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『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』より

連載 松田 光弘

2022.01.21

誰も教えてくれなかった 皮疹の診かた・考えかた

 臨床現場において,皮疹をみた際にどう診断をつければ良いかがわからず,途方に暮れてしまう人も多いのではないでしょうか? では,皮疹をみたときに皮膚科医は何を考え診断をしているのでしょうか。「研修医のときに欲しかった教科書」をコンセプトに書かれた『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』では,診断に至る思考過程をフローチャートでわかりやすく解説します。

 「医学界新聞プラス」では本書のうち,皮疹の鑑別を始める前に注目すべき皮膚の性状について,症例を交えて4回にわたり紹介します。第3回には,本書付録のWeb動画を公開します。

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研修医 診断のためには皮膚科診断学を勉強する必要があるんですね.

  • 指導医 教科書は症例写真がたくさん並んでいるだけで,診断プロセスが書かれていないことが多いからね.

    研修医 確かに,皮疹をみた後に何を考えればよいかは書かれていませんでした.

    指導医 それじゃあ,さっきの2つの皮疹をもう一度みてみよう(図1-4).具体的に2つがどう違うかわかるかな?

研修医 うーん.見た目が違うことはわかるんですが…….

  • 指導医 この2つの違いが診断の重要なポイントになるんだ.それがわかれば皮疹と病態のつながりも理解できるようになるはずだ.

表面がザラザラか? ツルツルか?

 それではいよいよ紅斑のみかたを解説していきます.冒頭の皮疹の写真をもう一度見てください(図1-4).

 A,Bともに隆起していない平らな皮疹なので斑のようです.さらに赤いので紅斑であることがわかります.ただ,それだけでは診断は全くわかりません.しかし,AとBの性状が違うのはなんとなくわかるのではないでしょうか.この違いが紅斑の鑑別のための重要なポイントになります.ここで正確な用語を使って皮疹を表現しても,直接診断には結びつきにくいことは先ほど説明しました.皮疹の表現から診断までの間には明示されない思考過程が存在するためです.そこで紅斑をみたときの皮膚科医の思考過程を明らかにしていきたいと思います.

 2つの写真を,今度は表面の性状に注目してもう一度見比べてみてください.Aは「表面の皮がむけてザラザラ」,Bは「表面の変化がなくツルツル」という違いがあることがわかると思います.実は誰でもわかるような表面の違いから,皮疹が生じた病態と原因を推測することができるのです2).具体的には,表面がザラザラしている紅斑は湿疹を考え,表面がツルツルしている紅斑は薬疹を考えます.(図1-5).

 みなさんは学生時代,内科の勉強をどのように行ってきたでしょうか.疾患の病態生理を理解して,そこに症状を関連付けて論理的に覚えていったのではないかと思います.理屈を知るのは面白く,記憶に残りやすいというメリットがあります.

 一方,皮膚科の勉強は写真とともに一対一対応で丸暗記していくだけで,あまり面白くない科目になりがちです.そこで本書では,なるべく論理的に理解を深められるように,皮疹が生じる理屈を示していきたいと思います.

 ここから皮疹と病態のつながりを詳しく説明していきますが,理解するためにはまず組織学の知識が必要です.学生のときにみなさん習ったはずですが,おそらくもう忘れてしまっている人も多いと思います.皮疹を理解するために組織学を復習してみましょう.

皮膚科診断のための組織学

 皮膚は大きく3層に分かれています.体表側から順に表皮,真皮,皮下組織と呼び,各層には固有の機能があります.簡単な模式図にすると(図1-6)のようになります.

 それぞれの層はどのような機能を持っているのでしょうか.

 まず表皮はバリア機能という,生命を維持するためになくてはならない大切な役割を果たしています.バリア機能には2つの働きがあります.1つは体外の異物が体内に侵入するのを防ぐ役割,もう1つは体内の水分が体外に失われるのを防ぎ,体が乾燥しないように保護する役割です.

 次に真皮は結合組織で形成され,皮膚に耐久性を与えます.また真皮には血管が豊富に分布していて,表皮への栄養と酸素の補給を行っています.その他にも神経や,毛包,汗腺,脂腺などの器官があり,生理的な機能も営んでいます.

 皮下組織は3層構造の最も下層にあり,表皮と真皮を支えています.脂肪組織が主体で,外部からの衝撃を和らげるクッションの役割や,断熱・蓄熱などの保温機能も果たしています.

 みなさん何となく思い出してきたでしょうか.組織学は退屈かもしれませんが,これらの知識があれば皮疹を論理的に理解することができるので,しっかり記憶してください.
 

 第2回では,この組織学の知識を使って鑑別のポイントを解説します。

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皮膚科×診断推論!

<内容紹介>皮膚科初学者にまず手に取っていただきたい「皮疹の診かた」の入門書。皮疹をみたときに皮膚科医は何を考えているのか―その思考過程を惜しみなく披露します。
本書では,皮疹の表面性状に注目し,病変の存在部位から皮疹が生じた原因を推測して鑑別診断を考えます。
診断のプロセスはフローチャートでわかりやすく示しました。各章末には症例問題を掲載し,実際の症例で診断のプロセスをおさらいできる構成となっています。
付録として症例問題を解説したWeb動画を収載!

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