精神医学 Vol.68 No.6
2026年 06月号
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特集にあたって
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特集にあたって
福田正人(群馬大学名誉教授/本誌編集委員)
「どうすれば元気でいられるでしょう?」,患者さんからそう尋ねられることは多い。それは,精神症状の治療についての質問というだけでなく,精神疾患の予防への期待であり,精神疾患の有無を問わない「こころの健康」に向けた希望でもある。またそれは,個人としてできることだけでなく,家庭や職場や学校でできる取り組みでもあり,さらにこころの不調があっても安心して暮らせる社会に向けた問題提起でもある。『令和6年版厚生労働白書』はメインテーマとして「こころの健康と向き合い,健やかに暮らすことのできる社会に」を取り上げ,社会としてのあり方を問うとともに,「精神障害の有無にかかわりない」こころの健康を強調している。日本は「こころの健康を育む社会」を展望する時代を迎えてきている。
「こころの健康を育む」を「体の健康づくり」と比べると,3つの特徴がある。第1は,こころにすでに備わっている健康に向かう力への注目である。ストレングスや「誰もが安心して」という考え方が,広く受け入れられるようになってきたのは,その1つの表れだろう。第2は,本人の取り組みだけでなく,周囲の人の力が大きいことである。家庭,職場や学校,地域や行政など,本人を取り巻く人にできることがたくさんある。第3は,社会の仕組みや制度の役割が大きいことである。フリースクールや障害者雇用など,こころの不調があっても安心して暮らせる社会の仕組みを整える試みが進んできている。これら3点は,精神疾患についての0次予防であり,身体と比較した精神の機能の特徴を反映している。
そうした「こころの健康を育む」について寄せられた17編で,それぞれの執筆者の経験に基づく知恵と含蓄ある言葉をご紹介いただくことができた。「こころの健康を育む社会」に向けて,本特集が精神医療・精神医学の当事者や関係者にとどまらず,より多くの皆さまに大切な示唆を与えるものとなることを期待いたします。
収録内容
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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 こころの健康を育む──精神医学から伝えられること
企画:福田 正人
特集にあたって
福田 正人
■Editorial
「こころの健康を育む」とは
福田 正人
■総論
「こころの健康を育む」を考える
青木 省三
健康の社会的決定要因(social determinants of health:SDH)の視点で患者を診る──LGBTQ+当事者支援を通して
武田 裕子・他
■日々の暮らしとこころの健康
〈column〉「眠り」が支えるこころと体の健康
栗山 健一
〈column〉家族と食卓を囲むのが難しい時代に──子どものこころを支える「共食」のかたち
江崎 由里香
〈column〉「動く」がこころにもたらす効果
大野 裕
〈column〉こころの健康へつなげる「楽しみ方」とは
松﨑 尊信
■ライフサイクルに沿った「こころの健康を育む」
子どものこころの健康を育む
八木 淳子
思春期・青年期のこころの健康を育む──ピアサポートと「若者自殺対策ゲートキーパー」育成を核とした地域精神保健モデル
石井 綾華・他
成人のこころの健康を育む──「東京大学職域・地域架橋型支援者育成プログラム(TICPOC)」から考える社会モデルとしての取り組み
金原 明子・他
現代社会における女性の「こころの健康」
平島 奈津子
死別後の高齢者のこころの健康を支えるコンパッション・コミュニティ
河口 謙二郎・他
■暮らしの場面でできる「こころの健康を育む」
家庭における「こころの健康を育む」
澁谷 智子
学校においてAYA期のこころの健康を育む
金田 渉
職場における「こころの健康を育む」
井上 幸紀・他
■社会のなかで取り組む「こころの健康を育む」
神経多様性の観点における少数派のこころの健康と孤独感──「三つの関係性」の構築に向けた考察
綾屋 紗月
地域社会における「こころの健康を育む」取り組み──所沢市精神障害者アウトリーチ支援事業の実践から
中西 清晃・他
SODA──行政との協働による若者向け早期相談・支援で「こころの健康を育む」
根本 隆洋・他
●総説
臨床現場における恥の感情への理解と介入の重要性──EFTを用いたアプローチの有効性と課題に着目して
西川 史夏




