| 看護のアジェンダ | |
| 看護・医療界の“いま”を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
| |
井部俊子 聖路加看護大学学長 |
(前回よりつづく)
1万2330人を雇用するニューヨーク訪問看護師サービス(Visiting Nurse Service of New York: VNSNY)を訪れたのは,およそ1週間の視察研修(リバティ・インターナショナル主催)の最後であった。今回は巨大な訪問看護サービス事業を紹介したい。
VNSNYの患者ケアは,術後のケアといった自立期から,依存,終末期のケアまでの連続体であると説明される。このことに対応して,サービスは,短期ケアから長期ケア,医療から非医療(支援)にわたり,連邦政府の認定したホームヘルス事業,長期ホームヘルスケア,ホスピスと緩和ケア,自費によるケア,HMOなどのヘルスプランによるVNSチョイスなどがある。
VNSNYの雇用者の内訳をみてみよう。1万2330人のうち最大の集団は,ホームヘルスエイド(日本ならばヘルパーに相当するであろう)であり5777人(約47%)を占める。次いで,看護師(RN)が2505人(約20%)。そして,695人(約6%)のリハビリテーションスタッフ(PT・OT・STを含む),594人(約5%)のソーシャル・ワーカー,その他のクリニシャン(約1%)(栄養士,医師,心理士などが含まれる)の構成となっている。医師においては,ホスピス医としての精神科医も少数雇用している。
雇用者の合計が100%に満たないため,残りの21%について尋ねたところ,それらは事務職員であるが,夜間の訪問ナースを送迎する警備員や英語以外の言葉を用いる利用者のための通訳者なども含まれるという。スペイン語,北京語・広東語,韓国語,フランス語,ロシア語など多様な言語に対応している。
一方,米国では2020年までに34万人の看護師不足が見込まれている(だから,日本には外国人看護師は来ないだろうと考えている人もいる)。2006年の調査では,2011年から2020年までに看護師の半数以上が退職する意向を示している。看護専門職は進化し変容しており,現在では医師や医療チームにおけるコーディネーションが重要となっているため,コミュニケーション能力がますます求められる。また,連邦政府や州当局の法規制が多く,すべての活動に書類が必要となっている。可能な限り,仕事量と生産性をあげるためテクノロジーを駆使しなければならず,今や,看護師不足とテクノロジーは密接に関連している。
VNSNYへの依頼は,63%が病院,13%が医師,14%がナーシングホームからであり,VNSNYの出張所を病院内に設けて連携を強化している。年に5000人くらいの医師から依頼が来るが,その9割は年5件以下である。訪問の依頼が多い医師は,往診医,家庭医,整形外科医,血管外科医などである。最近はコングリゲイトケア(高齢者集合住宅におけるケア)が注目されている。
訪問看護師は,退院後に訪問依頼を受けてから24時間以内に初回訪問をして,Physical examinationを含む包括アセスメントをしてケアプランを立て,医師に報告して許可を受けることになっている。訪問看護師は1日平均6.5件の訪問をする。
テクノロジーとの関係で注目されるのは,「Pen Tablet」と称されるQuality Score Card(質のスコアカード)の作成である。すべての患者データは入力され管理されており,例えば,糖尿病ケア・創傷ケア・心不全ケアの目標,実施されている割合が示され,再入院率が毎月報告される。
財政の概要は,VNSNYの2006年報告からみることができる(表)。
| 2006年 | 2005年 | |
| 収入の部 | ||
| 純患者サービス | $700,626 | $684,813 |
| メディケイド | 209,572 | 196,396 |
| 財成金その他 | 31,589 | 35,366 |
| 総収入 | 941,787 | 916,575 |
| 費用の部 | ||
| 給与手当 | 418,043 | 395,827 |
| 福利厚生費 | 107,774 | 100,727 |
| 契約サービス | 284,705 | 293,935 |
| 消耗品費 | 91,423 | 85,462 |
| 原価償却 | 15,340 | 17,564 |
| 貸倒引当金 | 7,488 | 7,434 |
| 総費用 | 924,773 | 900,949 |
| 事業収支 | 17,014 | 15,626 |
| 寄付 | 4,239 | 2,135 |
| 当期収支差額 | $21,253 | $17,761 |
| (単位:千ドル) |
わが国の訪問看護ステーションの規模と職員構成,テクノロジーの活用に思いをはせた夏の旅であった。
(つづく)