精神医学 Vol.66 No.4
2024年 04月号

ISSN 0488-1281
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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特集にあたって
鈴木道雄(富山大学学術研究部医学系神経精神医学講座/本誌編集委員)

 精神医学の歴史において,ある疾患の脳器質的病因が明らかになり,診断や治療の道筋が明確になると,その疾患は主要な精神疾患の分類から除外されてきた。梅毒性の精神障害はその典型であり,てんかんも脳神経内科の領域に移りつつある。さらに近年,若年者の急性精神病症状の原因の1つとして抗NMDA受容体脳炎などの自己免疫機序が見出されるなど,精神疾患の新たな脳器質的病因が解明される事態も生じている。また,脳画像研究や定量的な神経病理学的研究により,統合失調症などの精神疾患患者の脳における形態学的変化が再現性を持って報告されており,それらの変化は細胞脱落を伴わないシナプスや髄鞘の変化を示唆している。遷延性の神経性無食欲症患者の脳にはアストログリアの増殖が認められることも報告されている。これらの所見は,それ自体の病因・病態における意義が問題となると同時に,精神疾患における脳器質的変化とは何かということをあらためて問うものであろう。そして高齢発症の統合失調症,妄想性障害,双極症,うつ病などには,脳器質的変化を背景とするような,若年者とは異なる病態生理が存在するのかを明らかにすることは重要な課題である。さらに,認知症の前駆症状としての行動変化が注目されるとともに,自殺など異状死を遂げた者の脳にプレクリニカルな認知症を示唆する病理変化が見出されることも報告されている。これらの知見からは,退行期から老年期の精神疾患の診断分類を,精神症状の背景にある脳器質的変化に基づいて整理していく必要性も示唆される。
 本特集では,正常と言われる脳の形態・構造とその変化について通覧するとともに,従来明確な脳器質的背景が見出されていなかった疾患も含めて,さまざまな精神疾患・精神症状の脳器質的背景に関わる新しい知見を整理し,現代の視点から見直すことにより,精神疾患における脳器質的変化とは何か,その病因・病態との関連,診断や治療における意義について再考する。

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特集 精神疾患・精神症状にはどこまで脳器質的背景があるのか──現代の視点から見直す
企画:鈴木 道雄

特集にあたって
鈴木 道雄

正常な脳の形態・構造とその変化
森岡 大智・他

器質性精神障害の分類と診断
上田 敬太

精神疾患・精神症状の脳器質的背景──自己免疫性精神病とカタトニアを中心に
髙木 学・他

統合失調症と自己抗体
塩飽 裕紀

統合失調症の脳器質的背景──神経病理学的研究から
鳥居 洋太・他

気分障害の脳器質的背景──高齢者のうつ病を中心に
馬場 元

神経発達症の器質的背景──自閉スペクトラム症と注意欠如多動症を中心に
幅田 加以瑛・他

てんかんにみられる精神症状の脳器質的背景
吉野 相英

物質使用症の脳器質的背景
沖田 恭治

高次脳機能障害の精神症状にみられる脳器質的背景
三村 悠・他

老年期精神障害の脳器質的背景──レビー小体病とVLOSLPに着目して
笠貫 浩史

軽度行動障害(mild behavioral impairment)の脳器質的背景
松岡 照之

精神・行動変化を伴う高齢者法医解剖例の神経病理
西田 尚樹

COVID-19後遺症(long COVID)の精神神経学的側面
久保田 隆文


●私のカルテから
転換症状が初発症状であったと考えられるレビー小体型認知症の1例
平野 正貴・他

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