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第3093号 2014年9月22日


第40回日本看護研究学会開催


 第40回日本看護研究学会(会長=天理医療大・中木高夫氏)が「素晴らしき哉『看護研究!?』」をテーマに,8月23-24日,奈良県文化会館(奈良市)他にて開催された。本紙では,看護研究総論・質的研究・量的研究それぞれのテーマから,看護研究に臨むためのコツが紹介されたシンポジウム「『看護研究』の落とし穴」(座長=天理医療大・末安民生氏,淑徳大・茂野香おる氏)の模様を報告する。


シンポジウムの模様
 「看護研究の“落とし穴”はしばしば落ちてしまうもの」。こう語った川口孝泰氏(筑波大大学院)は,たとえ落ちてしまっても,そこからいかにはい上がるかが重要と述べ,その方策を示した。まず,看護研究の目的を「看護の営みを向上させるための新たな“知”を生み出すこと」と確認。看護研究の基盤となるのは,確かな教養を背景とした新しい“知”の追究と語り,哲学や科学など,看護以外の基礎学問の情報をいち早くとらえることが重要だと強調した。研究を進める上では,方法論ばかりに気を取られた業績主義や,統計学の理解不足,研究デザインを適切に選択できない点が「落とし穴」に落ちる原因だと注意を喚起。研究の成果を発信する上で重要になる論文作成では,論文誌ごとに存在する厳格なルールの把握,説得力ある結果表現など,他者が読んでわかる工夫を心掛ける姿勢が大切だと語った。「看護研究はつらく苦しいときもあるが,成果が出れば楽しくなる」「誇りとこだわりを持ち,前向きに取り組んで」と呼び掛けた。

落ちてもはい上がろう! 看護研究の「落とし穴」

 続いて登壇した北素子氏(慈恵医大)は,Burns & Groveの『看護研究入門』(エルゼビア・ジャパン)に記されている「質的研究のクリティークのための基準」を参考に質的研究の落とし穴を回避する“鍵”を紹介した。導かれる結果を支えるにはデータの適格性の保証が欠かせない。そのためには,「何を目的にしたサンプリングか」「何を明らかにしたいのか」という研究の目的と照らし合わせ,質・量共に十分なデータを収集し,厳格な手順に則って研究を進めなければならないと述べた。理論化のプロセスと,質的研究のアウトカムとしての理論図式の明瞭性,論理一貫性を問う「分析の精緻性」「理論的なつながり」についても言及。研究から導かれたカテゴリーや理論図式の一貫性を保証するには,カテゴリー,サブカテゴリーの概念定義を明確にすること,カテゴリーやサブカテゴリーとデータをどのようにつないだかの「解釈」を明確に提示することが不可欠だと述べた。

 次に登壇した林みよ子氏(天理医療大)は,「落とし穴を事前に把握して臨むことも大切」と述べ,Polit & Beckの『看護研究 原理と方法』(医学書院)をもとに量的研究の進め方を解説した。氏は,本書で示されている「概念的定義と操作的定義」の重要性に着目。概念的定義とは,研究の概念について抽象的な意味,もしくは理論的な意味を示すもので,研究者が培ってきた世界観や看護観に基づいた見解が決め手となって定義付けられると述べた。一方の操作的定義とは,必要な情報を収集するために研究者が行わなければならない操作の定義を意味する。収集したデータを前に,研究者は実際の研究状況でどのように変数を観察し測定したかを示さなければならないと解説した。さらにポイントとして挙げたのは「結果の解釈」。解釈を加えることは,研究プロセスの最終段階で特に難しいとされ,「落とし穴」に落ちかねない。研究を進める大きな目的は「患者やその家族にアウトカムの改善をもたらすこと」と述べ,統計的有意性ばかりにとらわれるのではなく「臨床での経験や実際の現場を意識して分析結果を解釈する必要がある」と語った。