理学療法ジャーナル Vol.59 No.8
2025年 08月号

ISSN 0915-0552
定価 2,090円 (本体1,900円+税)

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特集 運動器疾患における理学療法アウトカムと臨床実践
企画:森口晃一

 運動器疾患に対する理学療法の効果を社会に示していくことは喫緊の課題である.そのためには,標準化されたアウトカム指標に基づき,評価ならびに効果判定が行われる必要があると考える.そこで本特集では,代表的な運動器疾患に対する理学療法における「アウトカム」に着目し,臨床実践を含めて解説していただいた.理学療法の効果を適切に示し,患者中心の医療を実現する一助となれば幸いである.

頸椎症性神経根症に対する理学療法 上田泰久
 頸椎症性神経根症は,椎間板変性,骨棘形成,関節の肥大化など頸椎の退行変性により椎間孔が狭窄し,神経根が圧迫されて生じる.椎間孔狭窄は,椎間板変性により椎間孔の上下径が減少し,鈎状突起(Luschka関節)や関節突起(椎間関節)の骨棘形成・関節の肥大などにより椎間孔の前後径が減少して引き起こされる.評価では障害神経根の高位を鑑別し,運動療法では頸椎の過剰な分節運動や椎間不安定性を改善することが重要である.

腱板断裂に対する腱板縫合術後の理学療法 原田伸哉
 腱板修復術後の理学療法では,身体機能の回復に加え,日常生活や社会参加への復帰を見据えた包括的な支援が求められる.国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health:ICF)に基づく多面的な評価と患者立脚型評価を併用することで,主観的な困難感やQOLの把握,チーム内での情報共有が可能となる.また,断裂サイズや筋の脂肪変性,再断裂の有無などの疾患特性をICFコードと関連づけることで,個別性の高いアウトカム設定が行える.さらに,術後の運動療法では再断裂リスクを考慮し筋活動量を参考にした具体的な指導が必要である.

上腕骨近位端骨折に対するプレート固定術後の理学療法 河上淳一,他
 上腕骨近位端骨折術後の理学療法では,共通の理学療法アウトカムを使うことで多くの患者との比較が可能となる.一方で,個別性に応じて評価を追加することで,患者の状態をより正確に把握できる.

腰部脊柱管狭窄症に対する理学療法 古谷英孝
 腰部脊柱管狭窄症のアウトカム指標には,Visual Analogue Scale/Numerical Rating Scale,Oswestry Disability Index,Japanese Orthopaedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire,歩行距離,身体活動量,関節可動域,ローカル筋の筋機能を設定する.検査・測定によりこれらのアウトカムを適切な方法で数値化しておくことが,客観的な評価に不可欠である.

椎体骨折に対する理学療法 宮城島一史
 椎体骨折後に生じる脊柱後彎姿勢は,骨折の治癒後も労作性の腰背部痛を伴うことが多く,日常生活活動(ADL)や生活の質(QOL)の低下を招く要因となる.脊柱後彎姿勢に対する理学療法の目標は,ADLにおける腰背部へのメカニカルストレスを軽減させるため,姿勢・動作時の脊椎アライメントを改善・維持することである.これには運動療法に加えて,適切な患者教育の実施も重要となる.

大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術後の理学療法──再転倒予防のための歩行関連アウトカムの臨床実践 松田友秋
 大腿骨頸部骨折の術後理学療法では,再転倒リスクと歩行能力を把握するための歩行関連アウトカムが重要となる.歩行関連アウトカムの評価では,定量的なデータだけではなく,各動作課題の観察所見や関連する身体機能の評価を統合して解釈することが重要となる.本稿では,Timed Up and Go testと Short Physical Performance Batteryの観察所見と関連する身体機能の評価を統合した解釈に関して臨床での実践を踏まえて解説する.

変形性膝関節症に対する脛骨近位骨切り術後の理学療法 藤田慎矢,他
 本稿では脛骨近位骨切り術後の理学療法における評価および介入方法について解説する.術後に生じやすい主な問題としては,膝関節の疼痛,筋力低下,アライメント異常,歩行能力の低下が挙げられ,これらを的確に評価し,段階的に介入を行うことが重要である.さらに,身体知覚の変容や心理社会的要因(運動恐怖や破局的思考)にも着目し,必要に応じた適切な対応が求められる.術後には矯正損失が生じる可能性があるため,荷重量や負荷強度の調整,アライメントの再確認,患者教育および日常生活指導を含めた包括的かつ多面的な介入が必要である.

足関節外側靱帯損傷に対する理学療法 越野裕太
 足関節外側靱帯損傷後にスポーツ復帰をめざす際には,メインアウトカムとしてスポーツ活動復帰の段階(return to participation,return to sport,return to performance)と再損傷の有無を設定する.これらに関与する筋力,関節可動域,姿勢バランス,運動パフォーマンス,主観的な足関節不安定性と機能をサブアウトカムとして設定し,これらを適切な方法で検査・評価した結果に基づき,理学療法を展開する.

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特集 運動器疾患における理学療法アウトカムと臨床実践

エディトリアル 運動器理学療法の効果を示すために
森口晃一

頸椎症性神経根症に対する理学療法
上田泰久

腱板断裂に対する腱板縫合術後の理学療法
原田伸哉

上腕骨近位端骨折に対するプレート固定術後の理学療法
河上淳一,他

腰部脊柱管狭窄症に対する理学療法
古谷英孝

椎体骨折に対する理学療法
宮城島一史

大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術後の理学療法──再転倒予防のための歩行関連アウトカムの臨床実践
松田友秋

変形性膝関節症に対する脛骨近位骨切り術後の理学療法
藤田慎矢,他

足関節外側靱帯損傷に対する理学療法
越野裕太


■Close-up
統計学の落とし穴──陥りやすい間違いを例に
神谷訓康


●とびら
点描の日々
小林麻衣

●運動器疾患に対する超音波画像評価とエコーガイド下運動療法──EBPTに活かす!④
投球障害肘に対する超音波画像評価とエコーガイド下運動療法
工藤慎太郎,他

●車椅子・歩行補助具の選び方②
成人の車椅子とオプションの選び方
小原謙一

●薬剤と理学療法⑧
降圧薬(β遮断薬を含む)
阿部誠也,他

●文献収集と管理⑧
Google Scholar
森山英樹

●それ,現場で実際どうしてます?──現場で働く多様な理学療法士による座談会③
職場で飲み会,開催していますか? 不要ですか?
野添匡史,他

●臨床実習サブノート 効果的かつ安全な起居動作へのアプローチ⑤
軽度のパーキンソン病
中山智晴,他

●紹介
都心の公共空間・道路を会場とした多様性をテーマにしたイベントの紹介
──社会的障壁を軽減させるための視点に関する一考察
喜多一馬,他

●学会印象記
第13回日本支援工学理学療法学会学術大会
支援工学×理学療法で広がるwell-beingの可能性
菅野里咲

第11回日本スポーツ理学療法学会学術大会
多様性と専門性
濱本 俊

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