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特集にあたって
功刀 浩(帝京大学医学部精神神経科学講座)
現代の先進国においては,大部分の人は,がん,心臓病,脳卒中のいずれかが死因となって亡くなる。これらの疾患には食生活や運動などの生活習慣が重要なリスク因子になることは,20世紀の間に常識となり,「生活習慣病」と言われるようになった。
21世紀になり,精神疾患や神経疾患などの脳の病気についても食生活や運動などの生活習慣が重要なリスク因子となり,治療においても重要な役割を果たすことを示すエビデンスが次々に報告されている。筆者は,精神疾患,特にうつ病や認知症などは「生活習慣病」と言えるのではないかと考えている。
脳も身体の一部であり,食べたものから作られている。したがって,栄養のバランス異常は脳の構造・機能に異常を来す。適切な食生活を送ることが,メンタルヘルスの維持・増進に欠かせないというのも,当然のことと言える。しかし,精神疾患において,食事や栄養学的問題はこれまであまり重要視されてこなかった。その要因として,現代日本の食生活は,とても豊かであって,栄養不足などに陥るはずがない,あったとしても大したことはないと思っている人が多いのではなかろうか。しかし,現代日本の食生活は急激な変化を遂げており,それは概して不健康な方向に向かっている(p.242参照)。このため,精神疾患の治療において,糖尿病など他の生活習慣病と同様に,食事/栄養や運動に関する習慣を医療の基本に据える必要性がますます高まっている。
本特集では,主要な精神疾患における食事・栄養学的問題と予防・治療法についての最新のエビデンスや今後の展望について,当該分野の第一線の先生に解説していただいた。また,実際に栄養指導を行っている管理栄養士の先生にもご寄稿いただいた。本特集が精神疾患の臨床において大いに役立ち,精神医学と栄養学の専門家のコラボレーションが進み,わが国における本領域の研究の発展につながることを期待したい。
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特集 精神疾患への栄養学的アプローチ
企画:功刀 浩
特集にあたって
功刀 浩
editorial 現代の食事における栄養学的問題
功刀 浩
栄養素と脳機能
小川 眞太朗
精神神経疾患と腸内細菌・プロバイオティクス
廣瀬 俊輔・他
うつ病の栄養学的要因と介入の効果
橋本 みどり・他
統合失調症における栄養学的問題と対処法
大賀 慎平・他
認知症のリスク因子と食生活からの予防
大塚 礼
神経発達症における栄養学的問題と介入法──自閉スペクトラム症および注意欠如多動症を中心に
小松 静香・他
摂食障害患者の栄養食事療法
関根 里恵
心的外傷後ストレス症における栄養学的問題
堀 弘明
ケトン食の精神疾患への応用の可能性
岩田 正明
精神疾患の栄養食事指導の特性と留意点
阿部 裕二
精神疾患患者への栄養食事指導時の食生活状況聴取のポイントと食事歴調査の実際
宮本 佳世子
精神疾患患者に対する栄養食事指導の実際──統合失調症の症例を中心に
石岡 拓得
●研究と報告
The Montreal Cognitive Assessment Japanese version(MoCA-J)の統合失調症の認知機能障害スクリーニング尺度としての有用性の検証
宮浦 駿平・他
●短報
市販の非麻薬性鎮咳薬を過剰摂取後に高所より墜落した統合失調症の一例
長谷川 友宏・他
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