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第2874号 2010年4月5日


研修病院見学ルポ
~いい病院のええとこ取りをめざして~

【第12回(最終回)】病院見学を終えて

水野 篤(聖路加国際病院 内科)


前回からつづく

 最終回となる今回は,病院見学を終えての全体のまとめを行いたいと思います。

 本連載では,見学したそれぞれの病院の主に良い部分を選りすぐって記載しました。一方で,それぞれの病院の見えていなかった部分も多いと思いますので,それも踏まえながら最後の記事を始めます。

研修全体について
 2004年に初期臨床研修が必修化され,既に6年が経過しました。制度自体にも今年またマイナーチェンジが行われ,臨床研修は今後さらに生まれ変わっていくものと思いますが,新しい制度が始まって研修医自身の環境も大きく変わったのではないでしょうか。

 環境の変化にはいくつかポイントがあると思いますが,筆者が個人的に重要だと思っているのが情報へのアクセス向上です。インターネットが普及して文献検索が容易になったことと同時期に,初期研修必修化により多くの研修医向け教科書が出版されました。また,海外で活躍していた若手医師が,日本に戻ってきたことを機にこれまでにない充実した書籍を出版するなど,勉強する環境が充実してきました。これにより,研修医の臨床レベルは本当に向上していると,個人的にではありますが感じています。これは臨床研修における時代の流れであり,この時代に研修医として過ごすことができ良かったなぁと筆者は思っています。これからさらに優れた情報が集積されることで,今以上に素晴らしい研修を行うことができる時代が来ると期待しています。

市中研修病院の現在
 そのような時代背景の中,研修病院は生き残りをかけてそれぞれの病院ごとの特徴を打ち出す傾向が強くなってきていると,見学を通じて感じました。例えば,海外研修がプログラムに組み込まれていたり,他病院への期間限定のローテーションがあるなど,さまざまなオプションが増えてきています。もちろん女性医師にとっては,産休の制度や更衣室・当直室の環境なども重要だと思います。本連載では記載しきれませんでしたが,実際,アメニティは病院によって大きく異なる部分です。

 大学病院での研修も最近人気が上昇していると聞きます。2年間の初期研修を大学以外で行ってもまた医局に戻ってくる予定であれば,最初から大学を選んだり,また大学自体が好きといった理由から大学病院を選択するなど理由はさまざまです。とにもかくにも病院の選択肢が増えたことは,環境面においても恵まれてきた部分だと思います。

カンファレンス
 本連載では,カンファレンスについて毎回記載しました。研修医が行う学習方法には,次の3つのパターンがあります。

 第1に耳学問・bedside teaching。第2にレクチャー・カンファレンスなどの座学。そして第3に各自教科書などを用いて行う自主学習です。このうち,1と2は病院によってかなり差があります。特に1は,どのような教育体制かや,指導医のキャラクターで大きく変わってきてしまうため,研修病院の説明として記載するにはシステム化されていないと困難だと思いました。2は,ほぼすべての研修病院で行っているため本連載として非常に記載しやすいと考えました。ただ,ほとんどの研修病院でカンファレンスは飽和状態であり,研修医が忙しすぎて参加できない,カンファレンスが多すぎるという意見が多く,学習法としては現在はむしろ衰退傾向にあるかもしれません。大学病院における教授回診などには,1の要素も多いと思います。3との比較では,Clinical Pearls vs. EBMにいくらか似たような構図ではありますが,結局は教科書で学べない部分をどのように勉強するかが重要だと筆者は考えています。映画『グッド・ウィル・ハンティング』でロビン・ウィリアムス演じる精神分析医ショーンが言う,「君の話すことは,全部本に書いてある。君から学ぶことは何もない」という言葉が,まさにこのことを象徴しているような気がします。

病院のブランド力
 今回の連載で紹介した11の研修病院は,ブランド力のある病院と言って良いでしょう。ブランド力のある病院で研修を行う真のメリットは,“人とのつながり”だと筆者は考えています。このような病院では,有名な医師や特徴ある医師に出会えるということも多いでしょう。また,ブランド力がある病院ではロールモデルとなる医師がいることが多いと思います。

ロールモデル
 研修医が研修を行う際に非常に重要なことは,ロールモデルを見つけることです。研修医は,ただ目の前の患者を診て,カンファレンスに参加しているだけでも良いのですが,明確なロールモデルがいれば一層充実した研修になると思います。筆者は同僚に刺激を受けることが多かったのですが,良い同僚,良い先輩,良い指導医にめぐり合えるチャンスは,それを求めていれば必ずあります。実は,良い医師はどこにでもいます。その医師の能力を,自分の研修のためにどう引き出していくかはその研修医個人の能力ですので,ぜひとも周りの医師の引き出しを開けてみてください。結局,人を育てるのは人ですから,人を見て研修病院を決めるのもよいでしょう。

Generalと救急について
 筆者は現在,循環器内科医ですが,総合内科や救急を中心に見学してきたので,本連載はそちら寄りの内容であったと思います。ただ,実際の病院において重要なことは,総合内科・救急が各診療科とどのようにかかわっているかということです。現在,多くの病院では,救急部や総合内科の院内での立ち位置を模索しているところだと思います。ですので,救急やGeneralを学びたい研修医は,病院全体のバランスをみて判断することをお勧めします。

結局のところ……
 つれづれなるままに思うところを記載してきましたが,研修病院選びで一番重要なことはやはり人との出会いです。私自身も初期研修を行った神戸市立中央市民病院で出会った先生方,また聖路加国際病院に来てお会いした先生方の多大なる影響を受け,現在の自分が形成されていると思います。

 また,今回の研修病院見学も,見学させていただいた各病院の先生方はもちろんですが,関東労災病院の小西竜太先生や国立がんセンター中央病院の堀之内秀仁先生,筑波大学附属水戸地域医療教育センターの徳田安春教授など本当にいろいろな方にお会いし,影響を受けたお陰で成り立っています。ぜひこの連載を読んでいただいている先生方とも,一緒に熱い何かができたらと考えております。

 では,またどこかでお会いしましょう。失礼いたします。

過去の同期との写真。やはり人との出会いが一番大事やなぁと思う。(後列左から4人目,中腰でいるのが筆者)

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