精神医学 Vol.66 No.2
2024年 02月号

ISSN 0488-1281
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 特集にあたって
  • 収録内容

開く

特集にあたって
栗山健一(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部/本誌編集委員)

 うつ病で苦しむ患者は,世界で3億人以上(世界人口の4%超に相当)に上ることが推計されている(Depression and Other Common Mental Disorders:Global Health Estimates. World Health Organization, 2017)。さらに,世界保健機関(WHO)は2030年までに,うつ病が障害調整生存年数で測定した疾病負担の筆頭疾患になると予測している(The global burden of disease:2004 update. WHO, 2004)。うつ病は,気分の落ち込み(抑うつ気分),興味・喜びの喪失とともに,食欲の減退・過多,不眠・過眠,活力の低下などによって特徴づけられ,個人の感情・思考能力に著しい影響を及ぼし,これにより社会的機能も損なわれる。特に,うつ病エピソードが重く,長く続く場合,自殺という不良転帰につながる可能性もある。前述のWHOによる推計の中で,年間約80万人が自殺により死亡しており,これは全死亡の約1.5%に相当する。
 うつ病の診断・重症度・治療反応性は,主に上記の観察・行動的特徴に基づき評価されるが,この評価系は十分機能しているとは言い難い。DSM-5作成のためのフィールド調査においても複数の精神科医師による評価一致率は高いとは言えず,初期診断の遅れや治療効果判断の不正確さをもたらし,うつ病転機の不良につながる可能性が高い。また,患者ニーズから考えると,うつ病の初期診療はプライマリ・ケアで取り扱われることが求められるにもかかわらず,精神科医に依存する傾向が強いことも,上記評価系の限界によるためと考えられる。
 このため,うつ病診療においては,簡便な客観的評価系の開発が強く求められており,さまざまな生物学的指標(バイオマーカー)候補が探索されている。これらバイオマーカーは,初期診断から,重症度評価,もしくは特定の治療効果判定に活用可能なものまで多岐にわたり,うつ病臨床を大きく変革し得る発展性を秘めている。本特集では,主な指標候補ごとに,開発の歴史から近年の成果に至るまでを,各々の開発に携わる専門の研究者・臨床家に解説していただく。

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 うつ病のバイオマーカー開発の試み
企画:栗山健一

特集にあたって
栗山 健一

生物学的指標(バイオマーカー)の定義
栗山 健一

うつ病のメタボローム解析によるバイオマーカー開発の試み
松島 敏夫・他

うつ病のバイオマーカーとしての脳由来神経栄養因子
𠮷村 玲児

炎症性バイオマーカー──うつ病における活用の可能性
岩田 正明

うつ病における視床下部-下垂体-副腎系のバイオマーカー
功刀 浩

気分障害における構造MRI研究とバイオマーカー開発の現況
原田 舟・他

機能的MRIを用いたうつ病の生物学的指標開発の試み
岡田 剛

臨床におけるNIRSの役割
野田 隆政・他

うつ病のバイオマーカーとしての睡眠脳波
鈴木 正泰

うつ病の眼球運動研究
鬼塚 俊明

心拍変動・行動指標を用いたデジタルフェノタイピングに向けて
石川 祐希・他

気分症における概日関連指標の開発
吉池 卓也

うつ病バイオマーカーとしての腸内細菌叢の可能性
酒本 真次・他

うつ病のデジタルバイオマーカー
堤 明純


●展望
精神疾患を抱える女性に対するプレコンセプションケア
根本 清貴・他

●短報
インターロイキン-6の高値を認めた悪性症候群の一例
菊池 章・他

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。