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取材記事

2025.03.07

2月22~23日,第39回日本がん看護学会学術集会(学術集会長=札幌市立大学・川村三希子氏)が,グランドメルキュール札幌大通公園(札幌市),他にて開催された。テーマは「共に学び,共に創る」。がんサバイバーが主体性を持ち発信を行うようになった現在,看護師に求められるのはパターナリスティックな価値体系から脱却し,がんサバイバーのパートナーとして協力関係を築くことであると,川村氏は会長講演で強調した。

また,学術集会のテーマを反映し,「患者・家族参画プログラム」が同学会初の試みとして催された。がん体験者である患者・家族と看護師が,がん看護・医療に関する情報や課題を共有・議論する機会の提供をめざすものだ。事前申込をしたプログラム参加者は,「患者・家族参画オリジナルプログラム」に加え,一部指定プログラムの聴講が可能となっている。

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◆患者の力を引き出すに当たって問われるのは,看護師の在り方

シンポジウム「患者-看護師関係を基盤とする患者主体の症状マネジメント」(座長=元・札幌保健医療大学・小島悦子氏,群馬県立県民健康科学大学・狩野太郎氏)では,患者主体の症状マネジメントモデルへの理解を促すとともに,本モデルを用いた症状マネジメントの実践例を複数紹介することで,患者主体の症状マネジメントにおける看護師の役割が複層的に検討された。

初めに登壇したのは大阪大学の荒尾晴惠氏だ。氏は,米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)においてLarsonらが開発した症状マネジメントモデル(The Model of Symptom Management:MSM)を紹介。モデルの前提にある,症状はそれを持つ人の主観的な体験であるとの考え方に則った看護を行うには,患者の症状体験を聴くことが必要であり,そのためには看護師自身の人としての在りようが問われると述べた。看護師がフィロソフィーやよりどころになるケアの考え方を持たなければ,日常業務を回すだけの状態に陥ってしまうと訴えた。

続く田墨惠子氏(大阪大学医学部附属病院)は,自身の臨床での具体的なエピソードを紹介した上で,患者―看護師関係をスタートさせるのは看護師側であることを強調した。患者には症状マネジメントを継続する力が備わっており,一方で看護師にはその力を信じ,うまく引き出し,最大限に発揮できるよう支援する力があるとの見解を示し,まずは患者自身が持つ力を見つけ出すことを心掛けていると述べた。

治療継続を支えるために患者の力を最大限に引き出すには,患者を理解するための対話が最も重要であると指摘するのは,和歌山県立医科大学附属病院の西恭佳氏だ。医療者が患者に関心を寄せていることが伝わる言葉・態度で接し,気掛かりが解決する体験をしてもらうことで患者の心をつかむこと,「週5日毎日治療室にやって来る」という放射線療法の特殊性を活用して,患者の小さな変化に気付くことなど,良き伴走者となるためのポイントを紹介した。

最後に登壇した札幌医科大学附属病院の團塚恵子氏は,緩和ケアの現場で症状緩和の方略を考え提案したものの,患者の症状体験や対処法に耳を傾けることで,看護師が思いも付かないような知恵や工夫を用いて症状を緩和していることを知り,自身が考えた方略を修正することをしばしば経験したと言う。そうした体験を通じて,医療者としての自身の考えに固執せず患者理解を深め,多様な在り方を受容する重要性を学んだと結び,発表を終えた。

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写真 会場からの質問に答える荒尾氏

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