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第2841号 2009年8月3日


小児科診療の
フレームワーク

Knowledge(医学的知識)-Logic(論理的思考)-Reality(現実的妥当性)の
「KLRモデル」に基づき,小児科診療の基本的な共通言語を共有しよう!

【第8回】 フォーカス不明の発熱:FWLS

土畠智幸
(手稲渓仁会病院・小児NIVセンター長)


前回からつづく

救急外来にWalk-inで来る小児の最も多い主訴は,発熱です。今回は,小児の発熱のなかでも,問診・診察したがどこに発熱の原因があるのかわからない,というときのアプローチについて勉強します。

Case1

 9か月男児,今朝から最高38.5℃の発熱。機嫌はよく,食事も摂取できている。診察上,呼吸促迫なく,咽頭・鼓膜の発赤も認めず,肺音もクリア。

Case2

 2か月女児,今朝から最高38.5℃の発熱。哺乳はいつもの半分程度で,あまり泣かない。診察上,ややぐったりしているが,呼吸促迫・脱水所見なし。咽頭・鼓膜の発赤認めず,肺音もクリア。

FWLSって何?

 胸部X線で浸潤影がある,明らかな膿尿がある,などというように,感染巣(フォーカス)がどこかわかっている場合にはそれに対する治療を行いますが,フォーカスがわからない場合は,成人とは異なったアプローチが必要です。このような状態を,FWLS:Fever without localizing sourceといいます。乳幼児の場合は,フォーカスがよくわからないうちに状態が急速に悪化することがあります。急速に悪化する可能性の高い細菌感染症をSBI: Serious bacterial infectionと呼び,これには敗血症・髄膜炎・上部尿路感染症などが含まれます。また,急速に悪化しないまでも,発熱以外の症状がない時点で既に菌血症を来していることがあります。この状態を,OB: Occult bacteremiaといい,SBIに進展してしまうこともあります。FWLSは,早期の対応が必要になるという点で,ある程度時間がたってもフォーカスの見つからない状態を指すFUO: Fever of unknown originとは異なります。

FWLSの診療プロトコル

 FWLSの診療プロトコルは,年齢によって違います(図1,2)。3歳以上は,特に決まったアプローチはありません。3歳以下の場合は図に示したようなアプローチで診療を行いますが,特に3か月未満は注意が必要です。その理由は,BBB(血液脳関門)が未成熟で,菌血症からすぐに髄膜炎に移行してしまうからです。また,生後3か月を境に起炎菌が異なります。3か月未満は,母親からの垂直感染が多く,起炎菌はGBS,E. coli,Listeriaが多くなります(新生児は「下痢GELi」と覚えます)。抗菌薬は,スペクトラムの広いCTX(セフォタキシム:第3世代セフェム)に加え,ListeriaをカバーするABPC(アンピシリン:広域ペニシリン)を使用します。

図1 3か月未満児のFWLSの診療プロトコル

図2 3か月-3歳児のFWLSの診療プロトコル

 3か月以上の場合は,起炎菌は市中感染のものへと変わり,多くは肺炎球菌・インフルエンザ桿菌です。よって,FWLSで抗菌薬を選択する場合は,CTXやCTRX(セフトリアキソン)といった,第3世代セフェム単剤で問題ありません。FWLSの児において菌血症を合併しているリスクが高いものとしては,(1)39℃以上の発熱,(2)WBC 15,000/μL以上,の二つが挙げられており,それを参考としたプロトコルとなっています。

プロトコルに対する評価

 図1,2に挙げたプロトコルで診療を行うと,どうしても採血・検尿などの検査が多くなってしまいます。発熱で受診した児の多くが,ウイルス感染などの特に問題のない疾患であることが多いのですが,なかには非常に元気に見えても菌血症を起こしているような児もいて,たとえオーバートリアージであってもそういう児を見逃さない,というのが私たち小児科医のスタンスです。しかしながら,米国などでは肺炎球菌やインフルエンザ桿菌に対するワクチンが普及したこともあり,FWLSの児における菌血症の割合が1980年代の10%前後から,現在は1%台へ激減しているという報告もあり,これらのプロトコルを見直そう,という動きもあるようです。また,Wittlerらの報告(文献4)によると,FWLSに対して経験的な抗菌薬(Empiric antibiotic therapy)を投与した割合は,ERの医師が59%,小児科医が45%,家庭医が28%という結果だったとのことです。同じプロトコルでも,人によって使い方が違うということなんですね。Harrisは,「ガイドラインというものは,結局はその時点で存在しているエビデンスへのガイドに過ぎない」と書いています(文献2)。要するに,一つの絶対的な答えがあるわけではない,ということなのでしょう。研修医のうちは,ガイドラインやマニュアルを見て「ここにこう書いてあるから,絶対しなければならない!」と思ってしまいがちですが,上級医とも相談しながら,少しずつ自分なりのポリシーを作っていきましょう。

マネジメント――Case1

 3か月以上3歳未満のプロトコルに準じます。全身状態も良好で,39℃以下の発熱なので,検査や抗菌薬投与の必要はなく,解熱剤による対症療法を行いながら外来経過観察できそうです。発熱が48時間以上持続したり,ぐったりしてきたときは再診するように説明して帰宅させます。

マネジメント――Case2

 3か月未満のプロトコルに準じます。Low-riskクライテリアを満たさないものがあるので,原則として入院の上,Sepsis workupを行います。上級医と相談しながら,どこまで検査をするかを決めます。状態が著しく悪化するようであれば,血液培養を採取した後,すぐに抗菌薬の静注を開始します。

Check!! KLRモデル

Knowledge:各年齢ごとのFWLSの診療プロトコルを覚えよう
Logic:検査・抗菌薬投与を急ぐ状態かどうかを見極めよう
Reality:原則は絶対ではない。上級医と相談しながら診療しよう

つづく

参考文献
1)Baraff LJ, et al. Practice guideline for the management of infants and children 0 to 36 months of age with fever without source. Agency for Health Care Policy and Research. Ann Emerg Med. 1993; 22(7):1198-210.
2)Harris JA. Managing fever without a source in young children: the debate continues. Am Fam Physician. 2007; 75(12):1774, 1776.
3)Ishimine P. Fever without source in children 0 to 36 months of age. Pediatr Clin North Am. 2006; 53(2):167-94.
4)Wittler RR, et al. A survey about management of febrile children without source by primary care physicians. Pediatr Infect Dis J. 1998; 17(4):271-7; discussion 277-9. 連載一覧