医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第2746号 2007年09月03日

 

第2746号 2007年9月3日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


脳卒中リハビリテーション連携パス
基本と実践のポイント

社団法人 日本リハビリテーション医学会 監修
日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会
リハビリテーション連携パス策定委員会 編

《評 者》浜村 明徳(小倉リハビリテーション病院長)

生き甲斐を持って生活できる連携リハ地域ネットワークづくりを

 このたび,日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会リハビリテーション連携パス策定委員会より,わが国の脳卒中診療やリハビリテーション(以下,リハ)医療,地域医療連携の第一線で活躍される115名の執筆者による脳卒中リハ連携に関する書が発刊された。

 本書は,冒頭で診療ガイドライン委員会の里宇明元担当理事が述べているように,「単にツールとしての連携パスのみに焦点を当てず,障害を持つ人々が地域で生き甲斐を持った生活を送れるように援助する活動としてのリハ医療」の一環,そのつなぎに関係する人とツールのあり方を示したことに類書が及ばない特質がある。いわば,リハ医療における「連携の科学書」であり,かつ連携マニュアルとしても活用できる「連携実践の手引書」ともなっている。

 前半では,(1)脳卒中診療の現状と診療連携,(2)クリニカルパスの基本,(3)脳卒中診療におけるクリニカルパスの動向,(4)データベースとITの活用と開発と,脳卒中連携に関する基本的な事柄,連携の概要や科学的根拠などが紹介されている。連携の基本はパートナーシップ(栗原),仲間づくり活動(正門),お互いの信頼(橋本)など「人」であること,急性期から在宅生活支援に至る「システムづくりを意識した活動の中に連携がある」ことを多くの執筆者が述べている。また,クリニカルパスの意義やパス作成のポイント,その動向などを通して,効果に関することや今後の方向性も示されている。

 後半はより多くのページを割いて,(5)連携パスの実践,(6)ユニットパスの実際,(7)連携相手に望むことなど,実践事例や関係者の意見などが紹介されている。現時点でのわが国の先駆的連携事例,特徴ある事例の殆どが紹介されていると言ってもよい。これらの事例から,連携パスは地域のネットワーク活動の結果としてできてきたものもあれば,連携パスを動かすことが契機となってネットワーク活動が始まった事例もあることがわかる。ここには,連携パスを実践するための知恵,ネットワークづくりのヒントが集積されている。

 リハにおいて連携は目標であり,念仏のように唱えられてきた経緯がある。昨今,医療機関の役割分担が明確になり,連携なくしてリハが成り立たなくなった。そのことが,支援ツールとしてのパスを活用できるものとした。

 本書を参考に,それぞれの地域,関係者,時期,障害度などに適したあり方が検討され,また本書が障害のある人々のQOLの向上,地域のみんなで切れ目なく支える地域リハ体制づくりの一助となることを期待したい。

A4・頁256 定価3,990円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00478-7


不整脈
ベッドサイド診断から非薬物治療まで

大江 透 著

《評 者》杉本 恒明(関東中央病院名誉院長)

臨床医の視点で有用性を評価した不整脈教科書

 立派な装幀の不整脈教科書である。大江透教授がお一人で書かれている。評者も実はかねて,こうした本を書きたいという願いはもっていた。しかし,いざ書くとなると,不得手な分野が目につき,それぞれの専門家に依頼するのが妥当と思われて,結局は分担執筆になってしまっていた。それを大江教授はお一人でおやりになった。大江教授でなくては書くことができなかった教科書であり,また,このような本の執筆者としてもっとも適切な人は大江教授であるとは誰もが認めるところであろう。

 大江教授は国立循環器病センターという臨床研究の場に長くあって,後に岡山大学内科教室という教育研究の場に移られた。この間にご自身がもたれた経験が本書執筆の動機となったもののように思われる。

 不整脈の予後が健康な集団にみられた場合と末期患者にみられる場合とでは異なることを400年も昔の医学がすでに教えているということから本書は始まる。不整脈の分類には,心電図上の分類,原因・経過上の分類,電気生理学的検査による分類,発生機序による分類,有効薬剤による分類,日内変動による分類などと独自の分類がある。基礎的知識の解説がこれに続いて,次が検査である。基礎疾患の検索は本書ならではの章といえよう。診断は日常的な問診,身体所見,心電図によって行われる。この章ではティルト試験,圧反射感受性検査にもふれられている。ついで,電気生理学的検査である。電気生理学的検査は不整脈の機転を明確にし,診療に役立つ多くの知見を提供してきた。治療には薬物治療,デバイス治療,外科的治療,アブレーション,そして,さらに大規模臨床試験の成績が整理された問題点に私見を併せて紹介されている。各論では不整脈の種類別にこれらの知見が再度,まとめられていて,わかりやすい。ことに頻拍における興奮旋回路の同定,アブレーション部位の決定などについては流石に説得性がある。心室頻拍,心室細動が先にあって,これに心室期外収縮が続くのは,その意義を考えると理解しやすい。

 本書に一貫しているのは,つねに臨床医としての視線があるということである。すべてが臨床的有用性によって評価されている。治療に役立つか,予後を改善するか,が評価の基準にある。アブレーション成功率別の不整脈の分類などはこの意味での独自の工夫であろう。

 実にコンパクトによくまとめられている。単独執筆のよさであろう。また,大江教授の学識の深さを感じさせる。文章的には,独特の調子を帯びた表現もあって,講義風景が想像される。そして,このような大江教授の名講義が岡山大学の学生諸氏から,広くわれわれにも開放されたことを嬉しく思った。

B5・頁536 定価8,925円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00208-0


現場から学ぶ
自立支援のための住宅改修
みてわかる工夫事例・不適事例

鶴見 隆正,田村 茂,宮下 忠司,与島 秀則 著

《評 者》秋田 裕(横浜市総合リハビリテーションセンター)

生活様式・動作をもとに工夫のポイントを解説

 介護保険制度が始まって以来,住宅改修は介護サービスのひとつに位置づけられ,高齢者や障害のある方々の在宅生活を支援する重要な手段であるとの認識が定着したのは大変喜ばしいことです。しかし現状では,施工された住宅改修が必ずしも満足な結果をもたらしているとはかぎりません。せっかく改修工事をしたのに,使いにくい,期待したほどには改修効果が上がらなかった,さらには改修した所で怪我をする危険があるなど,不適切な改修事例も数多く見受けられます。

 本書には57の住宅改修事例が紹介されていますが,書名にもあるように「生活の現場から学んだ」具体的な事例紹介にあふれています。巷には住宅改修に関する書籍が数多く出版されていますが,制度の解説や一般的な改修事例の紹介に終始しているものが多いようです。そんな中で,あえて失敗した改修事例や工夫を施した事例を取り上げているのが本書の大きな特長と言えます。

 不適切な事例の紹介では,何が不適切だったのかを指摘して,その対応を示し,ミスを起こさないためにはどうしたらよいのかを簡潔にまとめています。また,当事者の生活様式や動作を確認した結果をもとに,さまざまに工夫した改修事例では,なぜそのような工夫が必要であったのか,工夫のポイントは何かが解説されています。改修事例は,手すり,段差,スロープ,トイレ,浴室などの項目ごとに,豊富な写真とイラストとともに紹介されており,さらに改修箇所ごとに知っておきたい基本事項がわかりやすく解説されています。巻末に,よくある住宅改修のQ&Aと建築関係の用語解説が掲げられているのも実践の場ではすぐに役に立つでしょう。

 数年前のことになりますが,著者のお一人である田村茂さんから,本書が出版されるきっかけとなった『住宅改修あれこれ』という小冊子をいただきました。田村さんは富山県で訪問リハビリテーションの実践者として,長らく住宅改修の現場に関わってこられましたが,その活動の中で住宅改修に関わる保健医療福祉領域の専門職,建築士,福祉用具製作者,障害の当事者と家族の方々や住宅改修に関心のある市民の方々とともに「障壁を考える会」を組織し,住宅改修事例の報告や住宅の見学を行いながら意見交換を積み重ねてきたそうです。こうした障害者・高齢者の生活の現場での実践の積み重ねと,関係者の熱い議論があったからこそ,本書のような現場の視点に立った事例紹介ができたのだと確信しています。

B5・頁144 定価2,520円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00454-1


神経解剖集中講義

寺本 明,山下 俊一 監訳
秋野 公造,太組 一朗 訳

《評 者》渡辺 英寿(自治医大教授・脳神経外科学)

最小のページ数で最大の内容 神経解剖学の理解と知識整理に

 本書は,ユニークな原書英文タイトル(High-Yield Neuroanatomy)が示すように,臨床に必要な脳の解剖に関する基礎知識を効率よく理解して記憶することをめざして執筆されている。本書の序文にも“最小のページ数で最大の内容”とあるように,究極の効率をめざしている。

 脳の解剖学は構造も複雑であるにも関わらず,羅列的にそのままを記憶しようとすると,平板であり,非常に苦労するものである。しかし,この平板な内容も,いったん疾患や障害を理解しようとして解剖学を見直すと,それぞれに重要な構造物が立体的に浮かび上がってきて,容易に記憶ができるものであったことに気付くものである。これは多くの臨床家が実体験していることではないだろうか。これを教育に生かさない手はない。本書はおそらくこのような経験をもとに,臨床を切り口として,読者の理解と記憶を促しているようである。さらに,最大限に効率よく記憶できること(High-Yield)をめざしてあらゆる努力が注入されていることが手に取るようにわかる,学習者にとっては大変頼もしい一冊である。その点で,数多い他の脳解剖学の教科書とは一線を画している。

 本書はもともと米国の医師国家試験の受験生向けに執筆されたものであるが,訳者らの努力により,日本の臨床医,神経系の専門医の受験用にも活用できる独自の工夫が加えられている。他の翻訳書とは違い,放射線科,脳神経外科の実地臨床家が内容を一度咀嚼したうえで,日本の読者向けに翻訳していると思われる部分があちこちに見られ感心させられる。さらに,訳者のオリジナルな追加図譜や,日本語の語呂あわせでの記憶法などもさりげなく追加されており,ほほえましい。ぜひ探してみていただきたい。

 さて本書は24章からなる。章立ては,血管系,髄液系,解剖学的部位別,さらに,各神経機能系に従って分けられ,さらに,神経発生,神経伝達物質,失語など,別の観点からの章も特別に設けられ,バランスのよい緻密な設計思想が伺える。また,各図表の下には,通常の解説と,それぞれの図の中で記憶すべきポイントが必ず一言二言記載されているのが,心憎い。加えて,各章のタイトルにはしゃれた副題が付記されており,例えば脳幹の章では“すべての脳が手をつなぐ場所”などとあり,学習中の緊張をほっと緩めてくれる著者の優しい心遣い,エンターテイメント精神が感じられる。

 さて,内容であるが,第1章は脳の断面解剖,第2章は膜,髄液腔の解剖であり,これにかかわる脳ヘルニアなどの臨床的な部分も大きく取り上げられて解説されている。解剖から臨床症状までが上手く結び付けられているので,臨床経験のない学生にも,これらの解剖学の知識が将来役に立つことが実感できるようになっている。第3章は血管支配で,脳梗塞と症状との関連が詳しく示される。第4章は神経系の発生で,詳細にこだわらず臨床的に重要な部分を大づかみにわかりやすく解説したうえで,臨床で問題となる数々の奇形の発生機序もわかりやすく解説される。第5章は組織学で正常構造は簡単に済ませた後,神経修復機構や,脳腫瘍の組織学さらには放射線学的な特徴まで,要領よくまとめられている。また,訳者により,日本での腫瘍統計に基づき数値の加筆が明示されている。

 第6,7,8章は脊髄で,正常構造から脊髄疾患までがまとめられる。第9章と14章は脳幹の正常と病変に当てられている。第10,11,12,17章は三叉神経,聴覚,視覚,前庭系と,機能系ごとにまとめられている。第13章は脳神経で各脳神経の核から神経根までの解剖と,それらの障害による臨床像が解説されている。第15,16,19,20,21章は小脳,視床,視床下部,辺縁系,基底核で,特にパーキンソン病などの不随意運動障害の発生機序が神経回路をもとにわかりやすく解説されている。第22章は神経伝達物質を軸に脳を再分割して,それぞれの伝達物質ごとに基礎から臨床まで簡潔にかつわかりやすい解説が進む。第23,24章は大脳新皮質の構造から,運動,知覚,言語,認知などの機能的な分布と障害に関して,豊富な図を駆使して解説されている。

 巻末には日本語版の付録として,神経内科学会や脳神経外科学会の専門医認定試験向けと思われる学習すべきキーワードが,それぞれの章の中から抜き出され,受験生のための基本的な知識のチェックリストとして使用できるよう,念の入れようである。

 本書は解剖を始めた医学生はもとより,医師国家試験をめざした受験生,専門医試験を目前にした臨床医などには必携の一冊である。さらに,言語療法士,臨床心理士,看護師,放射線科技師など神経関連のコメディカルの方々の簡便な参考書としてもお勧めしたい。一方,臨床で有用な図表が多いので,実地臨床家にとっても日々の臨床の手元に常に置き,さっと参照するときにも大変役に立つと思う。

B5・頁228 定価3,675円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00349-0


家族計画指導の実際
少子社会における家族形成への支援 第2版

木村 好秀,齋藤 益子 著

《評 者》北村 邦夫((社)日本家族計画協会常務理事・クリニック所長)

女性のQOLの向上に

 同名の第1版が発行されたのが1998年1月のことだった。副題には「豊かなセクシュアリティを求めて」と書かれていた。あれから10年。他の先進諸国と比較して立ち遅れていたわが国においても,避妊法選択に大きな変化が起こっている。米国に遅れること40年。1999年には悲願であった低用量経口避妊薬(ピル)が遂に発売された。2000年に女性用コンドームと銅付加子宮内避妊具が,2007年にはプロゲストーゲン付加子宮内避妊システム(IUS)が登場した。

 そんな矢先,著者である木村好秀・齋藤益子両先生から本書が送られてきた。低用量ピルの承認にこだわり続けてきた筆者としては,真っ先にこの項に目をやって驚かされた。ピル開発に至るまでの歴史はさることながら,2006年2月に日本産科婦人科学会編で発行された『低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン』(改訂版)までもが,詳細に紹介されていたことだ。緊急避妊法の記述といい,最新情報をここまで収集しまとめられていることに驚かされるとともに敬意を表したい気持ちでいっぱいになった。

 第2版の特徴は,副題にあるように,近年わが国が抱えている少子化について言及している点ではないだろうか。筆者の所属する(社)日本家族計画協会も,「家族計画」の冠が付されたわが国唯一の団体として,矢面に立たされることが少なくない。少子高齢化が進行する今日,家族計画指導など時代に逆行しているとの批判があるのだ。本書は,この批判をやんわりとかわしながら,家族計画指導の今日的意義について,単に計画的な出産や避妊教育にとどまらず,広く思春期からの生と性の教育や,少子社会の中で家族を形成することの大切さにあると,小気味よい程に明快なメッセージを発信している。

 それが証拠に,章立てにも細かい配慮と工夫が見て取れるし,「VI.いのちの伝承としての家族計画」は読み応えのある内容となっている。また,著者らが日頃から取り組んでいる性教育実践をまとめた「?.発達段階に応じた高校生までの性教育」「?.性教育と家族計画指導の内容」を学ぶならば,性教育に経験のない医師・コメディカルが明日からすぐにも壇上に立てるかのような錯覚に陥るほどによくまとめられている。

 医師,助産師だけでなく保健師,看護師,養護教諭,学生など家族計画指導に関心のある指導者がこれを座右の書とするならば,わが国女性のQOLの向上が図られるものと確信している。

B5・頁192 定価3,150円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00509-8

関連書
    関連書はありません