BRAIN and NERVE Vol.76 No.10
2024年 10月号

ISSN 1881-6096
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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特集 どうして効くんだろう
脳神経内科領域の新薬が相次いで登場しており,読者諸氏も日夜その知識の吸収に邁進されていることと思う。例えば,遺伝性ATTRアミロイドーシスに対するトランスサイレチンsiRNA製剤や視神経脊髄炎スペクトラム障害に対するC5阻害薬などは,疾患発症のメカニズムと薬剤の標的が明確で,患者への説明もそれほど難しくないであろう。しかし,われわれが使用する薬剤は必ずしも明快な作用メカニズムが解明されているものばかりではない。本特集では,効果は確かにあるものの“どうして効くのか”が必ずしも明らかでない疾患や,作用メカニズムが複雑で理解が難しい疾患を取り上げ,それぞれのエキスパートにわかりやすく解説いただいた。現時点で明らかになっている作用機序を理解しておくことは,患者への説明や予期せぬ副作用が起こったときにもきっと役立つに違いない。           
 

B細胞療法—多発性硬化症 宮﨑雄生, 新野正明
抗CD20抗体を用いたB細胞療法は,多発性硬化症の再発を強力に抑制することから重要な治療選択肢の1つとなった。B細胞は炎症性サイトカイン産生,T細胞への抗原提示を介して多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)の再発を惹起すると考えられ,その抑制がB細胞療法の最も重要な作用機序である。一方で,B細胞療法には中枢神経内B細胞の活動抑制を介したMS慢性進行抑制効果も想定されており,新規治療法の開発によりさらなる効果改善が期待されている。

大量免疫グロブリン—慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP) 清水文崇
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーでの免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIg)の作用機序として,①抗イディオタイプ抗体による病的自己抗体の中和,②FcRn阻害作用による病的自己抗体の減少,③サイトカイン・補体の中和,④T細胞・B細胞・マクロファージの活性調整,⑤血液神経関門修復が挙げられる。自己免疫性ノドパチーでIVIgが効きづらい理由としてIgG4自己抗体は抗原特異性が強いため,抗イディオタイプ抗体が結合しづらく中和作用が効きづらいなどが考えられる。

抗アミロイド抗体—アルツハイマー病 篠原もえ子, 小野賢二郎
アルツハイマー病の免疫療法では,近年モノクローナル抗体を用いた受動免疫療法の臨床試験が数多く進められてきた。プロトフィブリルやプラークといった分子量の大きいアミロイドβ(amyloid β:Aβ)凝集体をターゲットとするレカネマブ,donanemabといった抗アミロイド抗体の認知機能および脳内アミロイド沈着減少に対する有効性が示された一方で,ほかの抗アミロイド抗体は十分な有効性を明らかにできなかった。

タウリン—ミトコンドリア病 砂田芳秀
ミトコンドリア病MELASではミトコンドリアDNA変異によりロイシンtRNAアンチコドンにおけるタウリン修飾が欠損し,UUGコドンの翻訳障害が惹起される。このため呼吸鎖複合体の合成が低下し,エネルギー不全を生じる。タウリン添加するとMELASモデル細胞でミトコンドリア機能が改善し,医師主導治験では高用量タウリン補充療法により脳卒中様発作が抑制され,白血球でタウリン修飾率が改善することが示された。

薬理学的シャペロン療法—ファブリー病 小林正久
薬理学的シャペロン療法(pharmacological chaperone therapy:PCT)は,変異した酵素蛋白を構造体に安定化させ,酵素活性を高める治療である。PCTは経口治療薬であり,中枢神経障害にも有効であるという利点があるが,その有効性は患者が持つ遺伝子変異に依存することが欠点である。ファブリー病に対するPCTは心・腎合併症の進行を抑制すると報告されている。将来的には中枢神経障害を合併するライソゾーム病に対してもPCTが開発されることが期待される。

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特集 どうして効くんだろう

B細胞療法──多発性硬化症
宮﨑雄生,新野正明

大量免疫グロブリン──慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
清水文崇

抗アミロイド抗体──アルツハイマー病
篠原もえ子,小野賢二郎

タウリン──ミトコンドリア病
砂田芳秀

薬理学的シャペロン療法──ファブリー病
小林正久


■総説
AMPA受容体と神経可塑性
宮﨑智之

視神経脊髄炎スペクトラム障害治療におけるCD19モノクローナル抗体製剤イネビリズマブの有効性および安全性──N-MOmentum試験を中心に
藤原一男,佐藤裕一

■症例報告
高濃度抗IgE自己抗体と高IgE血症を認め,アトピー性疾患に併発した抗アクアポリン4抗体陰性視神経脊髄炎スペクトラム障害の1例
坂井利行,丹羽悠介


●スーパー臨床神経病理カンファレンス
第9回 高血圧症,脳梗塞,および認知症の既往歴を有し,脳出血による昏睡状態で発見されてから32時間後に死亡した79歳男性
宮田 元,他

●原著・過去の論文から学ぶ
第7回 マチャド・ジョセフ病患者さんとの出会いと論文との関わり
瀧山嘉久

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