医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第2839号 2009年07月20日

第2839号 2009年7月20日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


ナースのための統計学 第2版

髙木 廣文 著

《評 者》萱間 真美(聖路加看護大教授・精神看護学)

調査結果をどう読むか,論理的思考のプロセスをわかりやすく解説

 名著にしてベスト&ロングセラーである『ナースのための統計学』の待望の第2版が発売された。タイトルに「ナースのための」とあるが,この本は統計学を用いるすべての方にこれまで読まれてきたし,これからも読まれるであろう。

 著者の髙木先生は,聖路加看護大学の4年生を対象にした統計学の授業ノートを基に本書を起稿されたと伺っている。私は初版の発売直後に髙木先生に統計を学んだ,幸運な学生であった。先生の授業は,とにかく数字をどう読むか,調査結果をどのように読み,組み立てていくのかという「数字の意味」と「論理的展開」の授業であった。先生が黒板に手書きされる「箱ひげ図」は絶品で,分布の幅や中央値,最頻値,平均値が何を意味するのかがひと目でわかった。ヒストグラムを打ち出し,視覚的に分布を見ると,あるはずのないところにプロットがあり,データは必ず基礎統計をチェックし,必要なら入力にさかのぼってみる必要性を学んだ。演習的なこれらの内容も,本書では例題を用いて細やかに解説されている。数字というのは何をどのように問うたかの結果で,それをどう読めばよいのかという論理的思考のプロセスを,正確な言葉で基礎から教えていただいた。その講義があらためて本書を読み直して鮮やかによみがえった。本書には,先生の豊富な研究経験に基づく具体例が,素晴らしいイラストとともに配置されており,第2版で判型がより大きくなったこともあって,より全体をとらえやすくなっている。

 大学院時代に再び髙木先生から学んだときには,いくつかの名言が記憶に残っている。「大学院のときに知識の貯金をすること,あとは利子で食べていくだけである」「実証的データに裏打ちされた結果なら,偉い人がなんと言っても主張すべきである」「うかつに因果関係を類推することは避けるべきだ」。きっと研究者としてのさまざまなご苦労や,豊かな体験があったのだと想像される言葉であるが,このような研究者としての姿勢もまた,例題の読み解き方から伝わってくる。

 時代は変わり,いまや統計はコンピュータソフトとその操作法の知識さえあれば,誰でもどんなデータを用いても結果を計算できるようになった。しかし,本来のデータの意味を取り違えた計算や結果の提示は,それを使う人の知識の不適切さを逆に露呈するようになったとも言える。第2版には「統計解析のためのソフト」という項目があり,分析の基本的姿勢について述べられている。必読である。

 本書の表紙デザインを拝見したとき,何かに似ていると思った。同心円にパステルカラー,ルートやnなどの記号が配されたやさしい表紙。よく考えたら,有名デパートの包装紙であった。私が修士論文の結果を同心円の図で書いていたら,髙木先生がのぞきに来て「同心円はなんでも表せるんだよね」とひとこと言って去って行かれたことが思い出され,おかしくなった。同心円は概念を図示する上で汎用性が高いのだが,同時に人の虹彩と瞳孔の形とも通じ,人の注目を喚起する。

 現在では,質的研究方法に関する発言も多い髙木先生であるが,私は先生を数字または質的データを用いた論理学のご専門だと考えている。研究の最も基本であり,そしてゴールであるのは論理性だ。名著のリニューアル,ぜひ読んでいただきたい。

B5・頁228 定価2,310円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00772-6


JJNスペシャル
2009年02月号(通常号)(No.85)
安全・確実・安楽な
がん化学療法ナーシングマニュアル

飯野 京子,森 文子 編

《評 者》足利 幸乃(日本看護協会神戸研修センター教員 がん化学療法看護認定看護師教育課程担当)

「安全」「確実」「安楽」な看護実践の手引き書

 この数年,がん化学療法に関する看護本は出版ラッシュだった。看護師が知っておくべきがん化学療法の基本的知識は大きく変わることがない。つまるところ,本のコンセプト,新薬,新レジメン等に関する情報の量と解説,編集の工夫などが本の違いとなり,その本の個性となる。がん化学療法に関して出版されるいくつかの看護本を手に取りながら,違いを出すのは難しいと感じていた。そんな矢先,飯野京子氏と森文子氏が編集した本文311ページのソフトカバー本である『JJNスペシャルNo.85 安全・確実・安楽ながん化学療法ナーシングマニュアル』の書評依頼を受けた。

 この本をひとことで表すならば,がん化学療法看護本の中で差異を鮮明にすることに成功した本と言える。本のコンセプトの明確性と一貫性は顕著であり,そのコンセプトを文字化,図式化,視覚化するための工夫,編集上の工夫が随所にみられる。

 編集の飯野京子氏と森文子氏は,がん化学療法看護分野でのリーダーであり,両氏の実践と教育両面での仕事はよく知られている。両氏は,がん化学療法看護を実践する,教えるという役割経験の中から,がん化学療法看護の基本原則を「安全」「確実」「安楽」に絞り込んだ。その上で,この考え方の解説と具体的な実践行為について,がん化学療法看護認定看護師とともに文字化,図式化したものを収めたのが本書ということになる。

 Part Iは,がん化学療法管理・看護における「安全」「確実」「安楽」の概念的な解説編,Part II以降が実践編である。薬剤師の樋口順一氏が担当されたPart II「注射用抗がん剤の混合調製」は,私が知っているがん化学療法関連の本の中では,調剤に関するカラー写真の豊富さでは群を抜いており,十分な大きさの調剤手順絵などの図・写真に,非常に具体的な解説が添えられている。これも,編集のこだわりと工夫ではないかと感じる。

 Part III以降は,投与前,投与時,投与中,投与後のナーシングとなっており,看護師として行うこと,知っておくべきことは,がん化学療法管理の時系列順に記述されている。Part IXはレジメン別看護の章であり,読者は,自分が実際に管理するレジメンを探し,そこを読めばよいようになっている。そのほか,「経口抗がん剤の理解と服薬指導」「外来化学療法のナーシング」という,最近のトピックスに関連する章も設けられている。

 がん化学療法の知識や経験がほとんどない人であっても,文字を追うことで内容が理解でき,書いてある通りにやればある程度できるというレベルまで書き込まれている。がん化学療法看護の経験者にとっては,「安全」「確実」「安楽」という基本の確認,自身の実践の見直しになるとともに,スタッフを指導,教育する立場になった場合に,教材として使えるようにも考えられた作りとなっている。編集者や執筆者の意図はどうあれ,本をどう読み,どう使うかは読者次第であるが,飯野氏が「本書を読まれるみなさんへ」で述べているように,がん化学療法の臨床において,「安全」「確実」「安楽」な看護実践の手引き書として活用してほしい一冊である。

AB判・頁320 定価2,940円(税5%込)医学書院


《JJNブックス》
絵でみる脳と神経 第3版
しくみと障害のメカニズム

馬場 元毅 著

《評 者》鎌倉 やよい(愛知県立看護大教授・成人看護学)

摂食・嚥下障害の記述もさらに充実,「脳と神経」を学ぶ人には必読の書

 待望の『絵でみる脳と神経 第3版』が出版されました。「脳と神経は難しい」と多くの看護学生がつぶやきます。実際,中枢神経系の組織は生命維持の中枢として機能し,思考や運動を支配していますから,簡単であるはずがありません。理解しようと進んでいくと,その広さと深さに迷路に迷い込んで出口が見えなくなることがあります。本書は,脳と神経を理解するための地図であり,羅針盤であるように思います。

 本書を手に取ると,まずイラストが多いことがわかります。よく見ると,描かれたイラストの横に馬場先生のサインを見つけることができます。そうです,このイラストは馬場先生ご自身の手によるものです。長年にわたって脳外科医として活躍され,脳と神経を目前にとらえ続けた先生ならではのイラストはわかりやすく説得力があります。そして,症状を説明するためのイラストからは馬場先生のユーモアがあふれています。これらのイラストに導かれ,理解しながら進むことができます。

 2年間の『看護学雑誌』への連載が基になって,本書の第1版(1991年)が完成したと聞き及んでいますが,脳や神経の迷路で迷わないように,学ぶ側の視点に立って,根幹を押さえて進む構成となっています。難しい内容が実に平易にわかりやすく表現され,疑問に思う事項が「NOTE」として概説されるなど,あたかも馬場先生の講義を受けているように感じられます。全体の構成は,脳と神経に関する基礎知識が「I 中枢神経系のしくみ」に要約され,「II 障害のメカニズム」では意識障害,言語障害をはじめとする障害について,そのメカニズム・症状・ケアなどが説明されています。しかも,それぞれの項は独立した構成となっているため,学習者のニーズに応じた項を読むことで,疑問に答えてくれます。

 今回の改訂による大きな変化は,「II 障害のメカニズム」に「認知症 知的神経機能障害」と「摂食・嚥下障害」の項が追加されたことです。私は摂食・嚥下障害が取り持つ縁で本書に出合いましたので,今回の改訂はうれしい限りです。これまでも脳神経障害の項に摂食・嚥下に関する脳神経が詳しく解説されていましたが,新たに「摂食・嚥下障害」の項として摂食の神経機能および嚥下の神経機構がまとめられています。「嚥下の神経機構」は,「咀嚼の神経機構」「嚥下の神経機構」「嚥下反射のしくみ」「摂食・嚥下の“期”と脳神経の関与」「摂食・嚥下にかかわる脳神経」「嚥下障害の臨床;仮性球麻痺と球麻痺」からなる構成です。

 さて,本書に導かれ脳と神経のしくみを知ることによって,嚥下にかかわる脳神経の障害によって引き起こされる症状が,まるで謎を解くかのように理解することができます。現在,フィジカル・アセスメントが看護教育に定着してきましたが,フィジカル・イグザミネーションにおいても脳神経の理解が基盤となります。本書は,看護の領域にとどまらず「脳と神経」を学ぶ人にとって必読の書であり,ぜひお読みになるよう推薦いたします。

AB判・頁256 定価2,940円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00816-7

関連書
    関連書はありません