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第2841号 2009年8月3日


知って上達! アレルギー

第5回
鼻炎,いろいろな原因

森本佳和(医療法人和光会アレルギー診療部)


前回からつづく

図1 カンタン! 鼻炎の把握法
前回は,十字に引いた線に記入して鼻炎を把握するという方法をご紹介しました(図1)。この上段2つの情報から,原因回避を中心とした対策を考えることができます。

アレルギー性鼻炎と非アレルギー性鼻炎

 アレルギー性鼻炎では,なんらかの抗原(アレルゲン)が原因となって生じます。これは,クームス分類でいうI型(即時型)アレルギー反応で,「抗原-IgE-肥満細胞」のセットが原因となります。この3要素のうち,抗原のコントロールが最も容易ですから,アレルギー性鼻炎ではまず抗原回避を考えることが重要です。

 非アレルギー性鼻炎には,前回ご紹介した血管運動性鼻炎のほかに,好酸球増多性鼻炎(NARES:Non‐Allergic Rhinitis with Eosinophilia Syndrome)というものがあります。症状はアレルギー性鼻炎と似ており,鼻汁中に好酸球も観察されます。しかし,皮膚試験を行っても,血液検査で特異的IgEをみても陽性が出ません。証明できないアレルギーの可能性があるのかもしれませんが,非アレルギー性に分類されます。ほかにも,味覚性鼻炎,薬物性鼻炎,妊娠性鼻炎,内分泌性鼻炎,などがありますが,種々雑多な鼻炎を明確に分類するのは難しく,国際的にも分類名があいまいなのが現状です。分類名よりも,臨床家として重要なことは,原因を把握することです。例えば,急な気候の変動で症状が悪化する鼻炎であれば,それを避けるようにアドバイスします。アレルギー性鼻炎では抗原回避を考えるように,非アレルギー性鼻炎でも原因の除去や回避を考えましょう。

季節性アレルギーこれで花粉が理解できる

 次に,季節ですが,季節性アレルギー性鼻炎の代表的な抗原はやはり花粉です。その原因となる植物は,季節でおおよその見当がつきます。

 まず,植物を木・草・雑草に大きく分けます。木は最も大きく数メートルになり,ご存じヒノキ・スギなどがあります。草は,基本はイネ科植物で,芝生の草をイメージしてもらうとよいでしょう。丈は10cmから数十cmといったところでしょうか。芝生の草の名前を言えと言われても困るかもしれませんが,オオアワガエリ,カモガヤなどが含まれます。雑草は川の土手や道べりに生えている数十cmから1mくらいに育つ植物でブタクサ・ヨモギなどが含まれます。

 これらの季節ですが,簡単に言うと「木(2-5月)=春,草(4-10月)=夏,雑草(8-10月)=秋」です。この季節と植物の高さを並べた景色を描いてみました(図2)。春→夏→秋を横軸として,左から木→草→雑草,です。また,この図での植物の丈の高さと花粉症へのインパクトも,(非常におおまかですが)相関します。つまり,図2の景色を思い描いてもらえれば,季節と植物,一般的な花粉症のひどさがイメージできるわけです。これで,季節から原因となる植物を,原因となる植物から鼻炎症状の季節を予想することができますね。

図2 季節ごとの花粉症の原因となる植物のイメージ

 花粉についてさらに知識を増やしましょう。スギ・ヒノキ・マツなどの樹木花粉は遠方まで飛んでいきます。木の丈が高いことだけが原因ではなく,花粉自体が遠方まで飛んでいくように設計されていて,数十km離れた場所でも花粉症を引き起こします。遠くまで飛ぶ,大量に飛ぶ,といった特徴があります。そのため,木の花粉の回避には手間がかかり,外出するときはメガネ・マスクをし,家に帰ったらすぐシャワーを浴びて部屋着に着替えるといったアドバイスも必要となります。

 対して,草や雑草の花粉はあまり遠くまで飛ばないため,芝生が生えている場所に行かない,山に行かないなど,原因となる植物の生えているところを避けることで花粉への暴露を大きく減らすことができます。夏・秋の花粉対策は,毎年国民行事のようになっている春の花粉症対策に比べるとずっとラクなわけですね。

 さて,ここで取り上げたような花粉症で問題となる植物の花のほとんどは美しくありません。これはなぜでしょう? きれいな花にはきれいな理由があります。そうです,その美しさで虫を引き付けているのです。つまり,美しい花のほとんどは虫媒花で香りのよいものが多く,その花粉は虫の体につけるために粘り気があり,風で運ばれる構造ではありません。対して,風で運ばれる花粉をつくる花(風媒花)は,虫を引き付ける必要もないので,花は地味で花びらさえもないものが多く,香りもほとんどありません。

 これらを応用して考えると,「私,花粉アレルギーです。きれいな花が飾ってある部屋に入ると,きまって鼻症状が出ます」というのは,おそらく花の匂いやその場の精神的ストレスなどが原因となって,非アレルギー性鼻炎が誘発されたと考えるほうが自然でしょう。

原因抗原の記入も対策・治療方針に有用

 通年性のアレルギー性鼻炎の原因は,ダニ・ネコ・イヌ・カビなど,多くは室内抗原となります。ダニやカビを完全に回避することは日本の気候では不可能に近く,医師に手放せと言われてペットを手放す人もほとんどいません。抗原回避は花粉以上に困難なのが現状です。また,これらがベースにあって,季節の花粉で季節性に悪化が見られるということもよくあります。

 図1の十字線の右上の欄には季節を書き込むと言いましたが,一歩進んでアレルギー検査の結果などの原因抗原を記入してもよいでしょう。例えば,「スギ・イネ科(草)」と書けば,季節は書かなくても,おそらく春から夏にかけての花粉症という予想ができます。「スギ・ブタクサ・ダニ・ネコ」とあれば,おそらく通年性がベースにあって,春と秋に悪くなるという予想もできます。季節との関連性が把握できれば,対策や治療方針も立てやすくなりますね。

 今回はアレルギー性鼻炎で重要な抗原回避について季節を中心に話しました。中でも,花粉を理解できれば鼻炎についての見通しがよくなると思います。つづく薬剤治療については,次回にお話しさせていただきます。

つづく

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