるからしっかりね。


 へっぽこ先生も患者さんに信頼されるようになってきたようで何よりです。患者さんとの信頼関係ができればできるほど,こうした不本意な別れが増えてしまうのも,研修医の悲しいさだめ。実際,研修中はそれまでの担当医から入院患者さんを引き継いだり,次にローテーションで来る研修医に引き継いだりする機会がたくさんあります。心の中では感傷に浸りつつ,表面上はクールに引き継ぐ,これがプロフェッショナルな姿です。そして,引き継ぎは十分な情報の伝達が行われなかったり,責任の所在が曖昧だったりと,トラブルの種にもなりやすい“落とし穴”です。リオ五輪の陸上男子400 mリレー日本チーム並みの見事なバトンパスを決めましょう!

引き継ぎサマリは正式文書にあらず

 入院時サマリや退院サマリとは異なり,引き継ぎサマリは正式な文書ではないので,型に無理やりはめる必要はありません。要は,相手に伝わればいいのです。下線や赤字で重要な点を強調するなどの工夫をしてみてもいいでしょう。実際,退院サマリなどに比べ,引き継ぎサマリはより具体的です。「どのような検査が何日に入っていて,その結果次第でどうなるか」,「今後どのような治療選択肢が検討されているのか」など,よりリアルな“臨床”を反映させる必要があります。また,正式なサマリでは記載を避けるべき略語も,研修医同士であれば使用しても問題ありません。具体的には以下のような項目を記載します。

1)引き継ぎ相手
 誰に対する引き継ぎかを明確に記載しておく必要があります。研修医同士ですし,無理に「〇〇先生御侍史」のような堅苦しい表現を用いなくても問題ありません。

2)入院目的
 主に入院時の主訴を書きますが,診断が確定している場合は病名表記でも構いません。

3)現病歴
 入院時にも記載してあるとは思いますが,そのままコピペするのはNG!新たに得た情報を盛り込み,検査結果から今回の入院においては重要度が低いと判断した情報は省きましょう。

4)既往歴
 入院目的との関連が強いものに関しては,入院後に得た情報も追加して記載します。今回の入院との関連が低いものに関しては簡略化してもいいでしょう。

5)内服歴
 以前処方されていた薬剤,入院後に処方された薬剤,現在中止されている薬剤など,詳細な記載が必要です。自分の病院で採用されていない薬剤が処方されている場合は,代替薬を記載しておくことで,投薬ミスの可能性を下げられます。

6)プロブレムごとの入院経過
 今回の入院において重要度の高いものから順番に番号を付け,上位のプロブレムに関しては,具体的な検査・治療を流れに沿って記載します()。そうすることで,引き継ぐ側は時間経過をよりつかみやすくなります。これも,今回の入院との関連が低いものに関しては簡略化しても大丈夫です。

 引き継ぎサマリの例:78歳男性,消化管出血症例(一部省略)(クリックで拡大)

7)その他
 現在の食事内容やADL,リハビリの進行状況など,患者さんの病態以外の状態を示すとともに,key personは誰か,患者・家族への説明はどこまで行われているのか,介護の状況や家族の受け入れ態勢がどこまで整っているのかといった情報も,非常に重要になります。

8)今後の予定
 今後の治療計画はもちろん,どのような状態になれば退院できるのか “ゴール設定”を記載しましょう。さらに,退院後はどこの病院で経過観察をする予定なのかといった情報もあれば完璧です。

引き継ぎは,サマリだけにあらず

 引き継ぎ内容は当然カルテに記載しますが,それで終わらせてはいけません。作成したカルテをプリントアウトし,重要な箇所にマークをするなどして,直接申し送りを行いましょう。診療内容だけでなく,ここで大切になるのが“患者さん個人の個性”です。「サイクリングが趣味だったみたい」「お孫さんの話をすると喜ばれるよ」「若いころの武勇伝が結構多いらしい」など,何でもいいんです。とにかく自分が持つ“患者さんの全て”を引き継ぎましょう。

 引き継がれる側も,漠然と受け止めるだけではいけません。症例を長く診ていると,どうしても思い込みが起きやすくなりますので,新しい視点で再評価しましょう。「引き継ぎは見直しのチャンス」であることもぜひ覚えておいてくださいね。

セワシ先生の今月のひとこと

正式な文書ではない引き継ぎサマリは,わかりやすさを重視! よりリアルな臨床を反映させて記載しましょう。Face to faceでの引き継ぎで,患者さんの“個性”を含め,自分の持っている患者さんの全てを引き継ぎましょう。その際,新しい視点での見直しも忘れずに。

つづく

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